経済の基礎
満足を保つための補償があれば、値上がりした物は必ず多く買う?
他の価格と満足の水準を固定し、その満足を最安で得るなら、値上がりした財の量は増えません。給付で財布が大きくなるという見方だけでは、補償需要の方向を読めません。二つの最安という条件を足すと、数量の制約が分かります。
基本の用語
補償需要は満足を固定した最低支出の数量です。所得を固定して最高の満足を選ぶ通常需要とは、価格変更後の条件が違います。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 値上がりした食品を、前より多く買うことがある?値上がりすると買う量が減るのが普通ですが、例外を説明する模型があります。
- 買う量を比べるとき、収入を固定する場合と満足を固定する場合は同じ?予算固定の通常需要と効用固定の補償需要を具体的な買い方で対比する。
固定するのは所得ではなく満足
補償で予算が増えたのだから、値上がりした財も多く買える、と考えたくなります。しかし増やす予算は、元の満足を最安で保つために必要な額です。豊かさそのものを上積みする所得増加の比較ではありません。
ある財だけが高くなると、同じ満足を得る他の買い方が相対的に有利になります。最安の選択を守るなら、その財を増やす方向には進めません。この法則は弱い減少で、必要比率の固定された好みでは量が変わらない場合もあります。
他の価格、選好、購入候補と目標効用を同じにします。満足の目標も引き上げた場合や、安い代替品が消えた場合は、その法則が比べている二つの問題とは違います。
不等式を記号で書くなら、旧価格pでp·A≤p·B、新価格p′でp′·B≤p′·Aです。両方を足して整理すると(p′−p)·(B−A)≤0になります。何の価格と何の量の差を掛けたかも検算できます。
二つの最安という条件を足す
旧価格で選んだ束をA、新価格で選んだ束をBとします。どちらも同じ満足を満たすので、旧価格でもBは候補です。Aが最安だから、旧価格でAの費用はB以下です。新価格では逆に、Bの費用はA以下です。
二つの不等式を足し、両束の各数量を整理すると「価格の変化×数量の変化」の合計はゼロ以下になります。一財だけが値上がりしたなら、その正の値上がり幅に、その財の数量変化を掛けた値がゼロ以下です。数量変化は非正になります。
滑らかな無差別曲線の接点を仮定せず、この二つの最安という判定から方向を確かめられます。整数でしか買えない候補でも、同じ満足を満たす同じ集合を使って両価格で最安化するなら、この比較ができます。
一財以外も同時に価格が変われば、制約は全財の価格と量の変化を掛けた合計です。その合計が非正でも、個々の財の量が全て減るとは限りません。一財の自己価格方向を出せるのは、他の価格変化がゼロのためです。
Giffen財の話と矛盾しない
Giffen財では所得を固定した通常需要が自己価格上昇で増える場合があります。補償需要の法則と矛盾しません。購買力低下から生まれる所得効果が、補償需要の代替効果へ重なっているからです。
微小な変化なら、通常需要の価格反応は、補償需要の価格反応から、所得への需要反応に元の購入量を掛けた項を引いて表せます。下級財では所得反応が負なので、その差引きは増加方向の項になります。
補償需要の量が減ったことから、実際の家計の通常需要も必ず減るとは言えません。反対に通常需要が増えても、満足固定の最安化が破れている証拠とは限りません。固定した条件を先に確認します。
旧満足に戻す予算の調整幅と、その後に選ぶ購入量は別の出力です。架空の二候補では予算を3増やしても、値上がり財の量は1減ります。支払能力が増えた金額だけを見て、個別数量の増加を推測しません。
- 旧価格での判定
旧最安案は、新案を旧価格で買うより高くない。
- 新価格での判定
新最安案は、旧案を新価格で買うより高くない。
二つの最安条件を足し、価格差と数量差を検算する。
架空の例:二つの買い方を費用で検算する
同じ満足を得る候補を、Aはxを2・yを1、Bはxを1・yを2だけに限定します。旧価格はx=1、y=2で、費用A=4、B=5。Aが最安です。x価格を3へ上げると費用A=8、B=7となり、Bへ替えます。
旧価格での4≤5と新価格での7≤8を足すと11≤13です。整理した価格変化2×x数量変化−1=−2も非正です。目標は同じなのにxは2から1へ減り、最低支出は4から7へ増えます。
持ち帰る見方
- 補償需要の自己価格方向は弱い減少で、必ず厳密減少ではない。
- 二つの最低支出不等式で、方向の根拠を検算する。
次に広がる疑問
- 代替関係も、所得固定と満足固定で違う?
順番に読んでいる方へ
出典
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
固定するのは所得ではなく満足
他の価格と目標効用を固定すると、補償需要は自己価格の上昇で増えない。
- 対象
- 効用固定の需要の法則を二つの最低支出不等式で説明し、Giffenの所得固定需要と分ける。
- 条件
- 同一目標効用・同一実現可能購入集合、二つの価格で支出最小化、他の価格固定。
- 例外・限界
- 数量は弱く減少であり、必ず厳密減少ではない。所得固定の通常需要の符号へそのまま移さない。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
二つの最安という条件を足す
二つの価格での支出最小化の不等式を足すと、価格変化と補償需要変化の内積は非正になる。
- 対象
- 効用固定の需要の法則を二つの最低支出不等式で説明し、Giffenの所得固定需要と分ける。
- 条件
- 同一目標効用・同一実現可能購入集合、二つの価格で支出最小化、他の価格固定。
- 例外・限界
- 数量は弱く減少であり、必ず厳密減少ではない。所得固定の通常需要の符号へそのまま移さない。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
Giffen財の話と矛盾しない
通常需要の価格反応は補償需要の反応と所得効果に分解される。
- 対象
- 効用固定の需要の法則を二つの最低支出不等式で説明し、Giffenの所得固定需要と分ける。
- 条件
- 同一目標効用・同一実現可能購入集合、二つの価格で支出最小化、他の価格固定。
- 例外・限界
- 数量は弱く減少であり、必ず厳密減少ではない。所得固定の通常需要の符号へそのまま移さない。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf