経済の基礎
時給が上がると、働く時間は必ず増える?
時給が上がっても、働きたい時間が必ず増えるとは限りません。自由な時間を一時間増やすときに諦める収入が大きくなる一方、同じ時間だけ働いても多く稼げるからです。自由な時間をどれほど欲しいかによって、この二つの働きの合計が変わります。
基本の用語
ここでは、本人が勤務時間を選べる模型で、買える物・サービスと自由な時間を比べます。会社が実際に用意する勤務時間とは分けて考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 無料でも費用があるとはどういうこと?代金がゼロでも、時間や資源の別の使い道は失われる。
自由な時間を増やす費用は、受け取れなくなる賃金
時給が1,200円なら、一時間仕事を減らすと受け取れなくなる賃金は1,200円です。自由な時間の「値段」は、遊ぶために払う料金だけではありません。その時間に働いて得られたはずの収入も、機会費用として考えます。勤務を減らせることと、その分の消費を諦められることの両方が選択に関わります。
時給が1,500円になれば、同じ一時間の自由時間のために諦める収入は1,500円です。他の物の価格が変わらない条件では、自由時間が消費に比べて高くなったと捉えられます。これが、自由時間を減らして働く方へ向かう代替効果です。休むことを軽視するという価値判断ではなく、選択の交換条件がどう変わるかの説明です。
一日を仕事と自由時間へ分ける模型でも、睡眠や家事が不要になるという意味ではありません。現実には動かせない時間があります。まず本人が増減できる勤務時間の範囲を確かめ、その範囲の一時間と、受け取る収入の関係を比べます。
時給が上がると、二つの効果が働く
同じ時間だけ働いた場合にも目を向けます。時給が上がれば、前と同じ労働時間で、より多くの物・サービスを買えるようになります。増えた豊かさを全部買い物に回す代わりに、仕事を減らして自由時間を増やしたいと考えることもできます。これが、収入の増加から生まれる所得効果です。
自由時間を、所得が増えると欲しい量も増える「正常財」として考えるなら、所得効果は働く時間を減らす方向へ作用します。代替効果は働く時間を増やす方向なので、両者は反対向きです。二つは実際に昇給が二回あるという話ではありません。一回の時給上昇の影響を、交換条件の変化と消費可能額の増加に分けて考えています。
どちらの効果が強いかは、本人が消費と自由時間をどう評価するかによります。同じ昇給額でも、以前の収入や希望する時間の違いを無視して、全員が同じ時間だけ働くと予測することはできません。所得が増えても自由時間を増やしたくない選好なら、所得効果の向きや大きさも別に考えます。
時間を選べることも、模型の条件
二つの効果を合わせ、代替効果が強ければ希望する勤務時間が増え、所得効果が強ければ減るという可能性が出ます。「時給が高いほど必ず長く働く」という一本の関係だけでは足りません。観察した時間が増えた場合も、それだけでどちらの効果の大きさまで測れたとはしません。
本人の希望と、実際の勤務時間は別です。勤務シフトが固定されていたり、会社が追加の勤務を用意しなかったりすれば、本人は希望どおり選べません。税や給付、社会保険によって手元へ残る額が変わる場合も、この税などを省いた時給だけの模型とは条件が違います。
働く時間のニュースでは、時給の変化だけでなく、誰の時間か、勤務を選べるか、手取りを比べているかを確かめます。本人が休みを大切にすることと、働く能力が低いことも同じではありません。希望する時間の選択を、努力や能力の評価へそのまま置き換えないことが大切です。
- 代替効果
自由時間の機会費用が上がり、働く時間を増やす方向
- 所得効果
同じ勤務でも買える量が増え、自由時間が正常財なら働く時間を減らす方向
勤務時間を本人が選べ、他の物価や制度条件を固定する模型です。
同じ収入を、短い時間で得られる場合
架空の例として、税などを省き、本人が勤務時間を選べるとします。時給1,200円で一日5時間働くと6,000円です。時給が1,500円へ上がれば、5時間で7,500円、4時間でも6,000円を得られます。
5時間を維持して買える量を増やす選択と、4時間へ減らして自由時間を増やす選択が可能です。この計算は選べる組合せを示すもので、本人がどちらを好むかは決めていません。
持ち帰る見方
- 時給は自由時間の機会費用でもある。
- 時給上昇には、代替効果と所得効果がある。
- 勤務時間の希望と、実際に選べる範囲を分ける。
次に広がる疑問
- 時給や給与条件が決まる側を読む
- 勤務時間の法律上の制限を確認する
順番に読んでいる方へ
出典
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
自由な時間を増やす費用は、受け取れなくなる賃金
一定の時給では、自由時間を一時間増やす機会費用は、その時間に稼げた賃金に対応する。
- 対象
- 所与の時給で労働時間と自由時間を選ぶ個人の模型。
- 条件
- 本人が時給を与えられ、働く時間と自由時間を選べる。賃金以外の所得・物価・選好を固定し、自由時間を正常財とする模型。
- 例外・限界
- 契約で勤務時間を選べない場合、税・給付等の境目がある場合は比較条件が異なる。自由時間への所得効果は本人の選好による。
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html
時給が上がると、二つの効果が働く
時給上昇は自由時間の機会費用を高める代替効果と、同じ労働時間で消費可能額を増やす所得効果を持つ。自由時間が正常財なら、二つの効果は働く時間へ逆方向に働く。
- 対象
- 所与の時給で労働時間と自由時間を選ぶ個人の模型。
- 条件
- 本人が時給を与えられ、働く時間と自由時間を選べる。賃金以外の所得・物価・選好を固定し、自由時間を正常財とする模型。
- 例外・限界
- 契約で勤務時間を選べない場合、税・給付等の境目がある場合は比較条件が異なる。自由時間への所得効果は本人の選好による。
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html
時間を選べることも、模型の条件
所得効果と代替効果の合計によって希望する労働時間の増減が決まるため、時給上昇だけでは必ず増えるとは言えない。
- 対象
- 所与の時給で労働時間と自由時間を選ぶ個人の模型。
- 条件
- 本人が時給を与えられ、働く時間と自由時間を選べる。賃金以外の所得・物価・選好を固定し、自由時間を正常財とする模型。
- 例外・限界
- 契約で勤務時間を選べない場合、税・給付等の境目がある場合は比較条件が異なる。自由時間への所得効果は本人の選好による。
The Economy 1.0, Unit 3: Scarcity, work, and choice(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/03.html