経済の基礎
値上がりした食品を、前より多く買うことがある?
値上がりすると買う量が減るのが普通ですが、例外を説明する模型があります。購買力が下がって安い食品へ戻る効果が、その食品から離れる効果を上回る場合です。安い食品なら必ずそうなるわけではありません。
基本の用語
ここでは一人の所得、他の商品の価格、品質を固定し、同じ食品の値段だけを変えます。店の売上全体の増加とは別の問いです。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 時給が上がると、働く時間は必ず増える?時給は自由時間の機会費用でもある。
- 同じ値上げでも売れ方が違うのはなぜ?弾力性は価格と数量の割合変化の比。
値上げには二つの向きがある
財の値上げには、効用を一定に保つ代替効果と、購買力の低下に伴う所得効果がある。代替効果は値上げした財の需要を増やす向きには働かない。
同じ金額で以前ほど買えなくなるのが購買力の低下です。一方、他の物に比べて高くなった食品を避けるのが代替の向きです。二つは同じ値上げで起きても、判断する理由が異なります。
代替効果だけを取り出す比較では、満足を同じに保つよう買える額を調整します。現実の所得を増やした出来事という意味ではなく、値上げの反応を分解するための仮想的な比較です。
安い主食へ戻る所得効果を考える
所得が増えると需要が減る劣等財では、価格上昇に伴う購買力低下の所得効果が、その財の需要を増やす向きになりうる。
例えば所得が増えたら主食を少し減らし、おかずを増やすような好みを置けます。この人は購買力が落ちると逆におかずを減らして主食へ戻ろうとします。同じ財でも、人や所得範囲によってこの関係は違います。
劣等財という語は品質が悪いという評価ではありません。所得が増えたときの需要の向きを表す名称です。店頭で安いことや、栄養の少なさから、その食品を劣等財だと決めることはできません。
代替を上回ると、需要の向きが逆になる
劣等財で、需要を増やす所得効果が需要を減らす代替効果を上回ると、価格上昇で需要が増えるGiffen財になる。
値上げした主食を減らす代替の向きが2単位、購買力低下で増やす向きが3単位なら、合計では1単位増えます。この例の数字は反応の分解を説明する設定で、現実の家計を測った結果ではありません。
劣等財でも所得効果が小さければ、合計の需要は減ります。「所得が増えると減る」と「価格が増えると増える」は同じ条件ではありません。Giffen財は後者が成立する限られた場合を指します。
買う量が増えた理由を確かめる
価格と数量の二つの観測だけで、所得や他財価格を固定した需要曲線上の移動だとは分からない。所得変化は需要曲線自体も移動させうる。
所得が増えた、人口が増えた、他の食品も値上がりした場合には、数量が増えても別の説明が可能です。高い物ほど好ましいという評価の変化を、固定した好みと購買力によるこの模型へ混ぜることもできません。
ニュースを読むときは、誰の購入量を、どの期間に、何を固定して比べたかを探します。値上げと数量増加の同時発生だけで特殊な需要が確認されたとせず、家計所得や代替品の価格を追加で確かめます。
ここで固定する所得は名目の金額です。値上げの後に同じ生活水準を維持できるよう所得まで増やすなら、購買力低下の条件が変わります。「収入は同じだった」と「買える量は同じだった」を分けると、二つの効果を取り違えにくくなります。所得の金額と価格の組を併記して比較します。
条件を置いた具体例
架空の例
ある家計が主食とおかずだけを買うとします。主食の値上げ後も満足を保つ補償をした比較では主食が2単位減り、その補償を外して購買力低下を加えると主食が3単位増える、という設定です。
最初の量と比べると差は−2+3=1単位で、主食の購入が増えます。所得効果を1単位と置き直すなら差は−1単位です。安い主食という名称だけで結論が決まるわけではありません。
持ち帰る見方
- 値上がりすると買う量が減るのが普通ですが、例外を説明する模型があります。
- 価格と数量の二つの観測だけで、所得や他財価格を固定した需要曲線上の移動だとは分からない。所得変化は需要曲線自体も移動させうる。
次に広がる疑問
- 時給が上がると、働く時間は必ず増える?
- 商品の値段は、どう決まる?
出典
Lecture Summary 04: Demand Curves, MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec4.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
値上げには二つの向きがある
財の値上げには、効用を一定に保つ代替効果と、購買力の低下に伴う所得効果がある。代替効果は値上げした財の需要を増やす向きには働かない。
- 対象
- 所得と他財価格を固定した消費者の需要の理論。
- 条件
- 価格上昇で代替効果と購買力の低下による所得効果を分ける。
- 例外・限界
- 劣等財の全部がGiffen財ではない。所得・品質・他財価格等も変わった観測を自動的にGiffenの実証としない。
Lecture Summary 04: Demand Curves, MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec4.pdf
安い主食へ戻る所得効果を考える
所得が増えると需要が減る劣等財では、価格上昇に伴う購買力低下の所得効果が、その財の需要を増やす向きになりうる。
- 対象
- 所得と他財価格を固定した消費者の需要の理論。
- 条件
- 価格上昇で代替効果と購買力の低下による所得効果を分ける。
- 例外・限界
- 劣等財の全部がGiffen財ではない。所得・品質・他財価格等も変わった観測を自動的にGiffenの実証としない。
Lecture Summary 04: Demand Curves, MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec4.pdf
代替を上回ると、需要の向きが逆になる
劣等財で、需要を増やす所得効果が需要を減らす代替効果を上回ると、価格上昇で需要が増えるGiffen財になる。
- 対象
- 所得と他財価格を固定した消費者の需要の理論。
- 条件
- 価格上昇で代替効果と購買力の低下による所得効果を分ける。
- 例外・限界
- 劣等財の全部がGiffen財ではない。所得・品質・他財価格等も変わった観測を自動的にGiffenの実証としない。
Lecture Summary 04: Demand Curves, MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec4.pdf
買う量が増えた理由を確かめる
価格と数量の二つの観測だけで、所得や他財価格を固定した需要曲線上の移動だとは分からない。所得変化は需要曲線自体も移動させうる。
- 対象
- 所得と他財価格を固定した消費者の需要の理論。
- 条件
- 価格上昇で代替効果と購買力の低下による所得効果を分ける。
- 例外・限界
- 劣等財の全部がGiffen財ではない。所得・品質・他財価格等も変わった観測を自動的にGiffenの実証としない。
Lecture Summary 04: Demand Curves, MIT 14.01 (2023)(MIT OpenCourseWare / Jonathan Gruber)https://ocw.mit.edu/courses/14-01-principles-of-microeconomics-fall-2023/mit14_01_f23_lec4.pdf