経済の基礎
商品が売れそうだと、会社の求人はなぜ増える?
会社が人を雇うのは、その人が作る商品やサービスを売るためです。追加で雇う人が増やす売上と、追加の雇用費用を比べます。商品の需要が増えれば求人を増やす理由になりえますが、注文の増加率と採用人数の増加率が同じになるとは限りません。
基本の用語
労働需要は、企業が各賃金で雇いたい量です。本人が働きたい時間を示す労働供給とは別です。ここでは設備などを固定し、企業が利益を最大にする短期の模型を考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 給料は、働く量だけで決まる?生産性・交渉・制度と労働条件
- 生産性が上がるとは、忙しく働くこと?産出と投入の両方を確認する。
追加の一人が増やす売上を考える
人を一人増やしたとき、産出がいくつ増えるかを労働の限界生産と呼びます。今の従業員一人あたりの平均生産量ではありません。作業台や機械が限られる職場なら、人数を増やすにつれ追加の人が増やせる産出が小さくなる、という設定を置けます。
次に、その追加産出を売ることで収入がいくら増えるかを求めます。製品の売値が一個500円で変わらず、追加の人が一日20個増やせるなら、追加の売上は1万円です。追加の雇用費用がこれを下回る範囲では、雇うことで利益が増えます。現実には賃金以外の採用・訓練費用も必要なので、売上と月給だけの比較では足りません。
商品の需要から、労働の需要が生まれる
このため、労働への需要は商品への需要から生まれる「派生需要」と呼ばれます。商品を買いたい人が増え、企業が受け取る価格や追加収入が高まれば、同じ人数が生む産出の価値も高くなります。他の条件を固定すれば、以前は採算が合わなかった追加採用が有利になることがあります。
反対に、注文が増えても、余っている設備や勤務時間をまず使う場合は、直ちに人数を増やす必要がありません。雇う量は人数だけでなく時間にも表せます。また、新しい道具が特定の作業を代替するか、働く人の産出を増やすかでも結果は変わります。「需要が増えたから何人増える」と機械的に換算する関係ではありません。
一社が市場賃金を所与として追加採用を考える場合と、多くの企業が一斉に採用を増やす場合も区別します。後者では働く人の供給も関わり、市場賃金自体が変わりえます。最初の比較で賃金を固定しているのは、一社の需要を取り出すための条件です。さらに、求人を出したことと、必要な技能の人を実際に採用できたことも別です。商品の需要から求人への誘因を説明しても、採用までの探索や条件の一致を省けば、雇用がいつ実現するかは分かりません。
売値と限界収入は、いつも同じではない
企業が商品価格を所与として売れるなら、追加の産出にその価格を掛けて売上増を求めます。これに対し、追加販売のために値下げが必要な企業では、売値よりも、売上全体がどれだけ増えるかという限界収入を使います。値下げによって既存の販売分からの収入も減るからです。
労働の限界生産に限界収入を掛けたものが限界収入生産物です。市場賃金を所与とする模型では、それと追加雇用費用が釣り合う量まで雇用を考えます。この数字は本人だけの能力を測る成績表ではありません。設備、仕事の組合せ、製品の売れ方が一緒に入っています。個人の賃金が必ずこの式で決まるという主張とも分けます。
架空の工房で、追加採用を比べる
設備を固定した工房で、追加の一人が一日20個の製品を作り、すべて一個500円で売れるとします。追加売上は20×500=1万円。賃金などの追加費用が一日9,000円なら、差額は1,000円です。
製品価格が400円になれば追加売上は8,000円で、同じ追加費用には届きません。逆に価格600円なら1万2,000円です。これは一人を追加する比較で、工房全体の利益額ではありません。追加販売で値下げが必要な場合には、この単純な掛け算を使えません。
持ち帰る見方
- 求人を考えるときは、売れる産出の追加価値と雇用の追加費用を対応させる。
- 製品需要、設備、価格設定の条件を確かめ、個人の能力や給与と同一視しない。
次に広がる疑問
- 商品の値下げで売上全体が増えるとは限らないのはなぜだろう?
順番に読んでいる方へ
出典
Principles of Economics 3e §14.1 The Theory of Labor Markets(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/14-1-the-theory-of-labor-markets
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
追加の一人が増やす売上を考える
企業の労働需要は、労働の限界生産と追加産出の売上価値に関わる派生需要である。
- 対象
- Demand for Labor in Perfectly Competitive Output Markets / Derived Demand / Demand for Labor in Imperfectly Competitive Output Markets
- 条件
- 短期の設備等固定、利益最大化、所与の市場賃金。製品市場の競争状態を区別。
- 例外・限界
- 実際の個人の貢献や給与の算定式にせず、採用の調整費用・他の費用を省略した模型。
Principles of Economics 3e §14.1 The Theory of Labor Markets(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/14-1-the-theory-of-labor-markets
商品の需要から、労働の需要が生まれる
製品需要の増加が産出の価格や追加収入を高めれば、他の条件を固定した企業の労働需要が増えうる。
- 対象
- Demand for Labor in Perfectly Competitive Output Markets / Derived Demand / Demand for Labor in Imperfectly Competitive Output Markets
- 条件
- 短期の設備等固定、利益最大化、所与の市場賃金。製品市場の競争状態を区別。
- 例外・限界
- 実際の個人の貢献や給与の算定式にせず、採用の調整費用・他の費用を省略した模型。
Principles of Economics 3e §14.1 The Theory of Labor Markets(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/14-1-the-theory-of-labor-markets
売値と限界収入は、いつも同じではない
製品価格を所与とする場合は限界生産×価格、価格設定力を持つ場合は限界生産×限界収入で追加収入を考える。
- 対象
- Demand for Labor in Perfectly Competitive Output Markets / Derived Demand / Demand for Labor in Imperfectly Competitive Output Markets
- 条件
- 短期の設備等固定、利益最大化、所与の市場賃金。製品市場の競争状態を区別。
- 例外・限界
- 実際の個人の貢献や給与の算定式にせず、採用の調整費用・他の費用を省略した模型。
Principles of Economics 3e §14.1 The Theory of Labor Markets(OpenStax/Shapiro, MacDonald, Greenlaw)https://openstax.org/books/principles-economics-3e/pages/14-1-the-theory-of-labor-markets