経済の基礎

収入が増えても、ある商品の買う量が変わらないことはある?

他の買い物に使う余力を効用へ線形に入れる模型では、その余力が正に残る範囲で、所得が増えても対象商品の最適量が変わらないことがあります。低所得で余力を使い切る場合は別です。

基本の用語

効用は買い物の好みを表します。ここでは対象商品の量qと、ほかの使い道へ残す余力mを比べ、余力一円の効用増分を一定に置きます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

一円の余力の価値をそろえる

準線形効用をu=m+f(q)と書きます。余力mは効用へそのまま加わり、商品の量qによる評価はf(q)で表します。対象の価格pに対し、予算はm+pq=wです。余力の価格を1と置くので、全ての支出を同じ金額単位で比べられます。

f(q)は量が増えると高くなる一方、追加の一単位による増え方が小さくなる凹の関数とします。欲しい量を増やす便益と、そのために失う余力を比べる模型です。人がどんな所得でもお金の価値を同じに感じる、という実測の説明ではありません。

価格を固定して予算式を代入すると、効用はw+f(q)−pqになります。wは、どのqを選んでも共通で加わる額です。選べる範囲の端にぶつからない限り、最善のqを選ぶ比較からその共通額は外せます。

余力が残る範囲では量が変わらない

余力mを正に残せる内点では、商品の追加評価fの傾きと価格pがつり合う量を選びます。そのつり合いには所得wが入っていません。所得が増えた分は余力へ回り、対象商品の量は変わらないという需要の形を説明できます。

所得を増やしても対象商品の量が同じであることを、ここでは所得効果がゼロと表します。価格が変われば、量を増やすために失う余力も変わるので、対象商品の量は変わりえます。所得への無反応と、値上げへの無反応は違います。

この条件では商品の便益を金額の余力と並べるため、余剰の計算を扱いやすくできます。ただし準線形という仮定を実際の家計へ使えるかは確認が必要です。所得の変化を全て省いてよい万能の模型ではありません。

余力を使い切ると端点になる

理論上選びたい量の代金が所得を超えたら、その量は買えません。mを負にできない条件では、余力を使い切るm=0の端点が候補になります。内点の式が所得を含まないからといって、購入可能性まで所得と無関係になるわけではありません。

所得が低い端点では、買える量の上限はw÷pです。そこから所得が増えると、対象商品の量も増やせます。準線形の形を持つ同じ好みでも、所得範囲が変わると、量の所得反応が変わることがあります。

判断では、価格から求めた内点候補の代金を所得と比べ、余力が残るかを最後に確かめます。「所得効果ゼロ」という結論に必要なのは効用の形だけではなく、基準財に正の支出があるという条件です。

架空の例所得範囲で変わる準線形需要
  • 所得10

    購入量10、余力0。予算の端に達する。

  • 所得40

    購入量25、余力15。内点候補を買える。

  • 所得60

    購入量25、余力35。増えた所得は余力に回る。

価格1、効用m+10√q、数量は可分の架空例です。余力が正の範囲の結論を、低所得の端点へ延長しません。

架空の例:希望する量と買える量

効用をu=m+10√q、価格を一単位1、所得をwとします。追加評価は5÷√qなので、内点候補はq=25です。所得40ならm=15、所得60ならm=35で、どちらも量は25です。

所得10では25単位を買えません。0から10単位の範囲では追加評価が価格より高いので、q=10、m=0を選びます。所得20ならq=20へ増えます。所得25を超え余力が残る範囲で初めて、量25が固定されます。

持ち帰る見方

  • 所得効果ゼロには、対象の量を買った後も余力が正に残る条件が要る。
  • 内点候補の計算後に、予算と非負数量を確かめる。

次に広がる疑問

  • 相似的な好みなら所得の増加はどう働く?
  • 一方の商品だけを買う端点はどう決める?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

一円の余力の価値をそろえる

準線形効用では一つの財が効用へ線形に入り、他の財の効用が加わる。

対象
準線形効用の内点需要と、支払余力が乏しい端点で所得効果が戻る条件を解く。
条件
効用u=m+f(q)、m,q≥0、mの価格1、qの価格p>0、fは増加凹、m>0の内点、価格固定。
例外・限界
m=0となる低所得では内点の所得効果ゼロを延長しない。需要の実測予測ではない。
  • Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf

余力が残る範囲では量が変わらない

基準財を正の量買う内点では、価格が同じなら他の財の最適量は所得変更で変わらない。

対象
準線形効用の内点需要と、支払余力が乏しい端点で所得効果が戻る条件を解く。
条件
効用u=m+f(q)、m,q≥0、mの価格1、qの価格p>0、fは増加凹、m>0の内点、価格固定。
例外・限界
m=0となる低所得では内点の所得効果ゼロを延長しない。需要の実測予測ではない。
  • Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf

余力を使い切ると端点になる

基準財に正の支出があるという条件を外すと、準線形の内点需要をそのまま低所得へ延長できない。

対象
準線形効用の内点需要と、支払余力が乏しい端点で所得効果が戻る条件を解く。
条件
効用u=m+f(q)、m,q≥0、mの価格1、qの価格p>0、fは増加凹、m>0の内点、価格固定。
例外・限界
m=0となる低所得では内点の所得効果ゼロを延長しない。需要の実測予測ではない。
  • Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf