数字と報道
別々の統計をつなげれば、同じ人を正しく追える?
正しく追えるとは限りません。同じ人や事業者の記録かを照合する際には、別人を結ぶ誤結合と、同じ人を結べない見逃しがあります。結合できた割合だけで精度は分からず、技術とは別に利用権限と機密保護も確認します。
基本の用語
二つの資料に同じ名前があっても、同じ対象とは限りません。逆に同じ対象でも表記や住所が違い、照合に失敗する場合があります。データをつなぐことは単なる行の追加ではなく、どの記録どうしを対応させるかという判断を含みます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 行政が持つ記録を集めれば、社会全体の統計になる?行政手続きの記録対象と、統計で知りたい社会の対象・単位・時点を比べる。
別の記録のどれが同じ対象かを決める
データ結合は、同じ人や事業者などに関する別々のレコードを対応させる方法です。一意な識別子が利用できる場合もあれば、氏名、生年月日、住所などの属性を照合する場合もあります。
まず各記録が何の対象と時点を表すかを決めます。同じ氏名が一致しただけで同一人物と確定することや、二つの資料の人数を足すこととは違います。使う識別子や属性が欠けたり変わったりする可能性も、照合の内容に関わります。
別人を結ぶ誤りと、同じ人を見逃す誤り
誤結合は、別の対象の記録を同じ対象と判断して結ぶ誤りです。見逃しは、本当は同じ対象の記録があるのに、それを結べなかった誤りです。実際の対応関係と、照合が予測した対応関係を分けて評価します。
結合できなかった記録が全て見逃しとは限りません。片方の資料にしか対象がない場合もあります。また、別人を多数つないでも結合できた割合は高くなるので、結合率だけでは正確さを示せません。二種類の誤りを分けて点検します。
照合しやすさと誤結合を一緒に点検する
決めた属性の一致規則で照合する方法や、対応の可能性を確率的に評価する方法があります。表記をそろえる前処理は一致を見つけやすくしますが、方法を変えれば必ず誤りがなくなるわけではありません。
氏名などを整え過ぎると、別人の違いまで消し、誤結合を増やす可能性があります。欠測属性から一致を決めることにも限界があります。見つけられた対応だけでなく、規則・表記変更が誤結合と見逃しの両方へどう関わるかを確かめます。
つなげる技術と、使える権限を分ける
一つの資料だけでは見えなかった個人と情報の対応が、結合後に見える場合があります。つなげる技術があることと、その情報を利用・公開してよいことは別です。機密保護と利用権限を独立に確かめる必要があります。
英国ONSのSecure Research Serviceでは、認定された研究者が公益の研究のため、非識別化された未公表データへ安全にアクセスする仕組みを案内しています。これは英国の例で、日本や全世界の手続ではありません。非識別化や結合の成功だけで無制限の利用が認められるわけではありません。
結合できた三組の中身を確かめる
架空の例
資料Aにある四人のうち三人を資料Bの記録と結べたとします。しかしその三組の一組が別人どうしなら、三組全てが正しい対応ではありません。残る一人がBにも記録を持つのに結べなかったなら、その一人は見逃しです。
残る一人がそもそもBに記録を持たない場合は、結べなかったことを見逃しとは数えません。この区別には本当の対応関係についての確認が要り、「四人中三人を結合できた」という割合だけでは誤結合と見逃しを判断できません。
持ち帰る見方
- 結合率と正しい対応を分け、誤結合と見逃しを別々に評価する。
- 前処理の限界、機密保護、利用権限を技術の成功と区別する。
次に広がる疑問
- 行政記録が誰を何のために数えるかを読む
- 日本の個人データの権利と手続を読む
- 欠けた値から何が分からないかを考える
順番に読んでいる方へ
出典
Developing standard tools for data linkage: February 2021(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/methodology/methodologicalpublications/generalmethodology/onsworkingpaperseries/developingstandardtoolsfordatalinkagefebruary2021
確認日:2026-10-05
Secure Research Service(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/aboutus/whatwedo/statistics/requestingstatistics/secureresearchservice
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
別の記録のどれが同じ対象かを決める
データ結合は、同じ人や事業者などについての別々のレコードを対応させる方法であり、一意な識別子や氏名・生年月日・住所などを照合に使う。
- 対象
- レコードリンケージの技術的な定義。
- 条件
- 各レコードが何の対象・時点を表すかを決め、同一対象かを照合する。
- 例外・限界
- 単に二つの人数を足すことや、同じ氏名を持つ人が必ず同一人物であるという意味ではない。
Developing standard tools for data linkage: February 2021(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/methodology/methodologicalpublications/generalmethodology/onsworkingpaperseries/developingstandardtoolsfordatalinkagefebruary2021
別人を結ぶ誤りと、同じ人を見逃す誤り
誤結合は別の対象を同一と判断して結ぶ誤り、見逃しは同じ対象のレコードを結べなかった誤りであり、両者を分けて評価する。
- 対象
- false matchesとmissed matchesの区別。
- 条件
- 真の対応関係と、照合で予測された対応関係を分けて考える。
- 例外・限界
- 結べなかった記録が全て見逃しとは限らず、片方の資料にしか対象が存在しない場合もある。結合できた割合だけで正確さを示したとは言えない。
Developing standard tools for data linkage: February 2021(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/methodology/methodologicalpublications/generalmethodology/onsworkingpaperseries/developingstandardtoolsfordatalinkagefebruary2021
照合しやすさと誤結合を一緒に点検する
照合規則や文字列の整え方は、同じ対象を見つける力だけでなく、別の対象を同じものと誤る可能性にも関わる。
- 対象
- 決定的照合と、前処理・確率的照合の品質。
- 条件
- 一致規則、欠測や表記違い、前処理の内容に合わせ、誤結合と見逃しを点検する。
- 例外・限界
- 氏名などを整え過ぎると別人の違いまで消す場合がある。確率的手法を使えば誤りが必ずなくなるわけではない。
Developing standard tools for data linkage: February 2021(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/methodology/methodologicalpublications/generalmethodology/onsworkingpaperseries/developingstandardtoolsfordatalinkagefebruary2021
つなげる技術と、使える権限を分ける
技術的に結合できることと、そのデータを利用してよいことは別である。結合によって個人と情報の対応が見える場合があり、機密保護と利用権限を別に確かめる。
- 対象
- 結合に伴う機密の論点と、英国ONS SRSの具体例。
- 条件
- 英国SRSでは、認定研究者が公益研究のため非識別化された未公表データへ安全にアクセスする。
- 例外・限界
- 英国SRSの要件を日本や他国の制度として一般化しない。非識別化や結合の成功だけで、無制限の利用・公開が認められるわけではない。
Developing standard tools for data linkage: February 2021(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/methodology/methodologicalpublications/generalmethodology/onsworkingpaperseries/developingstandardtoolsfordatalinkagefebruary2021
Secure Research Service(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/aboutus/whatwedo/statistics/requestingstatistics/secureresearchservice