経済の基礎
もう一つ増やすかどうかは、何を比べる?
「全部で得か」だけでなく、「もう一つ増やすと、何がどれだけ変わるか」を比べます。追加で得る便益と、追加で負担する費用を比べるのが限界の考え方です。平均では採算が取れていても、さらに増やす分が得とは限りません。
基本の用語
経済学の「限界」は、能力の限度ではなく、量を少し変えたときの追加分を意味します。ここでは一個、一時間などの単位で考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 豊かさは、お金を増やせば増える?生産と限られた資源の選択
平均ではなく、追加で何が変わるか
店が一日に100個の商品を作って売っているとします。101個目を作るかを考えるとき、これまでの全費用を100で割った平均費用だけでは判断できません。追加の材料、作業、配送などによって費用がいくら増えるかを見る必要があります。この増加分が限界費用です。
売上も同じです。一個多く売るために価格を下げる場合、その一個の代金だけが追加売上とは限りません。すべての商品を同じ新価格で売るなら、従来の100個から得る売上も減るからです。追加の一個を売る前後で総売上を比べた差が限界収入です。販売単価、平均売上、追加売上を混ぜないことが大切です。
追加の費用には時間も入る
追加費用には、現金で払う分以外の負担もあります。残り一時間を製造へ使えば、別の仕事や休息には使えません。このような機会費用を含めると、家計でも事業でも、選択の意味がはっきりします。追加便益も、売上だけでなく、本人の目的に応じて満足や時間の節約などを考えられます。
比較する単位と期間をそろえます。「あと一人採用する」なら、その人の一日の成果と一年分の費用を直接比べるのは不適切です。また、既に支払い、どちらの案でも取り戻せない費用は、追加選択によって変わりません。これから避けられる費用や生じる便益と区別して並べます。
一つずつ比べる方法にも条件がある
教材の企業模型では、追加売上が追加費用を上回るなら、その範囲で増産することに利益があります。反対に、追加費用が追加売上より大きければ、その追加分は利益を減らします。これは「黒字の会社なら何でも増産すべき」でも、「限界費用が高い会社は必ず赤字」でもありません。
ただし、一つずつ比較すれば常に最善の規模が決まるわけではありません。工場の新設のように大きなまとまりでしか選べない案では、工場を持つ場合と持たない場合の全体を比べる必要があります。需要や成果が不確かなときも、追加便益は確定額ではありません。限界という言葉だけで不確実性が消えるわけではないのです。
家計の選択でも使えます。掃除をあと一時間続けるかなら、家全体がきれいになった価値と比べるのでなく、その一時間で追加できれいになる部分と、失う時間の使い道を比べます。最初の一時間の効果が大きかったからといって、次の一時間にも同じ効果があるとは限りません。これは追加分を区切る考え方の例です。
101個目と102個目は違う
架空の例です。価格を変えずに追加販売でき、101個目の売上増が500円、追加費用が350円なら、この一個で利益は150円増えます。102個目は臨時配送が必要で、追加費用が700円になるとします。追加売上が同じ500円なら、その一個は利益を200円減らします。
101個目を作る理由があっても、102個目まで作る理由があるとは限りません。これまでの100個の利益がいくらだったかは、追加分の計算とは別です。税や返品、価格変更は省いた設定で、現実の最適生産量を示す数字ではありません。
考えるときの注意点
- 追加便益が予測なら、確定した成果と区別します。利潤最大化の模型は、すべての企業や人の目的を表すものではありません。
持ち帰る見方
- 限界費用と限界便益は、量を変える前後の差。
- 単価や平均だけでは追加分の採算は分からない。
- 大きな設備の選択では、案全体の比較も必要。
次に広がる疑問
- 追加の時間で諦める選択を確かめる
- 売上と費用から利益を計算する
順番に読んでいる方へ
出典
The Economy 1.0, Unit 7: The firm and its customers(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/07.html
確認日:2026-10-04
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
平均ではなく、追加で何が変わるか
限界費用と限界収入は生産を追加した際の費用と売上の変化。
- 対象
- Unit7 §7.6 MR/MC・marginal profit、Unit3 §3.3 Opportunity costs
- 条件
- 比較対象と量を固定
- 例外・限界
- 平均費用や販売単価と同じとは限らない
The Economy 1.0, Unit 7: The firm and its customers(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/07.html
追加の費用には時間も入る
追加選択の費用には他に使えた資源の機会費用を考慮できる。
- 対象
- Unit7 §7.6 MR/MC・marginal profit、Unit3 §3.3 Opportunity costs
- 条件
- 両立できない選択肢
- 例外・限界
- 既に回収不能の支出は変わらない
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html
The Economy 1.0, Unit 7: The firm and its customers(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/07.html
一つずつ比べる方法にも条件がある
教材の利潤最大化模型では追加収入が追加費用を上回る範囲で増産に利益がある。
- 対象
- Unit7 §7.6 MR/MC・marginal profit、Unit3 §3.3 Opportunity costs
- 条件
- 本文の費用需要関係の模型
- 例外・限界
- 離散的な設備選択や不確実な効果を同じ条件なしで最適化しない
The Economy 1.0, Unit 7: The firm and its customers(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/07.html