経済の基礎
順番に提案と返事をする交渉は、最後の選択からどう解く?
順番のある交渉は、最後に返事をする人が何を選ぶかから逆に考えます。起こらなかった提案への返事も、その場になれば最善であるかを確かめるのが部分ゲーム完全性です。実際の交渉を予言するには、金銭以外を含む利得の確認も必要です。
基本の用語
ナッシュ均衡は、他人の戦略を固定したとき自分だけ変えて得しない組です。順番のあるゲームでは、提案の後の行動も戦略に含めます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?相手の行動を条件に、自分の最適反応を比べる。
- 会社が余分な設備を持つと、新しい競争相手は入りにくい?宣言の強さより、参入後にどの反応が有利かを見る。
先に、最後に選ぶ人の利得を比べる
後ろ向き帰納法では、最後の選択をする人の利得を最大にする行動を選び、それを予想した一つ前の人の最適選択へ戻っていく。
架空の交渉で、提案者が100円を分け、相手は受けるか断るかを選ぶとします。断れば双方ゼロ、受ければ提示額を受け取ります。返事側は自分の金額だけを利得とする条件なので、正の提示なら受諾が有利です。
次に提案者は、返事を予想して自分の残る額を比べます。提案額は20円か50円の二つだけなら、どちらも受けられると見込めるため、提案者は80円残る20円を選びます。最後の選択から一つ前へ戻る手順です。
提案ごとの返事を決めてから、提案を選ぶ
順番のあるゲームの戦略は、実際に起きた提案への返事だけでなく、別の提案が来た場合の返事も指定する。
返事側の戦略は、「20円なら受ける、50円なら受ける」のように、各提案への答えを一組にします。実際に20円しか出なかったとしても、50円への返事を省いてゲーム全体の戦略とは呼べません。
順序は、単に話す順番の説明ではなく、相手が何を見てから決められるかを示します。この例は提案額を観察して返事できる完全情報の有限ゲームです。提示を知らない同時手番では同じ戻り方ができません。
ナッシュ均衡と、途中からの最適を分ける
部分ゲーム完全均衡は、すべての部分ゲームで戦略がナッシュ均衡になっていることを要求する。実際には起きない途中の場面でも最適である必要がある。
「20円なら拒否、50円なら受諾」とし、提案者が50円を出す組を考えます。相手の返事を固定するなら提案者は20円へ変えてもゼロなので得しません。返事側も実際の50円を断ると損します。この組はナッシュ均衡になりえます。
しかし20円を本当に提示された場面では、返事側は拒否のゼロより受諾の20円を選びます。その途中の選択が最適ではないため、先の50円の組は部分ゲーム完全ではありません。実際の経路だけを調べることとの違いです。
前提を変えると、最後の返事も変わる
有限の完全情報ゲームでは後ろ向き帰納による解は純粋戦略ナッシュ均衡となり、部分ゲーム完全性と一致する。利得の設定や同点時の選択が変われば、戻って得られる結論も変わりうる。
20円の提案にも受諾する戦略へ直すと、提案者は20円を選びます。全ての返事の場面で最善、提案の段階でも最善という条件がそろいます。ここでは二つの正の提示だけなので、ゼロ提示での同点は考えていません。
現実には、低い取り分を受け入れる不満や、相手との関係にも価値があるかもしれません。その場合は拒否の利得自体が変わります。実際の拒否を非合理と決めるのでなく、利得と情報をどう設定したかを確かめます。
この区別を確かめるには、提案額ごとの返事を表にし、受諾と拒否の利得を記入します。その後、選ばれた返事を前提に提案者の取り分を並べます。経路に沿って提案者から考えるだけでは、実際には出なかった提案への返事の矛盾を見落とすため、全ての返事を先に解きます。
- 先に返事を比べる
20円の提案も50円の提案も、受諾の金額が拒否の0円より大きいので受諾する。
- その結果から提案を選ぶ
提案者には20円提示なら80円、50円提示なら50円残るので、20円を提案する。
金銭だけを利得とする。二つの提案への返事を先に確かめ、その結果を使って提案の段階へ戻る。
条件を置いた具体例
架空の例
100円の分配で提示は20円または50円、拒否なら双方ゼロとします。金銭だけを利得にすれば、返事側はどちらの提示も受けるので、提案者は自分が80円得る20円を選びます。
50円提示と「20円なら拒否」という組は、起きた経路では変更して得しなくても、20円の場面で返事が最適でありません。後ろから解くと、この経路外の拒否を排除できます。
持ち帰る見方
- 順番のある交渉は、最後に返事をする人が何を選ぶかから逆に考えます。
- 有限の完全情報ゲームでは後ろ向き帰納による解は純粋戦略ナッシュ均衡となり、部分ゲーム完全性と一致する。利得の設定や同点時の選択が変われば、戻って得られる結論も変わりうる。
次に広がる疑問
- 相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?
- 交渉で強いのは、相手を説得できる人だけ?
順番に読んでいる方へ
出典
Extensive Form Games and Subgame Perfection, MIT 14.126 (2016)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/ecc1948438ed71a5e77eb29f123a4eef_MIT14_126S16_Extensive.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
先に、最後に選ぶ人の利得を比べる
後ろ向き帰納法では、最後の選択をする人の利得を最大にする行動を選び、それを予想した一つ前の人の最適選択へ戻っていく。
- 対象
- 有限・完全情報の順番のあるゲームと部分ゲーム完全性。
- 条件
- 行動と利得が既知で前の選択を観察できる。金銭だけを利得とする架空例を使う。
- 例外・限界
- 同じ利得の行動が複数あると解が複数になりうる。不公平への嫌悪などが実際の利得にあるなら例の結論は変わる。
Extensive Form Games and Subgame Perfection, MIT 14.126 (2016)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/ecc1948438ed71a5e77eb29f123a4eef_MIT14_126S16_Extensive.pdf
提案ごとの返事を決めてから、提案を選ぶ
順番のあるゲームの戦略は、実際に起きた提案への返事だけでなく、別の提案が来た場合の返事も指定する。
- 対象
- 有限・完全情報の順番のあるゲームと部分ゲーム完全性。
- 条件
- 行動と利得が既知で前の選択を観察できる。金銭だけを利得とする架空例を使う。
- 例外・限界
- 同じ利得の行動が複数あると解が複数になりうる。不公平への嫌悪などが実際の利得にあるなら例の結論は変わる。
Extensive Form Games and Subgame Perfection, MIT 14.126 (2016)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/ecc1948438ed71a5e77eb29f123a4eef_MIT14_126S16_Extensive.pdf
ナッシュ均衡と、途中からの最適を分ける
部分ゲーム完全均衡は、すべての部分ゲームで戦略がナッシュ均衡になっていることを要求する。実際には起きない途中の場面でも最適である必要がある。
- 対象
- 有限・完全情報の順番のあるゲームと部分ゲーム完全性。
- 条件
- 行動と利得が既知で前の選択を観察できる。金銭だけを利得とする架空例を使う。
- 例外・限界
- 同じ利得の行動が複数あると解が複数になりうる。不公平への嫌悪などが実際の利得にあるなら例の結論は変わる。
Extensive Form Games and Subgame Perfection, MIT 14.126 (2016)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/ecc1948438ed71a5e77eb29f123a4eef_MIT14_126S16_Extensive.pdf
前提を変えると、最後の返事も変わる
有限の完全情報ゲームでは後ろ向き帰納による解は純粋戦略ナッシュ均衡となり、部分ゲーム完全性と一致する。利得の設定や同点時の選択が変われば、戻って得られる結論も変わりうる。
- 対象
- 有限・完全情報の順番のあるゲームと部分ゲーム完全性。
- 条件
- 行動と利得が既知で前の選択を観察できる。金銭だけを利得とする架空例を使う。
- 例外・限界
- 同じ利得の行動が複数あると解が複数になりうる。不公平への嫌悪などが実際の利得にあるなら例の結論は変わる。
Extensive Form Games and Subgame Perfection, MIT 14.126 (2016)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/ecc1948438ed71a5e77eb29f123a4eef_MIT14_126S16_Extensive.pdf