経済の基礎
話し合いの取り分を、不成立時の利益からどう比べる?
ナッシュ交渉解は、合意できる効用の集合と決裂時の効用を指定し、決裂から増える二人の効用の積を最大にする分配です。提案を交互に繰り返す均衡とは、出発点が違います。
基本の用語
交渉で得られる利益は、合意の額だけでなく、合意しなかった場合との差でも評価します。ここでは二人の効用を座標にし、実現可能な組と決裂点を与える協力的な分配問題を考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 交渉で強いのは、相手を説得できる人だけ?実行できる不合意時の選択肢を、合意の便益と比べる。
- 交互に提案する交渉では、待てる人の取り分が大きくなる?交渉の順番と待つ費用を分けて取り分を読む。
総額でなく不成立からの増分を使う
同じ合意額でも、決裂して何も得られない人と、別の事業で収入を得られる人では、合意で増える効用が違います。決裂点dは、その合意が成立しないときの二人の効用を示します。
実現可能な効用の組の集合を指定します。標準的な交渉問題では集合の凸性やコンパクト性を置き、双方が決裂よりよくなる組があるとします。可能な組を省いたり、決裂点を変えたりすれば別の問題になります。
交渉の手番や期限を逐一指定する問題とは違います。こちらは与えられた集合と決裂点から、どんな性質を持つ分配規則を選ぶかという公理的な問題です。実際の交渉の過程を直接予測するための行動模型ではありません。
基準点も一緒に変える
合意の効用をuA・uB、決裂の効用をdA・dBとすると、増加分はuA−dAとuB−dBです。双方が決裂以上になる領域で、この二つの積を最大にする組を選びます。効用の合計を最大にする計算とは違います。
対称性、パレート効率性、効用の正のアフィン変換への不変性、無関係な選択肢からの独立性という公理から、この解が特徴付けられます。対称性は対称な交渉問題を同じように扱う条件で、どの問題でも額を半分ずつにする命令ではありません。
効用の単位や原点を変えるときは、実現可能集合と決裂点を同じ変換で動かします。増加分に正の倍率が掛かるだけなら、積にも一定の正の倍率が掛かり、選ぶ合意は保たれます。あらゆる単調変換に不変だという意味ではありません。
交渉の手順から出る解と分ける
総額を二人で分け、双方が金額を線形に評価する場合、決裂からの余剰を等しくする解を計算できます。決裂点が非対称なら、余剰は等しくても最終的な金額は違います。
一方の決裂時の取り分が上がれば、その人が合意から増やす必要がある部分と残る余剰が変わります。例ではこれが合意の分配へ反映しますが、相手の行動や市場の変化まで模型の外で固定した比較です。
交互提案の均衡に出てくる待つ価値を、この積へ自動的に置き換えません。外部選択肢をいつ行使できるか、合意可能集合がどう変わるかも、別途指定が必要です。分配の式だけでなく、どの交渉問題を与えたかを読みます。
- 決裂A20 / B0
余剰80を各40増加:合意A60 / B40。
- 決裂A40 / B0
余剰60を各30増加:合意A70 / B30。
- 効用の単位変更
集合と決裂点を同じ正のアフィン変換で動かす。
総額100・金額への線形効用・合意可能な分配区間を置く架空例です。決裂利益を与えた公理的な解で、交互提案の手順や現実の交渉過程は解いていません。
架空の例:余剰は半分でも、受取額は違う
総額100、二人とも金額がそのまま効用、決裂時はA20・B0とします。Aへの合意額をxとすると増加分の積は(x−20)(100−x)=1600−(x−60)²。最大はx=60で、A60・B40となります。決裂からの増加は双方40です。
Aの決裂時を40へ変え、他は同じなら余剰は60。増加分を各30としてA70・B30となります。どちらも全額を等分するのでなく、指定した決裂点から増える分を基準にしています。
持ち帰る見方
- 最終額と、決裂点から増える効用を区別する。
- 効用集合・決裂点・分配公理をそろえて読む。
次に広がる疑問
- 待つ価値と提案順序から求める分配は?
- 三人以上で離脱の誘因を抑えられる?
順番に読んでいる方へ
出典
Cooperative Games — MIT 14.126 notes (2017)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/25c82e8213fd23daa72c9382e921a2b0_MIT14_126S16_cooperative.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
総額でなく不成立からの増分を使う
Nash交渉解は、合意不成立時からの各人の効用増分の積を、双方が不成立より悪くならない実現可能案で最大化する。
- 対象
- 実現可能集合と不一致点から利得増分の積を最大化し、尺度不変性とルールの限界を示す。
- 条件
- 二人の実現可能効用集合は凸/コンパクト、不一致点は集合内、両者が厳密に改善できる案がある。架空計算は金銭線形効用、利得総量100、不一致20/0。
- 例外・限界
- 公理的分配基準であり交渉の時間順の均衡とは区別。任意の単調効用変換には不変でない。正のアフィン変換は集合と不一致点双方へ適用する。
Cooperative Games — MIT 14.126 notes (2017)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/25c82e8213fd23daa72c9382e921a2b0_MIT14_126S16_cooperative.pdf
基準点も一緒に変える
双方の効用と不一致点を正の線形尺度変更と定数加算でそろえて変えると、対応する合意結果は変わらない。
- 対象
- 実現可能集合と不一致点から利得増分の積を最大化し、尺度不変性とルールの限界を示す。
- 条件
- 二人の実現可能効用集合は凸/コンパクト、不一致点は集合内、両者が厳密に改善できる案がある。架空計算は金銭線形効用、利得総量100、不一致20/0。
- 例外・限界
- 公理的分配基準であり交渉の時間順の均衡とは区別。任意の単調効用変換には不変でない。正のアフィン変換は集合と不一致点双方へ適用する。
Cooperative Games — MIT 14.126 notes (2017)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/25c82e8213fd23daa72c9382e921a2b0_MIT14_126S16_cooperative.pdf
交渉の手順から出る解と分ける
この解は交渉過程の詳細を省いた公理的な方法であり、効率・対称・尺度不変・無関係選択肢独立の条件で特徴付けられる。
- 対象
- 実現可能集合と不一致点から利得増分の積を最大化し、尺度不変性とルールの限界を示す。
- 条件
- 二人の実現可能効用集合は凸/コンパクト、不一致点は集合内、両者が厳密に改善できる案がある。架空計算は金銭線形効用、利得総量100、不一致20/0。
- 例外・限界
- 公理的分配基準であり交渉の時間順の均衡とは区別。任意の単調効用変換には不変でない。正のアフィン変換は集合と不一致点双方へ適用する。
Cooperative Games — MIT 14.126 notes (2017)(MIT OpenCourseWare / Mihai Manea)https://ocw.mit.edu/courses/14-126-game-theory-spring-2016/25c82e8213fd23daa72c9382e921a2b0_MIT14_126S16_cooperative.pdf