経済の基礎
会社が余分な設備を持つと、新しい競争相手は入りにくい?
先に設備へ投資することが参入を防ぐ場合でも、設備が多いからというだけでは説明できません。投資が参入後の既存企業の利得を変え、競争することを信頼できる反応にする条件が必要です。
基本の用語
参入する企業と、既に営業する企業の決定が順に起こるモデルを考えます。後に選ぶ行動を比べ、その結果を踏まえて前の決定へ戻ります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?相手の行動を条件に、自分の最適反応を比べる。
参入後に、既存企業が何を選ぶか
参入を考える側は、入った後に既存企業が激しく競争するのか、共存を選ぶのかを見込んで判断します。既存企業の言葉だけでなく、参入後にどちらの行動を選ぶ方が自分に有利かを比べます。
利得と選択肢が両者にわかるモデルなら、参入後の最適な反応から、参入側の選択へさかのぼれます。現実の相手の費用や利益が完全にわかるという意味ではなく、決定の順序を明らかにする考え方です。
競争すると宣言するだけでは、脅しが成立しない
参入後の既存企業の利益が、共存なら50万円、競争なら30万円という設定では、参入された後は共存を選ぶ方が有利です。参入前に「必ず競争する」と宣言しても、後の選択ではその宣言を実行する誘因がありません。
この設定で信頼できないのは、宣言と参入後の利得が一致していないためです。宣言がどんな場合も無意味なのではありません。繰り返す関係や評判を含めるなら、比較する利得とモデル自体が変わります。
先行投資が、参入後の反応を変える場合
先行投資によって、参入後の利益が共存より競争の方で大きくなれば、参入後に競争することが自分に有利な行動へ変わります。参入者もその反応を見込むため、入らない方が有利となる場合があります。
重要なのは、投資が後の選択の利得を変えることです。設備が余っている、支出が戻らないという情報だけでは、競争の方が有利かは決まりません。投資後の行動ごとの利益を対応させて比べます。
参入を防げても、投資費用の比較が残る
参入を防ぐための投資にも費用があります。参入が起こらなかった場合の利益から、その費用を引き、投資せず参入を受け入れる場合の利益と比べます。参入を防げたことだけで、投資が有利とは決まりません。
比較対象も実行可能でなければなりません。投資しなければ参入が起こる条件なのに、投資なし・参入なしの利益を当然に得られる代案として使うと、判断を誤ります。費用と後の反応を同じ経路でそろえる必要があります。
- 参入後の利益を比較
既存企業は共存と競争のどちらを選ぶか。
- 参入側の利益を比較
その反応を見込んで、入るかどうかを選ぶ。
- 先行投資を比較
後の反応が変わる利益と、投資費用を含めて比べる。
判断は後の決定からさかのぼります。実際に決定が起こる時間順とは逆です。
先行投資で変わる利得
架空の例
投資なしでは、参入後の既存企業の利益を共存50万円、競争30万円、参入者の利益を共存20万円、競争ならマイナス10万円と置きます。参入しない場合の参入者の利益は0円です。既存企業は共存が有利なので、参入者は20万円を見込んで入ると考えられます。
先に30万円を払う投資をすると、費用を含む参入後の利益が共存20万円、競争40万円へ変わると置きます。これらの利益から投資費用をもう一度引く必要はありません。参入者の利益は変わらず、競争すればマイナスになると見込んで参入を見送ります。既存企業の利益は100万円から投資費用30万円を引いた70万円です。この設定では投資なしの50万円を上回りますが、投資の効果や金額を変えれば結論も変わります。
持ち帰る見方
- 宣言の強さより、参入後にどの反応が有利かを見る。
- 先行投資の費用も含めて、実行可能な経路を比べる。
次に広がる疑問
- 相手の反応を踏まえるゲームの考え方を読む
- 回収不能な支出と、その後の判断を分ける
- 参入の脅威が価格を制約する仮定を読む
出典
15.010 Economic Analysis for Business Decisions, Game Theory and Competitive Strategy II(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/46a5c7bf9a85b441e5feba5590d1d31f_gm_thy_strtgy_ii.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
参入後に、既存企業が何を選ぶか
参入するかの判断では、参入した後に既存企業が競争するか、参入を受け入れるかを考える。先に起こる決定でも、その後の最適な反応からさかのぼって比べられる。
- 対象
- 参入を検討する企業と既存企業の、順序と利得を置いた逐次ゲーム。
- 条件
- モデルの選択肢、利得、決定の順序が両者に分かる。
- 例外・限界
- 現実の競争相手の費用や利得が既知であるとは限らない。
15.010 Economic Analysis for Business Decisions, Game Theory and Competitive Strategy II(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/46a5c7bf9a85b441e5feba5590d1d31f_gm_thy_strtgy_ii.pdf
競争すると宣言するだけでは、脅しが成立しない
参入された後には受け入れる方が既存企業に有利な設定なら、参入を阻むための「競争する」という宣言は信頼できる反応にならない。
- 対象
- 参入を検討する企業と既存企業の、順序と利得を置いた逐次ゲーム。
- 条件
- 参入後の利得を比較し、既存企業が自分に有利な行動を選ぶ。
- 例外・限界
- 宣言が常に無意味という主張ではない。繰返しや評判等を加えるなら別のモデルになる。
15.010 Economic Analysis for Business Decisions, Game Theory and Competitive Strategy II(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/46a5c7bf9a85b441e5feba5590d1d31f_gm_thy_strtgy_ii.pdf
先行投資が、参入後の反応を変える場合
先行投資によって参入後には競争する方が有利となる設定なら、投資は競争を信頼できる反応に変え、参入を防ぐことがある。重要なのは投資の大きさだけでなく、後の利得がどう変わるかである。
- 対象
- 参入を検討する企業と既存企業の、順序と利得を置いた逐次ゲーム。
- 条件
- 投資が先に行われ、参入後の既存企業の選択の利得を実際に変える。
- 例外・限界
- 余分な設備や回収不能な支出があるだけでは、競争する方が有利だとは決まらない。
15.010 Economic Analysis for Business Decisions, Game Theory and Competitive Strategy II(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/46a5c7bf9a85b441e5feba5590d1d31f_gm_thy_strtgy_ii.pdf
参入を防げても、投資費用の比較が残る
参入阻止のために費用を先に負担するなら、その費用を含めた利益を、投資せず参入を受け入れる場合等と比べる必要がある。参入を防ぐことだけが利益の保証にはならない。
- 対象
- 参入を検討する企業と既存企業の、順序と利得を置いた逐次ゲーム。
- 条件
- 費用負担を含む同じ時点から、実行可能な戦略の利益を比較する。
- 例外・限界
- 参入が起こる条件なのに、投資も参入もない独占利益を当然に得られる代案とは扱わない。
15.010 Economic Analysis for Business Decisions, Game Theory and Competitive Strategy II(Massachusetts Institute of Technology OpenCourseWare)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/46a5c7bf9a85b441e5feba5590d1d31f_gm_thy_strtgy_ii.pdf