経済の基礎
会社が数社あるのに、競争が弱くなることはある?
会社が複数あっても、少数の会社が売上の大部分を占める市場では、相手の値下げや増産を見込んで行動するため、競争の結果はさまざまです。価格を高く保つ誘因も、相手の客を奪う誘因もあります。企業の数だけで、競争の強さや談合の有無は決まりません。
基本の用語
寡占は、少数の企業が市場の大部分を供給する状態です。どの商品・地域を一つの市場とするかを先に確かめます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?相手の行動を条件に、自分の最適反応を比べる。
- 独占企業は好きなだけ値上げできる?市場を定め、近い代替品があるかを見る。
自分の会社だけで価格を決められない
自分の値下げで客が増えるかは、他社がどう反応するかにもよります。他社が値下げしなければ客を呼べるかもしれません。しかし他社も同じだけ下げるなら、売る量が思ったほど増えず、一個当たりの収入だけが減るかもしれません。自社の価格だけで販売の結果を考えられないのが、寡占の特徴です。
こうした相互依存は価格に限りません。生産量、新商品、広告などを選ぶときにも、他社の対応が自社の結果に関わります。経済学では、それぞれが何を選べるか、その組合せで何を得るかを置いて考えます。相手の反応をどう仮定したかで、同じ少数企業でも模型の答えは変わります。
ただし、業界に有名な会社が数社あるというだけでは十分ではありません。近い代替商品が他社にあるか、買い手が別の地域で買えるかによって、実際に競う相手は変わります。「数社」という数字には、市場の範囲が付いています。
会社全体の得と、一社の得がずれる
各社が一緒に数量を抑えて高く売れば、企業全体の利益を増やせる模型があります。しかし、そのとき一社だけ増産すれば、高い価格のまま余分に売れるかもしれません。全社で行動をそろえる利益と、他社がそろえている間に自社だけ変える利益は違います。
皆が同じように増産したり値下げしたりすれば、全社の利益が小さくなる場合もあります。少数だから競争が弱いと決めることも、複数あるから十分に競っていると決めることもできません。相手の行動を変えない比較と、相手も反応する比較を分けます。
これは、企業が現実に必ず同じ計算をしているという観測ではありません。将来も取引を繰り返すか、新規参入があるかなど、省いた条件も関わります。寡占について唯一の結論を出すより、価格を維持する誘因と崩す誘因を確かめる方が役立ちます。
同じ価格だけで談合と決めない
市場の仕組みを説明する「寡占」と、独占禁止法上の違反は別です。日本の法律は、共同して価格などを決めて相互に事業活動を拘束し、公共の利益に反して一定の取引分野の競争を実質的に制限する等の条件を、不当な取引制限の定義に含めています。第3条がそれを禁止します。
同じ価格になっているという結果だけから、企業どうしの合意まで確認したことにはなりません。似た費用や、他社の値札を見た個別の判断など、別の説明も考えられます。誰が何を共同で決め、競争に何が起きたかを調べる必要があります。
ニュースでは、企業数、価格の動き、問題とされた行為、調査や認定の段階を別々に読みます。少数企業の模型は調べる疑問を作る道具であって、特定企業の違法性を認定する代わりにはなりません。
他店の値下げにどう応じるか
架空の二店を考えます。A店は、B店が値下げしなければ値下げで客を増やせると予想します。一方、B店も下げるなら、客数はほとんど変わらず一個当たりの収入が減ると予想します。A店にとって同じ値下げでも、相手の反応によって評価が違います。
これは値札の変化を考えるための設定で、実際の利益額や合意の存在を示すものではありません。まず「B店が動かない場合」、次に「B店も動く場合」を比べると、相手の反応を省いた判断に気付けます。
持ち帰る見方
- 少数企業では、他社の反応も自社の結果を変える。
- 全社の利益と、一社だけが行動を変える利益を分ける。
- 寡占という構造と、共同の行為の法的評価を分ける。
次に広がる疑問
- 似た商品どうしの競争を考える
- 競争法の禁止行為と要件を確かめる
順番に読んでいる方へ
出典
Principles of Microeconomics 3e, 10.2 Oligopoly(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/10-2-oligopoly
確認日:2026-10-04
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(e-Gov法令検索(法令本文))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000054
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
自分の会社だけで価格を決められない
寡占では少数企業が市場の大部分を供給し、価格・数量等の選択は競合企業の反応に依存する。
- 対象
- OpenStax 10.2冒頭
- 条件
- 市場を定義し、戦略的相互依存がある模型
- 例外・限界
- 少数であれば同じ価格や談合になるとは限らない
Principles of Microeconomics 3e, 10.2 Oligopoly(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/10-2-oligopoly
会社全体の得と、一社の得がずれる
共同で数量を抑える利益と、一社が数量を増やす誘因が併存する模型があり、寡占は激しい競争にもなりうる。
- 対象
- OpenStax 10.2 Collusion or Competition?/Prisoner’s Dilemma
- 条件
- 企業の選択と利得を置いた模型
- 例外・限界
- 現実の反応・価格を模型から一意に予測しない
Principles of Microeconomics 3e, 10.2 Oligopoly(David Shapiro・Daniel MacDonald・Steven A. Greenlaw/OpenStax (2022))https://openstax.org/books/principles-microeconomics-3e/pages/10-2-oligopoly
同じ価格だけで談合と決めない
日本の不当な取引制限は共同の価格決定等で相互拘束し競争を実質的に制限する等の要件を伴い、第3条が禁止する。
- 対象
- 独占禁止法第2条第6項・第3条
- 条件
- 日本・一定の取引分野と法定要件
- 例外・限界
- 企業の数・価格の一致だけで違反を認定しない
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(e-Gov法令検索(法令本文))https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000054