経済の基礎

交渉で強いのは、相手を説得できる人だけ?

合意しなければ選べる案が良くなると、受け入れられる条件も変わりえます。ただし、代案が強くなれば必ず希望額を得るわけではありません。双方が受け入れられる範囲と、その中の実際の分け方を分けます。

基本の用語

交渉は、相手を説得する言葉だけでなく、合意しない場合との比較で考えられます。ここでは双方が合意を拒否できる二者の交渉を扱います。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

合意しない場合に、何を選べるか

留保選択肢とは、今回の合意をしなかった場合に選べる次善の案です。別の仕事を引き受ける、現在の使い方を続けるなど、実行可能な案から得る便益を、今回の合意と比べます。代案の実行に必要な費用や時間も含めて考えます。

「別の相手ならもっと高く払う」と言うだけでは、実際にその取引を実行できるとは限りません。言葉として示す選択肢と、拒否後に本当に選べる案を分けると、交渉を支える条件がはっきりします。

両方が受け入れられる範囲を探す

合意により全体の便益が増えても、提示された取り分で各人が不合意時より悪くなるなら、双方の自発的な受入れは決まりません。一方へ得を全部渡す案が、合計の得だけでは正当化されないのはこのためです。

実現できる配分のうち、双方が代案より悪くならない範囲を探します。この範囲は、分ける便益の大きさだけでなく、各人の代案の便益にも左右されます。合意を拒否できない状況へ、そのまま同じ比較を当てはめることはできません。

代案が変わると、受け入れる下限も変わる

新しい機会や制度によって、一人が拒否後に選べる案の便益が増えると、その人の受入れ条件も変わりえます。以前は納得できた取り分でも、改善した代案と比べれば受け入れにくくなることがあります。

ただし、受け入れる下限が変わることと、最終的に特定額を獲得することは別です。相手の代案や、合意で生まれる便益の範囲も関わるため、片方の選択肢だけから結果を一つに予測しません。

合意の範囲と、実際の分け方を分ける

双方が得をする配分がいくつもあるなら、受入れ可能な範囲がわかっても一点には決まりません。誰が提案できるか、相手が何を拒否できるか、交渉のルールなどが実際の分け方に関わります。

比較の出発点も明らかにします。ある制度変更で代案の便益が変わることと、その変更後の条件の下で双方が合意して得をすることは、異なる前後比較です。交渉が成立したという事実だけで、出発点の分配が公平だったとは決まりません。

合意の合計が12で、代案が違う場合

架空の例

便益を同じ単位で数え、合意すれば合計12を二人へ自由に分けられ、不合意なら甲は4、乙は3を得られると置きます。両者が自分の便益の数値だけを好む設定では、甲に4以上、乙に3以上を渡す配分が、自発的な受入れを考える範囲です。二人の下限の合計は7なので、残る5をどう分けるかが交渉に残ります。

甲の代案が6へ改善し、乙の代案3と合意の合計12は変わらないと置くと、甲の受入れ下限は6へ変わります。両者の下限の合計は9となり、その上に分けられる便益は3です。それでも甲6・乙6や甲7・乙5など、下限を満たす配分は複数あります。代案の改善だけでは、どれで合意するかまでは決まりません。

持ち帰る見方

  • 実行できる不合意時の選択肢を、合意の便益と比べる。
  • 受け入れられる範囲と、実際の取り分を分ける。

次に広がる疑問

  • 相手の選択を踏まえて自分の選択を考える
  • 労働条件の交渉を支える権利を読む
  • 双方の改善と、出発点の分配の評価を分ける

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出典

  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

合意しない場合に、何を選べるか

交渉での留保選択肢は、合意しなかった場合に選べる次善の案である。合意から得る便益は、その案から得られる便益と比べて考える。

対象
合意を拒否できる二者の交渉で、不合意時の選択肢と合意の便益を比べるモデル。
条件
実行可能な不合意時の選択肢を、必要な費用や時間も含めて比べる。
例外・限界
実行できない代案や、交渉相手に示す言葉だけを実際の選択肢と扱わない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

両方が受け入れられる範囲を探す

自発的な合意では、各人が不合意時より悪くならない条件が、合意可能な範囲を制約する。合計で便益が生まれるだけで、提示された分配を双方が受け入れるとは限らない。

対象
合意を拒否できる二者の交渉で、不合意時の選択肢と合意の便益を比べるモデル。
条件
合意を拒否でき、二者の選好と不合意時の便益を比べられる設定。
例外・限界
強制参加のモデルとは異なる。本人の選好が同じでなければ同じ条件を受け入れるとも限らない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

代案が変わると、受け入れる下限も変わる

不合意時の選択肢を良くする制度や機会があれば、その人が受け入れる合意の条件も変わりうる。交渉の結果は、説得の仕方だけで決まるわけではない。

対象
合意を拒否できる二者の交渉で、不合意時の選択肢と合意の便益を比べるモデル。
条件
同じ選好の下で、合意しない場合に実行できる案の便益が変わる。
例外・限界
代案が良くなったことだけで、必ず特定額の分配を獲得するとまではいえない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

合意の範囲と、実際の分け方を分ける

双方が得をする範囲が分かっても、その中のどの配分で合意するかは一つに決まらない。提案できる側、拒否できる条件、交渉のルール等が、便益の分け方に関わる。

対象
合意を拒否できる二者の交渉で、不合意時の選択肢と合意の便益を比べるモデル。
条件
合意から生まれる共同の余剰と、各人の不合意時の便益を分ける。
例外・限界
実際の交渉が必ず均等分配になるというモデルではない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html