財政と暮らし

再分配は、所得の差をどう変える?

税や社会保険料の負担と、給付を合わせることで、世帯が使える資源の差は変わります。再分配の前後を比べる際は、何を所得に含めるかをそろえる必要があります。現金の手取りだけを見る比較と、医療などの現物給付も含める比較は同じではありません。

基本の用語

再分配は、税・保険料と給付を通じて資源の配分が変わることです。所得の差がどれだけ変わったかと、制度への賛否は別の問いです。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

税と給付を、一つの前後比較にする

負担だけを見ると、制度によって受け取る側を見落とします。反対に、給付だけを見ると、その財源を負担する側が見えません。再分配を見る基本は、所得から拠出を引き、給付を加えるという前後の比較です。社会保険料も、この比較では拠出に含まれます。

厚生労働省の所得再分配調査では、当初所得から税金と社会保険料を引き、社会保障の現金・現物給付を加えた額を再分配所得と呼びます。調査で定義する当初所得には、雇用者所得などに加えて私的給付も含まれるため、単に給与だけを指すわけではありません。

現物給付を含む再分配所得は、銀行口座に入って自由に使える現金と同じではありません。医療などのサービスを受けた価値も含む数字と、現金の可処分所得を比べるときは、その範囲の違いを確認します。数字が大きくても、その全額を家計が買い物に使えるという意味にはなりません。

現金給付が同じ額でも、受け取る世帯の所得や必要な支出は異なります。一方、現物給付を評価した額が大きい世帯は、それだけ病気などのサービスを必要としていた可能性もあります。給付額の順位を、そのまま暮らしの豊かさの順位に置き換えることはできません。

世帯の人数と時点をそろえる

一人暮らしと四人家族の所得をそのまま比較すると、暮らしを支える人数の違いを見落とします。所得再分配調査の等価所得は、世帯所得を世帯人数の平方根で割って調整したものです。単に人数で割る方法と異なり、定義をそろえて比較する必要があります。

対象期間や世帯の年齢構成も確かめます。例えば退職後の世帯は、働いて得る所得が小さくても年金などの給付を受ける場合があります。再分配前後の差を読んで、直ちに働く世帯同士の格差と同じ意味だと考えることはできません。

また、この調査は標本調査です。全世帯を一軒ずつ調べた値ではなく、推計には誤差があります。世帯数の少ない区分などでは、結果を幅をもって読む必要があります。平均だけでなく、どの世帯を数え、どの所得を含めたかが大切です。

再分配の前と後で同じ世帯を同じ期間について比べることも大切です。別の年の別の世帯集団を比べれば、人口構成や所得の変化も混ざります。どの制度のどの部分を評価したいかによって、必要な比較の条件は変わります。

差が縮まったことと、政策の評価を分ける

再分配前後に観察された所得の差は、制度が存在しなかった世界との比較そのものではありません。制度がなければ、働き方や貯蓄、家族の支援なども変わるかもしれないからです。一つの調査の前後比較だけで、制度全体の因果的な効果を確定できません。

差を縮めることをどの程度重視するか、どの負担を公平と考えるかは価値判断です。実際の制度を評価する際は、暮らしの保障、利用できる条件、働く選択への影響など、何を目標にしているかを示し、その目標に対応した証拠を確かめます。

給付後の格差が小さくなっても、すべての低所得世帯が必要な支援へ届いたとは分かりません。全体の分布を見る問いと、資格や申請の条件によって支援を利用できたかという問いを合わせると、平均的な改善だけでは見えない問題を考えられます。

二つの世帯を、税と給付の前後で比べる

架空の二世帯で、当初所得が100万円と500万円だとします。前者は拠出0万円・給付80万円、後者は拠出100万円・給付20万円と仮定すると、給付後は180万円と420万円です。両者の差は400万円から240万円になります。

ここでは現金だけを扱い、世帯人数、所得の種類、行動の変化を省いています。差が縮む計算の例であり、日本の制度の実績ではありません。医療などの現物給付を含む統計と比較するときは、集計の範囲をそろえる必要があります。

考えるときの注意点

  • 制度の因果効果や現行の格差改善率は推計していません。

持ち帰る見方

  • 拠出と給付を合わせて前後を比べる。
  • 現金所得と現物給付を含む所得を区別する。
  • 世帯条件、統計の誤差、価値判断を分ける。

次に広がる疑問

  • 平均所得が増えれば格差も縮まる?
  • 保険料と給付は、一人の中で一致する?

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出典

  • 所得再分配調査 調査の概要(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/tyousa/index.html

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

税と給付を、一つの前後比較にする

再分配所得は当初所得から税と保険料を引き現金現物給付を加える。

対象
所得再分配調査用語6-9
条件
調査定義。
例外・限界
可処分所得と現物を含む再分配所得は異なる。
  • 所得再分配調査 調査の概要(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/tyousa/index.html

世帯の人数と時点をそろえる

世帯人数調整や標本誤差により比較の条件をそろえる必要がある。

対象
用語10、利用上の注意
条件
等価所得の定義と標本調査。
例外・限界
一人単位への単純割り算とは違う。
  • 所得再分配調査 調査の概要(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/tyousa/index.html