経済の基礎
売り手だけが品質を知っていると何が起きる?
売り手が品質を知り、買い手が見分けられない場合、価格だけでは良い品と悪い品を区別できません。買い手が平均的な品質を見込んで払おうとすると、良い品の売り手ほど取引から離れるモデルがあります。ただし、情報差があれば必ず市場が消えるわけではありません。
基本の用語
情報の非対称性は、取引に重要な情報を一方が知り、もう一方が知らないことです。情報の量が何でも同じである必要はなく、判断に関わる差に注目します。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 商品の値段は、どう決まる?需要・供給モデルと使える条件
同じ商品でも、知っていることが違う
中古品の持ち主は、どんな使い方をして、どこが傷んだかを知っている場合があります。買い手は外観だけで同じことを確かめられるとは限りません。価格が安い理由も、品質が低いからか、売り手が早く処分したいからか、価格だけでは一つに決められません。
これは、売り手が必ず嘘をつくという意味ではありません。正直に説明しても、その説明の確かさを買い手が確認できないという条件を考えられます。また、品質を売り手も知らない不確実性と、売り手だけが知っている情報差は別です。何が知られていて、誰に分からないのかを明らかにします。
良い品ほど、売りにくくなる場合がある
品質を見分けられない買い手が、売られている品全体の平均的な価値で支払意思額を決めるモデルを考えます。その額で売りたくない良い品質の売り手が退出すれば、売られる品の平均品質は下がります。買い手の評価がさらに下がり、別の良い品も退出するという連鎖が起こりえます。このように取引相手の構成が偏る問題を逆選択と呼びます。
買い手と売り手が品質を共有できれば、双方が得をする価格で取引できた品も、情報差のために取引されない場合があります。ただし、品質別の売り手の参加条件や、買い手がどう評価するかによって結果は違います。情報差を見つけたことだけで、全員が悪い品しか売らないとか、その市場が必ず消えるとは言えません。
逆選択は、取引前の品質や属性を知らない問題に注目します。契約後にどんな行動をするかを観察できない問題は、別に隠れた行動の問題として考えます。中古品の品質が分からない問いと、仕事を任せた後に何をしたか分からない問いを分けると、必要な対処も見えやすくなります。
情報の確かめ方にも費用がある
情報の記録や評価を共有すること、第三者が確認すること、問題が起きた場合の契約を明らかにすることなどが、対処の案になります。重要なのは、表示があることだけでなく、何を確認した表示で、どこまで確かめられるかです。名前だけの保証と、条件が分かる保証は区別します。
対処には費用もあります。検査や記録を誰が負担するか、見えない欠陥まで調べられるかを考えます。すべての品質を完全に確認できるという条件を置かなければ、表示を増やせば常に最善とは限りません。情報差をゼロか百かで見るのではなく、どの判断に必要な情報を、どの方法で補えるかを確かめます。
平均の評価では、良い品が売れない
架空の例です。良い品の買い手評価は10,000円、低品質の品は2,000円で、半数ずつとします。品質を区別できず平均評価だけで判断する買い手は、最大6,000円を払う設定です。良い品の持ち主が最低7,000円を望むなら、その人は売りません。品質を確認できるなら、7,000〜10,000円の間で取引する余地がありました。
参加条件や評価方法を置いたモデルです。実際の中古市場で良い品がどれだけ退出したかを測った数字ではなく、低品質の品の売り手が嘘をつくという設定でもありません。
考えるときの注意点
- 表示や保証の効果は具体的な条件次第です。架空の市場モデルを、特定のサービスの安全性や品質判定へ直接使えません。
持ち帰る見方
- 情報差は品質だけでなく、誰が何を知るかの問題。
- 逆選択では取引に参加する品や人の構成が変わる。
- 情報の確認方法、範囲、費用を比べる。
次に広がる疑問
- 契約後の隠れた行動を考える
- 成立しなかった取引の便益を見る
順番に読んでいる方へ
出典
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
同じ商品でも、知っていることが違う
非対称情報は取引に重要な情報を一方が知り他方が知らないこと。
- 対象
- CORE12.6 Missing markets: Insurance and lemons / hidden attributes
- 条件
- 品質情報の差を置く
- 例外・限界
- 全員が嘘をつくという意味ではない
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html
良い品ほど、売りにくくなる場合がある
品質を区別できない買い手の支払意思額と売り手の参加条件により、良い品質の売り手が退出する逆選択の模型がある。
- 対象
- CORE12.6 Hidden attributes and adverse selection / Market for lemons
- 条件
- 品質別の参加条件と平均評価
- 例外・限界
- どの市場も必ず消滅するとは限らない
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html
情報の確かめ方にも費用がある
情報の開示・確認や保証などは情報差への対処になりうるが条件と実行費用を要する。
- 対象
- CORE12導入 contracts/refunds、12.6 Exercise12.8 ratings/trust、Figure12.10、12.9 policy information constraints
- 条件
- 確認や契約の範囲を固定
- 例外・限界
- 表示だけで真実と判断しない
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html