経済の基礎

相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?

自分にとってよい選択が、相手の選択によって変わる場面があります。ゲーム理論は、選べる行動と結果の利得を並べ、相手の行動に対して自分がどう選ぶかを考える道具です。安定した選び方が、全員に最善とは限りません。

基本の用語

ここでのゲームは遊びに限りません。参加者が互いの選択に影響を受ける状況を、条件を定めて考えるモデルです。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

自分の選択だけでは結果が決まらない

一人で何を食べるかを選ぶ場合と、二人で待合せの場所を選ぶ場合では違いがあります。後者では、自分がよい場所を選んでも、相手が別の場所へ行けば目的を達しません。自分の結果を考えるには、相手が何を選ぶかも関わります。このような戦略的な相互作用に注目します。

モデルには、参加者、選べる行動、その組合せで得る利得、分かっている情報を置きます。利得は金銭とは限らず、その人の目的に応じた満足などでも表せます。ただし数字は目的を表す設定です。現実の人の気持ちや将来の行動が、最初から正確な点数で分かるわけではありません。

相手の行動を一つ仮定し、そのとき自分に最もよい行動を選ぶのが最適反応です。相手が違う行動を選んだ場合も同じように比べます。どの相手の行動に対しても最善となる行動がある場合、それを支配戦略と呼びます。最適反応があることと、支配戦略があることは同じではありません。

一人で変える理由がない状態を考える

各人が、他者の選択に対して最適反応を選んでいる組合せがナッシュ均衡です。その条件では、相手の行動が変わらないなら、自分だけ変えても得になりません。「誰も変えたくない」という言い方には、他者の選択を固定した比較という条件が付いています。

均衡が一つとは限りません。待合せなら、二人がAへ行く場合もBへ行く場合も、片方だけ場所を変えれば会えなくなる設定を置けます。どちらへそろえるかには調整が必要です。均衡を見つけたことは、現実の人が必ずそこへ到達することや、その時期を保証することではありません。

安定した選択でも、全体に最善とは限らない

囚人のジレンマと呼ばれるモデルでは、各自にとっては特定の行動が得でも、全員がそれを選んだ結果より、協力した方が皆にとってよい条件を置きます。個人の選択の合理性と、全体のよい結果がずれることを説明できます。

したがって、均衡は「社会に最善」という意味ではありません。ルールや連絡方法を変えると、選べる行動や利得が変わり、均衡も変わりえます。政策を考えるときには、個人へ我慢を求めるだけでなく、どんな仕組みなら相手の反応も含めて選び方が変わるかを検討できます。

ただし、現実を何でも同じゲームへ当てはめないようにします。信頼、繰返しの関係、情報、選べる行動などを省いたモデルからは、省いた条件の効果は分かりません。戦略の計算と、現実の条件がモデルに合うかの確認を分けます。

架空の例相手の場所ごとに、最適反応を比べる
  • 相手がA

    自分Aは3点、自分Bは0点 → Aが最適反応

  • 相手がB

    自分Aは0点、自分Bは2点 → Bが最適反応

  • 二つの均衡

    A・AもB・Bも、自分だけ移ると0点

二人とも同じ利得を持つ架空の設定。均衡の存在は、どちらへ実際にそろうかを決めない。

二つの待合せ場所

架空の二人は、同じ場所で会えれば目的を果たせます。二人ともAなら各3点、二人ともBなら各2点、別々なら各0点という利得を置きます。相手がAなら自分もA、相手がBなら自分もBが最適反応です。A・AとB・Bはいずれもナッシュ均衡になります。

全員がAの方を高く評価していても、相手がBにいるまま自分だけAへ移ると0点です。B・Bの安定と、A・Aの高い利得は両立します。点数は架空で、実際の待合せの行動予測ではありません。

考えるときの注意点

  • モデルで置いた目的・情報・行動が違えば結果も変わります。現実の相手の行動や合意の成立を保証する道具ではありません。

持ち帰る見方

  • 相手の行動を条件に、自分の最適反応を比べる。
  • ナッシュ均衡は、単独変更で得しない戦略の組。
  • 均衡は複数ありえ、全体の最善とも限らない。

次に広がる疑問

  • ルールが行動の損得を変える仕組みを見る
  • 資源の取り合いと利用ルールを考える

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出典

  • The Economy 1.0, Unit 4: Social interactions(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/04.html

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

自分の選択だけでは結果が決まらない

ゲーム模型は参加者・選べる行動・利得・情報を置き、相手の戦略への最適反応を考える。

対象
CORE4.1 Social interactions、4.2 best response
条件
利得は目的に応じて定める
例外・限界
相手の性格を読める保証ではない
  • The Economy 1.0, Unit 4: Social interactions(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/04.html

一人で変える理由がない状態を考える

ナッシュ均衡は各参加者が他者の戦略へ最適反応を選んでいる戦略の組。

対象
CORE4.13 Nash equilibrium definition
条件
他者の戦略固定で単独変更を比較
例外・限界
均衡は複数ありえ、到達を保証しない
  • The Economy 1.0, Unit 4: Social interactions(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/04.html

安定した選択でも、全体に最善とは限らない

囚人のジレンマ模型では個々の最適反応と全員のよりよい結果が一致しない場合がある。

対象
CORE4.3 prisoners’ dilemma、4.13 multiple equilibria
条件
設定した利得と行動の条件
例外・限界
全社会の行動がこのゲームだとはしない
  • The Economy 1.0, Unit 4: Social interactions(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/04.html