数字と報道

行政が持つ記録を集めれば、社会全体の統計になる?

行政記録は社会を知る大切な資料ですが、そのまま社会全体の人数や状態を表すとは限りません。記録は行政の仕事に必要な対象と項目で作られるためです。誰の、何の、いつの記録なのかを、統計で知りたい問いと比べます。

基本の用語

調査は、答えてほしい問いを決めて情報を集めます。行政記録は、届出や登録、税や給付などの業務の過程で集まります。どちらも統計に使えますが、最初に情報を集めた目的が違います。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

記録された人と、知りたい人を比べる

例えば「支援を申請した人」の記録と、「支援を必要としている人」の人数は同じ問いではありません。必要でも申請していない人は、その申請記録には現れません。反対に、申請した人全員が同じ資格を満たすとも、全員に給付されたとも限りません。何の段階の記録かを区別します。

行政業務の要件で対象が決まるため、記録の範囲は統計で知りたい範囲とずれることがあります。統計に必要な項目が記録されていない場合もあります。記録が詳細で人数が多いことと、欲しい問いに答えられることは別です。

既存記録を使えば、同じ情報をもう一度質問する負担を減らせる場合があります。一方、記録の作成・提供が遅かったり、複数の業務から集め直す手間が掛かったりすることもあります。行政記録なら常に調査より速く、正確に分かるとは決められません。

複数の記録を足す前に単位をそろえる

数えている単位は、人、世帯、事業所、申請、給付などで異なります。一人が何度も申請できる記録なら、申請件数は人数ではありません。一つの企業が複数の事業所を持つ場合も、企業数と事業所数は別です。名称の似た集計でも、単位を見てから比べます。

別の記録を組み合わせる際には、同じ対象が重なっていないかも確認します。二つの制度の登録者数を単純に足すと、両方に登録した人を二度数えることがあります。期間や地域、対象の定義、識別の方法が違えば、同じ人を対応させるだけでも条件をそろえる必要があります。

行政記録の役割は、直接集計に限りません。調査する対象の一覧を作ったり、推定の補助情報にしたり、調査結果と照合したりする用途もあります。その場合も、元の定義や記録の質を確かめる必要は残ります。記録を足すだけで新しい統計ができるわけではありません。

制度変更と社会の変化を分けて読む

記録人数が急に増えたときは、社会の状態だけでなく、対象となる制度や記録の作り方も確認します。資格の範囲、受付の方法、記録する項目が変われば、同じ名前の集計でも以前と数えている範囲が変わり得ます。

変更前後を比べるには、どの時点から何を変えたか、以前の範囲で比べられる数字があるかを見ます。業務上の変更がなかったかを継続して確認することは、行政記録を時系列の統計に使う際の重要な条件です。

増加を見つけたことと、増加の原因を特定したことも分けます。対象が広がった、届出が増えた、実際の状態が変わったという可能性を、記録だけで全部識別できるとは限りません。知りたい問いを先に決めると、別の調査で補うべき対象や項目も見えてきます。

支援の受付記録を使うなら

架空の例

市が、ある支援の申請を数えるとします。同じ人が修正して再申請した記録が残るなら、受付件数をそのまま「利用した人数」とは呼べません。申請、認定、給付のどの段階を数えるかも決める必要があります。

翌年に資格の範囲が広がり、受付件数が増えたとします。増えた件数だけでは、以前から対象だった人の困りごとが増えたのか、新しく対象となった人が申請したのかは分かりません。変更の内容と、同じ範囲で比べる集計を確認します。

持ち帰る見方

  • 記録の業務上の対象と、統計で知りたい対象を比べます。
  • 人と申請、企業と事業所など、数える単位と重複を確認します。
  • 制度や記録方法の変更による増減と、社会の変化を分けます。

次に広がる疑問

  • 全員の記録を集めれば、誤差はなくなる?
  • 未回答や非公表の値を、集計ではどう扱う?

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出典

  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

記録された人と、知りたい人を比べる

行政記録は、登録・給付・税などの業務のために作られ、その対象・内容・定義は統計で答えたい問いと一致するとは限らない。

対象
付録A1・2、頁303~305
条件
行政要件で対象を定めた記録と、統計の対象母集団を比較
例外・限界
記録が調査より常に不正確とも正確とも限らない
  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

複数の記録を足す前に単位をそろえる

行政記録は直接集計だけでなく、調査対象一覧、補助情報、調査結果の点検にも使えるが、結合する記録の定義・形式・重複やカバレッジを確認する必要がある。

対象
付録A2、頁303~305、3.3.2頁27
条件
人/申請/事業所など単位、記録結合で同じ対象を二重に数えない
例外・限界
同じ人が別々の記録に存在する場合、単純合計は人数を意味しない
  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

制度変更と社会の変化を分けて読む

行政制度の対象範囲・記録項目・概念が変わると時系列の比較も変わり得るため、業務側の変更を継続して確認する。

対象
付録A2(x)、頁305
条件
同じ系列の期間比較、行政側の概念・定義・対象変更
例外・限界
記録人数の増加だけから社会全体の増加を断定しない
  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf