経済の基礎
会社が一社だけでも、新しい参入の脅威は価格を下げる?
一社しか営業していなくても、利益があれば別の会社が参入できる条件が、価格設定を制約するという理論があります。ただし、参入・退出の費用や価格反応に強い仮定があり、会社数だけから現実の価格が競争的だとは判定できません。
基本の用語
独占の問題を考えるときは、今いる売り手どうしの競争と、市場外から入ってくる売り手の可能性を分けます。コンテスタブル市場は後者に注目するモデルです。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 独占企業は好きなだけ値上げできる?市場を定め、近い代替品があるかを見る。
- 払ったお金がもったいなくても、やめた方がよい?取り戻せない過去の支出は、続けてもやめても変わらない。
一社だけの市場でも、参入される可能性を考える
既存企業が高い価格を付けたとき、別の企業がそれより低い価格で売って利益を得られるなら、既存企業はその参入を考慮する必要があります。理論は、現に営業する会社の数だけでなく、市場外に利益機会が残っているかを見ます。
そのため一社で供給する市場も対象になります。ただし、一社でも価格が低いという結論を先に置くのではありません。別の企業が実際に利用できる技術や費用、参入計画の条件を確かめる必要があります。
自由な参入だけでなく、費用と価格反応の条件がある
完全なコンテスタビリティでは、参入・退出の障壁がなく、同様の技術と費用構造が使え、退出して回収できない費用がない条件を置きます。参入者が既存価格を所与として利益機会を評価することも、強い仮定です。
参入して利益を得た後に退出できる脅威が、既存企業の対抗で消されないという条件が重要になります。既存企業がすぐに価格を変え、参入者の利益がなくなる場合にも、同じ結果になるとは限りません。参入を認める制度だけでは、この価格反応の条件はわかりません。
固定費と、退出しても戻らない費用を分ける
生産量に応じて変わらない固定費と、撤退しても回収できない費用は同じではありません。設備の購入費が固定費でも、撤退時に売って回収できる設定なら、売れない専用設備へ投資する場合と参入のリスクは違います。
参入を自由にするという仮定は、投資を無料にするという意味ではありません。新しい参入者が何を負担し、撤退時にいくら回収できるかを分けます。回収不能費用と既存企業の戦略的反応が加わると、参入の脅威の結論も変わりえます。
参入の脅威と、現実の値下がりを区別する
一定の限界費用だけを持つ単純モデルと、固定費があり平均費用が下がるモデルでは、費用を賄える価格の条件が違います。後者の自然独占の例では、需要と平均費用の交点で、限界費用を上回る価格でも利益を得る値下げ参入ができない条件があります。
したがって「参入しやすければ必ず価格は限界費用まで下がる」とは言えません。この理論を現実へ使うには、費用の回収可能性、参入者の技術、既存企業の反応を確認します。会社の数は、その条件の代わりにはなりません。
同じ初期支出でも、退出時の回収が違う
架空の例
市場へ入るための設備に100万円を払う二つの設定を比べます。甲では退出すれば設備を100万円で売却でき、乙では他の用途がなく売却額が0円だと置きます。初期支出が同じでも、退出後に戻らない額は甲で0円、乙で100万円です。
設備代の回収条件に加え、利益を得て参入できるかには、営業費用と収入、資産を実際に売れる条件、既存企業が価格を変える条件も関わります。初期支出の大きさと、退出時に回収できない部分を分けて比べます。
持ち帰る見方
- 市場内の会社数と、市場外から参入できる条件を分ける。
- 固定費、回収不能費用、価格反応の仮定を確認する。
次に広がる疑問
- 一社が価格を選ぶ場合の利益と費用を読む
- 既に回収できない費用と、新たな参入費用を分ける
- 既存企業の先行投資と参入後の反応を読む
出典
Contestable Markets: An Empty Box or an Instrument of Economic Policy? (Discussion Paper FS IV 95-17)(Wissenschaftszentrum Berlin für Sozialforschung(WZB))https://bibliothek.wzb.eu/pdf/1995/iv95-17.pdf
確認日:2026-10-05
2.5 — Contestable Markets (ECON 316 • Game Theory • Fall 2021)(Ryan Safner(著者本人のECON316講義資料))https://gamef21.classes.ryansafner.com/slides/2.5-slides.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
一社だけの市場でも、参入される可能性を考える
コンテスタブル市場の理論は、現に営業する会社の数だけでなく、利益機会があれば市場外の会社が参入できるという潜在競争が、既存企業の価格設定へ規律を及ぼすと考える。一社で供給する市場も理論の対象に含む。
- 対象
- 市場外の企業の潜在参入によって、既存企業の価格設定を制約する経済学のモデル。
- 条件
- 利益を得られる参入計画が実行できるという脅威が問題となる。実際に多くの企業が既に営業する状況と区別する。
- 例外・限界
- 現に一社であることだけでは、参入の条件や価格への制約が働くとは判定できない。
Contestable Markets: An Empty Box or an Instrument of Economic Policy? (Discussion Paper FS IV 95-17)(Wissenschaftszentrum Berlin für Sozialforschung(WZB))https://bibliothek.wzb.eu/pdf/1995/iv95-17.pdf
2.5 — Contestable Markets (ECON 316 • Game Theory • Fall 2021)(Ryan Safner(著者本人のECON316講義資料))https://gamef21.classes.ryansafner.com/slides/2.5-slides.pdf
自由な参入だけでなく、費用と価格反応の条件がある
完全なコンテスタビリティには、参入・退出の障壁がなく、潜在参入者が同様の技術と費用構造を利用でき、退出して回収できない費用がないという強い条件を置く。既存企業の価格を所与として参入し、利益を得て退出できるという条件も重要になる。
- 対象
- 参入・退出、技術・費用、既存企業の価格反応を理想化した完全コンテスタビリティのモデル。
- 条件
- 静学モデルでは、潜在参入者は既存企業の価格を所与として参入計画を考える。利益を得て退出できる参入の脅威を、既存企業の対抗によって消されない条件を置く。
- 例外・限界
- 同等の費用は仮定である。自由な参入・退出は全投資が無料という意味ではない。回収不能費用や素早い価格反応がある場合にも、同じ結果となるとは限らない。
Contestable Markets: An Empty Box or an Instrument of Economic Policy? (Discussion Paper FS IV 95-17)(Wissenschaftszentrum Berlin für Sozialforschung(WZB))https://bibliothek.wzb.eu/pdf/1995/iv95-17.pdf
2.5 — Contestable Markets (ECON 316 • Game Theory • Fall 2021)(Ryan Safner(著者本人のECON316講義資料))https://gamef21.classes.ryansafner.com/slides/2.5-slides.pdf
固定費と、退出しても戻らない費用を分ける
固定費があることと、退出時に回収できない費用があることは違う。資産を売却等して回収できる固定費なら、回収不能費用がある場合と潜在参入者のリスクが異なる。回収不能費用は参入者が新たに負担する費用として、参入の利益機会を弱め得る。
- 対象
- 固定費と回収不能費用を分けて、潜在参入の利益とリスクを比較するモデル。
- 条件
- 退出で資産の費用を回収できる設定か、回収不能な投資が残る設定かを分ける。
- 例外・限界
- 全ての固定費がサンクコストとは限らない。少額の回収不能費用でも、戦略的な反応と組み合わされれば結果が変わりうる。
2.5 — Contestable Markets (ECON 316 • Game Theory • Fall 2021)(Ryan Safner(著者本人のECON316講義資料))https://gamef21.classes.ryansafner.com/slides/2.5-slides.pdf
Contestable Markets: An Empty Box or an Instrument of Economic Policy? (Discussion Paper FS IV 95-17)(Wissenschaftszentrum Berlin für Sozialforschung(WZB))https://bibliothek.wzb.eu/pdf/1995/iv95-17.pdf
参入の脅威と、現実の値下がりを区別する
コンテスタブル市場の結果を、常に価格が限界費用まで下がるという一般則にはできない。同等で一定の限界費用しかないモデルと、固定費があり平均費用が下がるモデルでは、費用を賄える価格の条件が異なる。会社数だけで市場の価格や効率を断定しない。
- 対象
- 一定限界費用だけの条件と、固定費があり平均費用が下がる条件を比較するモデル。
- 条件
- 平均費用が下がる自然独占の例では、需要と平均費用の交点で価格が決まる。限界費用を上回っていても、より低い価格で利益を得る参入ができない条件を置く。
- 例外・限界
- 参入の制度上の自由さだけでは、実際の費用条件や価格反応は分からない。モデルの価格を実際の特定市場の価格と同一視しない。
Contestable Markets: An Empty Box or an Instrument of Economic Policy? (Discussion Paper FS IV 95-17)(Wissenschaftszentrum Berlin für Sozialforschung(WZB))https://bibliothek.wzb.eu/pdf/1995/iv95-17.pdf
2.5 — Contestable Markets (ECON 316 • Game Theory • Fall 2021)(Ryan Safner(著者本人のECON316講義資料))https://gamef21.classes.ryansafner.com/slides/2.5-slides.pdf