数字と報道

集計表で分からないことは、個票を見れば自由に調べられる?

集計前の記録を使うと、表にない区分や項目の関係を分析できる場合があります。ただし個票を見られることと、自由に持ち出し、公表できることは別です。名前を消しただけでは識別の危険が残るため、データの加工、利用する人・目的・環境、出力を合わせて管理します。

基本の用語

集計表は、多くの記録を決めた区分でまとめた結果です。個票データは個人や事業者など単位ごとの記録で、必ずしも氏名を含むという意味ではありません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

集計前の記録で分析する

集計表には、既に選ばれた区分と計算の結果が示されます。別の区分や項目の対応を知りたいとき、表に必要な情報がなければ再計算できません。個票では単位ごとに対応した変数を使い、その問いへ分析を組み立てられる場合があります。

カナダ統計局の方法書は、公開用の個票が表からは難しい分析を可能にする一方、機密性について特別の点検が必要だと説明しています。公開用では項目をまとめる、削るなどの加工があり、元の回答の全てがそのまま渡されるとは限りません。

個票があっても、対象や変数の定義、調査の重みなどを読む必要は残ります。行数が多いことだけで母集団全体が直接分かるわけではなく、どの記録について何を推定できるかを先に決めます。

名前を消すだけでは足りない

氏名や住所のような直接識別子を消しても、詳しい地域、年齢、職業などの組合せが珍しければ、知人や公開情報との照合から対象が推測される可能性があります。これらは間接識別子として点検されます。

記録に名前がないことと、ほかの情報を足しても誰か分からないことは同じではありません。非識別化したと書かれていても、どの詳細を残し、どんな利用を想定したかを確認します。識別の危険が絶対に0になったという意味にはしません。

環境と出力も管理する

英国ONSのSecure Research Serviceの資料は、Five Safesという枠組みを説明しています。非識別化したデータだけでなく、訓練された利用者、公共の利益につながる研究目的、安全な利用環境、安全な出力を合わせて考えます。

これは英国ONSの制度例です。日本やほかの機関の申請を全て同じ手続とみなさず、実際に使う資料の利用条件を別に確認します。技術的に読めることや、解析ソフトがあることから、利用や持ち出しの許可を作ることはできません。

分析できてもそのまま公表できない

ONSの枠組みでは、研究の出力も対象を識別しないか確認します。個票を安全な環境で分析できることと、そこで作った細かな表をそのまま公開できることは違います。

分析の価値は、必要な問いを安全に検討できることにあります。公開用の加工で答えられない問いなら、別の利用環境があるかを確認する一方、最終結果にどこまで詳細を残せるかも考えます。データへのアクセスと出力の公表を分けると、何を追加で確認すべきかが明確になります。

架空の例:名前のない珍しい記録

ある分析用データに、氏名はなくても、狭い地域・95歳・特定の職業という組合せが一行だけ残ったとします。その地域でその条件の人を知る人には、記録の対象が推測できる可能性があります。

地域や年齢の区分を広げれば分析できる細かさも変わります。実際の加工や利用環境を確かめ、その詳細が必要な問いと、広い区分でも答えられる問いを分けて考えます。

持ち帰る見方

  • 個票は、表にはない項目の対応を分析する資料になる。
  • 名前を消しても、珍しい組合せによる識別を点検する。
  • データの利用条件と、出力の公表条件を分ける。

次に広がる疑問

  • 必要な変数の対応や重みが、利用できる個票にあるか。
  • 利用環境と、公表できる出力の範囲を確認したか。

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出典

  • Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

    確認日:2026-10-05

  • Secure Research Service — The Five Safes(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/aboutus/whatwedo/statistics/requestingstatistics/approvedresearcherscheme

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

集計前の記録で分析する

個票データは個人等の単位ごとの記録であり、集計表から難しい分析が可能になる場合がある。公開用個票では識別情報や詳細を加工する。

対象
2003年原方法書。統計の公表方法を扱い、現在の個別利用手続は扱わない。
条件
対応した変数、重み、対象の説明を使う。
例外・限界
分析用個票が元の回答の全項目を含むとは限らない。
  • Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

名前を消すだけでは足りない

氏名等の直接識別子を消しても、地域・年齢・職業などの間接識別子の珍しい組合せから、対象を推測しうる。

対象
2003年原方法書。統計の公表方法を扱い、現在の個別利用手続は扱わない。
条件
外部情報との対応の可能性も考える。
例外・限界
非識別化は識別リスクが絶対に0という意味ではない。
  • Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

環境と出力も管理する

英国ONSのSRSは、利用者・研究目的・利用環境・出力・非識別化したデータをFive Safesとして合わせて管理する。

対象
取得時掲載のFive Safesの説明。利用申請や待ち時間等の旧記述は採用しない。
条件
英国の制度例として読み、最新の申請条件は別に確認する。
例外・限界
利用可能な技術があることは自由な持ち出しの許可ではない。
  • Secure Research Service — The Five Safes(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/aboutus/whatwedo/statistics/requestingstatistics/approvedresearcherscheme

分析できてもそのまま公表できない

ONSのSRSでは研究の出力を、対象を識別しないか確認する。細かな個票を使える環境と、細かな結果を公表できる範囲は同じではない。

対象
取得時掲載のFive Safesの説明。利用申請や待ち時間等の旧記述は採用しない。
条件
研究で得た表や数値も確認の対象になる。
例外・限界
日本を含む全機関の同一手続を意味しない。
  • Secure Research Service — The Five Safes(Office for National Statistics)https://www.ons.gov.uk/aboutus/whatwedo/statistics/requestingstatistics/approvedresearcherscheme