経済の基礎

誰も損をしない改善だけで、公平な社会になる?

誰かが良くなり、他の誰も悪くならない変化がパレート改善です。社会全体の得が増えることとは違います。これ以上そのような改善ができない配分でも、公平な分配とは限りません。

基本の用語

配分を評価するときは、合計だけでなく、影響を受ける各人の前後の状況を比べます。何を好むかは本人ごとに異なり、金額だけで判断できるとは限りません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

誰も悪くならず、少なくとも一人が良くなる

二人が使う場所の割り当てを変更するとき、一人が使いやすくなり、もう一人の使いやすさが落ちないなら、パレート改善に当たります。少なくとも一人の改善と、全員の非悪化を一緒に確認する基準です。

比べる相手を二人に絞っても、周囲の人が不利益を受けるなら、全体の評価は変わります。例えば当事者の取引だけを見て、第三者に及ぶ損失を数えなければ、「誰も悪くならない」を確認したことにはなりません。

これ以上のパレート改善がない状態

実現可能な別の配分を探しても、誰も悪くせず誰かを良くする変更がない状態を、パレート効率的といいます。今の配分に全員が満足している、という意味ではありません。改善には誰かの不利益が伴う状態も含みます。

この判定は、どんな代案を実現できるかと、各人の選好によります。資源や制約が変われば、以前はできなかった改善が可能になることもあります。効率的な配分が一つしかないとも限りません。

得をする人と損をする人がいる変更は、別の基準も要る

一人の得が増え、他の人の得が減る変更は、そのままではパレート改善ではありません。増えた得の合計が減った得の合計を上回っていても、損をした人が悪化している点は変わりません。

補償できる余地があることと、実際に補償して本人が悪くならないことも別です。パレート基準だけで比べられない変更を判断するには、合計の便益、分配など、何を重視するかを別に示す必要があります。

効率的でも、分配が公平とは限らない

分ける資源をすべて使っている配分では、一人へ多く渡すために他の人から減らすしかないことがあります。非常に偏った配分でも、その条件ならパレート効率的になりえます。効率的という言葉だけで、その偏りをよいと評価したことにはなりません。

公平さを考えるなら、配分の偏りや必要の違いなど、採用する別の基準を明らかにします。誰も悪くならない改善を探す基準と、どんな分配を選びたいかという価値判断を、同じ言葉で片付けないことが大切です。

余った券を使う改善と、取り分を移す変更

架空の例

二人とも枚数が多い方を好む利用券を、甲に5枚、乙に3枚渡し、2枚が未使用だと置きます。未使用の1枚を乙へ渡せば、甲の5枚は変わらず乙が4枚になるので、この設定ではパレート改善です。

別の案として、最初の甲5枚・乙3枚から、甲の1枚を乙へ移して4枚ずつにするとします。乙は良くなりますが甲は悪くなるため、均等に近づく変更でもパレート改善ではありません。次に全10枚を甲9枚・乙1枚へ分けた状態を考えます。両者が枚数だけを好み、新しい券を作れないなら、乙の取り分を増やすには甲の取り分を減らす必要があります。この偏った配分もパレート効率的ですが、その判定だけで公平だと評価したことにはなりません。

持ち帰る見方

  • 合計の得と、各人が悪くならないことを分ける。
  • パレート効率は、公平さや全員の満足を保証しない。

次に広がる疑問

  • 余剰の合計と、本人ごとの改善を分ける
  • 所得の再分配で重視する基準を読む
  • 取引の外にいる人への影響も比べる

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出典

  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

誰も悪くならず、少なくとも一人が良くなる

パレート改善は、少なくとも一人が良くなり、他の誰も悪くならない変更である。「良くなる」は本人がその配分を好むことで、現金の額だけに限らない。

対象
実現可能な配分を、各人の選好に基づいて比べるパレート基準。
条件
影響を受ける人の状況を比較対象に含め、同じ配分の前後を比べる。
例外・限界
当事者の得が増えても、第三者が損をするなら、その人を含む比較ではパレート改善ではない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

これ以上のパレート改善がない状態

パレート効率的な配分とは、誰かを良くしつつ誰も悪くしない、実現可能な別の配分がない状態である。全員が満足しているという意味ではない。

対象
実現可能な配分を、各人の選好に基づいて比べるパレート基準。
条件
実現可能な代案の範囲と、各人が何を好むかを固定して比べる。
例外・限界
効率的な配分が一つだけとは限らず、制約や選好が変われば評価も変わる。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

得をする人と損をする人がいる変更は、別の基準も要る

ある変更で一人が良くなり他の人が悪くなるなら、パレート基準だけで二つの配分の優劣は決まらない。得と損の合計を比べる評価とは異なる。

対象
実現可能な配分を、各人の選好に基づいて比べるパレート基準。
条件
本人ごとの前後比較と、合計便益等の別の評価を分ける。
例外・限界
利益の総額が損失より大きいことだけで、実際に誰も損をしなくなったとはいえない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html

効率的でも、分配が公平とは限らない

資源を全て分けた配分には、非常に偏っていてもパレート効率的なものがある。公平さを評価するには、パレート効率とは別の判断基準が必要になる。

対象
実現可能な配分を、各人の選好に基づいて比べるパレート基準。
条件
分ける資源と実現可能な代案を決めた配分モデル。
例外・限界
パレート効率の判定だけでは、どの配分を公平と評価するかは決まらない。
  • The Economy 1.0, Unit 5: Property and power: Mutual gains and conflict(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/05.html