経済の基礎
同じ商品を売る二社だけでも、価格が費用まで下がる?
同じ商品を、同じ一定の限界費用で、どちらも市場全体へ供給できる二社なら、相手より少し安くして客を奪う誘因があります。価格を同時に選ぶ標準的なBertrand模型では、価格が限界費用まで下がります。容量や商品の違いがあると、この結論は変わりえます。
基本の用語
限界費用は追加一単位の供給費用です。数量を選ぶ競争と、価格を選ぶ競争を区別します。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 会社が数社あるのに、競争が弱くなることはある?企業数に加え、相手の反応・参入・共同の行為を読む。
値段を選ぶと、数量を選ぶ場合と誘因が変わる
二社が同じ商品を売り、客が安い方だけから買うとします。同額なら客を分けます。価格を同時に選び、両社がどれだけ注文されても全て供給できることを置きます。これが価格競争の最も単純なBertrand模型です。
数量競争では増産すると市場価格が下がりますが、価格競争では相手の価格より少し低くすることで、自社が受け取る需要が大きく変わります。企業数、需要、費用が同じでも、選んでいる変数が違うと利益を増やす方法が変わるのです。
ここでは価格を細かく連続的に選べるとします。一円刻みの値札や最低価格のルールを追加すると、僅かな値下げで客を全て奪う比較が変わる場合があります。計算には、価格の選択肢と同額の場合の客の配分も必要です。
同じ商品という条件には、客にとって受け取る内容が同じことを含めています。一方の店が遠いなら、同じ物でも移動費が異なります。値札の差だけで全員が移る比較と、移動費込みで安い方を選ぶ比較では、自社が獲得する需要が違います。
高い共通価格には、少し安くする誘因がある
両社が限界費用を十分上回る同じ価格を付けるとします。一社だけ少し下げれば、一個の利益は少し減っても、それまで半分だった客を全て得られます。元の数量と新しい数量を供給できるなら、僅かな値下げで利益を増やす余地があるため、その高い共通価格は均衡ではありません。
一社だけ高い価格を付けた状態も、安い会社が費用以上で売っているなら、高い会社は相手より少し下げて需要を得る誘因を持ちます。この値下げの誘因は価格が限界費用へ達すると止まります。そこからさらに下げると、一個ごとに損をするからです。
両社が限界費用価格なら、一社だけ値上げすると客を失い、値下げすると赤字を増やします。標準条件の下では一社だけ変更しても改善できず、均衡です。ここでの利潤ゼロは変動費を引いた模型の額であり、現実の会社が固定費も払えることを保証しません。
二社という数より、商品と容量の条件を見る
片方の会社が市場全体を供給できなければ、値下げして全ての注文を受けても売れる量は制限されます。高い会社にも客が残る場合があり、元の「少し下げると需要を全て得る」という比較を使えません。供給能力は結論に直接関わる条件です。
商品が違えば、価格の高い方を好む客が残ることもあります。近さ、品質、切替えの手間、価格を探す負担があれば、最安の店へ全員が移る設定と違います。現実の二社市場が常に費用価格になると考えるのは、これらの条件を省いた一般化です。
ニュースで二社でも競争が強いと言われたら、数だけで判断せず、完全に置き換えられる商品か、安い会社が十分な容量を持つか、客が他社へ移れるかを確認します。模型の対比は、企業数より競争の方法が結果を変えることを示します。
- 60円を維持
需要60個を半分ずつ、各利益900円。
- 59円へ値下げ
全61個を供給できれば利益1,769円。
- 容量が30個なら
全注文を受ける計算は使えない。
限界費用30円、同質商品、最安店が全需要を供給できる設定です。
客を全て受けられる架空の二店
両店の限界費用は30円。価格60円で需要60個、同額なら各30個売るとします。各利益は(60−30)×30=900円です。一方が59円へ下げ、全需要が61個なら、全て売れて利益(59−30)×61=1,769円です。
ただし値下げ店の容量が30個なら、この販売額は実現できません。価格30円を両店が付ける標準模型では、一方だけ31円なら客は相手へ、29円なら売るごとに損が出ます。全需要を受けられる条件が計算を支えています。
持ち帰る見方
- 価格を選ぶと、僅かな値下げが自社の需要を大きく変える。
- 限界費用価格の結果には、同質性・同費用・十分な容量が必要。
- 二社という数だけでは、現実の価格は決まらない。
次に広がる疑問
- 数量を決める二社では、なぜ価格が費用を上回る?
- 買い手が商品の違いを好むとどうなる?
順番に読んでいる方へ
出典
Lecture Summary 14: Oligopoly Continued — MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec14.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
値段を選ぶと、数量を選ぶ場合と誘因が変わる
Bertrand模型では企業が数量ではなく価格を同時に選ぶ。
- 対象
- 同質商品・同じ一定費用・全需要を供給可能というBertrand条件で僅かな値下げの誘因を追う。
- 条件
- 同質商品、同じ一定限界費用、二社同時価格設定、客は最安企業へ、同額なら需要を分ける、両社が全需要を供給可能、価格は連続的に選べる。
- 例外・限界
- 容量制約・差別化・探索費用・値下げ単位制限があると限界費用価格の結論は保証しない。現実の二社市場の予測に直結しない。
Lecture Summary 14: Oligopoly Continued — MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec14.pdf
高い共通価格には、少し安くする誘因がある
同質商品などの標準条件を置いた二社価格競争では、価格は限界費用となる。
- 対象
- 同質商品・同じ一定費用・全需要を供給可能というBertrand条件で僅かな値下げの誘因を追う。
- 条件
- 同質商品、同じ一定限界費用、二社同時価格設定、客は最安企業へ、同額なら需要を分ける、両社が全需要を供給可能、価格は連続的に選べる。
- 例外・限界
- 容量制約・差別化・探索費用・値下げ単位制限があると限界費用価格の結論は保証しない。現実の二社市場の予測に直結しない。
Lecture Summary 14: Oligopoly Continued — MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec14.pdf
二社という数より、商品と容量の条件を見る
商品の差別化は同質財のBertrand結果を変える条件の一つである。
- 対象
- 同質商品・同じ一定費用・全需要を供給可能というBertrand条件で僅かな値下げの誘因を追う。
- 条件
- 同質商品、同じ一定限界費用、二社同時価格設定、客は最安企業へ、同額なら需要を分ける、両社が全需要を供給可能、価格は連続的に選べる。
- 例外・限界
- 容量制約・差別化・探索費用・値下げ単位制限があると限界費用価格の結論は保証しない。現実の二社市場の予測に直結しない。
Lecture Summary 14: Oligopoly Continued — MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec14.pdf