経済の基礎

工場を一個ずつしか増やせなくても、売値が上がると生産は減らない?

同じ生産候補と費用を使い、製品価格だけが上がるなら、利益最大化する供給量は減りません。工場を丸ごと選ぶ離散的な案でも、二つの最適利益を比較して方向を示せます。どれだけ増えるかや、いつ実現するかを決める法則ではありません。

基本の用語

企業は製品価格を所与として受け取り、同じ候補から利益が最大の産出を選びます。費用と技術、変更できる案を固定します。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

二つの価格で、選んだ案を入れ替えて比べる

低価格pで選ぶ量をq、高価格p′で選ぶ量をq′とします。低価格では、qの利益がq′の利益以上です。高価格では逆に、q′の利益がqの利益以上です。選ばれた案は、選ばれなかったもう一案にも負けていません。

費用をC(q)と書くと、低価格でpq−C(q)≥pq′−C(q′)、高価格でp′q′−C(q′)≥p′q−C(q)です。二つを足すと同じ費用が打ち消され、(p′−p)(q′−q)≥0を得ます。

価格差が正なら、数量差はゼロ以上です。微分可能な限界費用曲線を描かなくても、同じ候補で二回の最大化を行ったことから方向を確かめられます。少ない数量へ替えることは、この二つの最適条件と両立しません。

値上げ前後で費用も変わった場合は、同じ費用が相殺されません。そのとき数量が減っても、この比較の反例を観察したことにはなりません。価格だけを動かした条件を、式の途中で確認します。

低価格の最適案を、高価格でも実行できることが証明に必要です。案を交差して評価する二つの不等式に、共通の候補集合が現れます。

滑らかな曲線がなくても、方向を判断できる

生産量が0、4、10の三つしか選べなくても、各価格で全案の利益を比べられます。選ぶ量が4から10へ飛び移る場合、滑らかな供給曲線の一個ずつの変化とは違っていても、方向の法則は成立します。

固定費で費用関数が凸でない場合にも、同じ候補全体で本当に利益最大化しているなら、二最適条件の比較は使えます。局所的な候補だけを比べて最大と判断した場合には、この全体最適の前提が確かめられていません。

同率で複数の最適量があっても、価格が厳密に上がった二点の選択は同じ不等式で比較できます。同じ価格の同率案を任意に選んだ変化と、異なる価格での供給の方向を分けます。

価格受容という条件も重要です。販売を増やすと全体へ値下げが必要な会社では、価格を外から変えただけの収入p×qとして扱えず、別の収入関数を使います。

候補ごとの費用を表にすれば、飛び移る閾値も求められます。ただし法則の方向だけを示すには、閾値の具体的な数値は必要ありません。

増え方の大きさまでは決めない

供給の法則は弱い増加です。値上げ幅が小さく、同じ案が最も高い利益なら、生産量が変わらなくても成立します。連続的に必ず増産するという保証ではありません。

方向が分かっても増加幅は候補と費用で変わります。容量上限があれば、それ以上は作れません。量の跳び幅を知るには、具体的な各案の利益表が必要です。

ここでは両価格で同じ候補から選べるとしました。設備を注文して届くまで作れないなら、今日の選択集合と導入後の集合は異なります。将来の最大化の量を現在の実販売数量として数えません。

市場全体の販売量には他社の供給や需要も関わります。この比較は一社の価格受容模型で、ニュースの価格上昇と数量減少だけから、企業が利益最大化していないと判断する道具ではありません。

例の高価格で選んだ10個案を低価格3でも評価すると−10です。観察した利益二つだけでなく、選ばなかった案の利益も比較に使います。

全候補の利益比較で、供給の方向を調べる
  • 滑らかな案

    全候補の利益比較から供給の方向を取る。

  • 離散的な案

    一個ずつ増やせなくても、同じ最適条件を比較する。

価格受容・同じ費用で一製品の価格だけを変更する。

架空の例:三つの産出から選ぶ

選べる産出は0、4、10、同じ期間の費用は順に0、10、40とします。製品価格2なら利益0、−2、−20で産出0。価格3では0、2、−10で産出4。価格6では0、14、20で産出10が最適です。

価格3から6の二点で、低価格の最適条件2≥−10と、高価格の最適条件20≥14を足せます。価格差3×数量差6=18も非負です。増産が段階的でも、方向を比較する証明は同じです。

持ち帰る見方

  • 同じ費用で価格だけ変えた二つの最適条件を足し、数量の方向を示す。
  • 弱い増加の方向と、増え幅・時間の予測を分ける。

次に広がる疑問

  • 同じ量を安く作ることと、利益最大の量を作ることは同じ?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

二つの価格で、選んだ案を入れ替えて比べる

同じ費用で製品価格だけが上がると、利益最大化する供給量は減らない。

対象
価格受容の供給の法則を二つの最適利益不等式で証明し、離散・非凸な費用でも方向を示す。
条件
同じ生産候補集合・同じ費用・一製品の価格だけ変化、価格受容、両価格で利益最大化解が存在。
例外・限界
同じ量のままでもよい。需要曲線に沿う値下げ販売、費用や技術の同時変化、調整遅れの実測には直接使わない。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

滑らかな曲線がなくても、方向を判断できる

供給の方向は連続・微分可能・凸な費用関数を前提にしなくても比較できる。

対象
価格受容の供給の法則を二つの最適利益不等式で証明し、離散・非凸な費用でも方向を示す。
条件
同じ生産候補集合・同じ費用・一製品の価格だけ変化、価格受容、両価格で利益最大化解が存在。
例外・限界
同じ量のままでもよい。需要曲線に沿う値下げ販売、費用や技術の同時変化、調整遅れの実測には直接使わない。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf

増え方の大きさまでは決めない

最適生産案の価格と数量の変化の内積は非負になる。

対象
価格受容の供給の法則を二つの最適利益不等式で証明し、離散・非凸な費用でも方向を示す。
条件
同じ生産候補集合・同じ費用・一製品の価格だけ変化、価格受容、両価格で利益最大化解が存在。
例外・限界
同じ量のままでもよい。需要曲線に沿う値下げ販売、費用や技術の同時変化、調整遅れの実測には直接使わない。
  • Producer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/098a320a59e36314b0456cd175a4e8eb_MIT14_121F15_4S.pdf