お金と金融

銀行が貸すと、お金はどう動く?

銀行が借り手の口座へ貸出額を入金すると、借り手の預金と返済義務が同時に増えます。使える預金は生まれますが、借り手の純粋な財産が同額増えたわけではありません。銀行も無制限には貸せません。

基本の用語

預金は銀行に支払いを求める権利で、銀行側には支払義務があります。貸出は銀行が将来の返済を求める権利、借り手側には借金です。「資産」は持つ権利や財産、「負債」は支払う義務を指します。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

貸出と預金は同時に記録される

銀行が企業へ設備購入のために貸し、企業の口座へ入金する場合を考えます。銀行は「企業への貸出」という資産と、「企業の預金」という負債を同時に増やします。企業は使える預金を得る一方、契約に沿って元本や利息を返す義務を負います。

この貸出による預金の創造を、信用創造と呼びます。信用とは、将来の返済等の約束を信頼して取引することです。預金を作れることと、紙幣を印刷できることは別です。また、融資が借り手への贈与になったわけでもありません。

貸出で預金が生まれる説明は、英国中央銀行の2014年の資料が示す銀行の帳簿の仕組みを使っています。英国の制度上の細部や当時の預金比率を、そのまま現在の日本の数字として持ち込んでいません。

預金者の資金が要らない、という意味ではない

借り手が他の銀行に口座を持つ店へ支払うと、銀行同士の決済が必要になります。借り手の銀行は中央銀行の当座預金などを用いて相手銀行への支払いを行います。日本では日本銀行当座預金が金融機関間の決済に使われています。

自分の銀行から資金が出ていく可能性があるため、銀行は預金を集めたり、他の金融機関から調達したりして、支払いに備えます。今日引き出せる預金の支払義務に対し、貸出は数年かけて返されることがあります。この期間のずれが資金繰りのリスクになります。

つまり、預金を先に集めた額だけ機械的に貸す説明も、預金を作れるから資金繰りが不要という説明も不十分です。一つの銀行の支払能力と、銀行部門全体での預金の増減を分けて考える必要があります。

貸せる額には、返済と損失の制約がある

銀行は借り手が返せるかを審査します。返済されなければ貸出の価値が失われ、損失が出ます。損失を吸収する自己資本、支払いに備える資金、規制、貸出金利と調達費用、借りたい人の需要も、貸出を制約します。

自己資本は返す義務のある預金と同じではなく、損失への備えになる部分です。銀行が貸出金利と預金金利の差を得ても、そのすべてが利益になるわけではありません。人件費、システム費用、貸倒れ等もあります。

信用があるから貸出は可能になりますが、将来の収入には不確実性があります。設備購入で生産が増えるかは、その設備や需要次第です。貸出の増加だけを見て「豊かさが同じ割合で増えた」とは言えません。

返済と、ふつうの買い物は違う

借り手が預金で銀行への元本を返すと、銀行の貸出資産と預金負債が減り、返済額に対応する預金は消えます。店から商品を買う場合は預金が別の人へ移るのが基本なので、同じ「支払い」でも銀行の帳簿への効果が違います。

これは元本返済の説明です。利息の支払いや銀行の支出、別の新規貸出を合わせた経済全体の預金残高の変化まで、この一取引だけで決まるわけではありません。貸出が減っているニュースでは、新規貸出と返済を両方見ると読みやすくなります。

架空の例貸出時には資産と義務の両方が増える
  1. 企業

    預金+100万円/借金+100万円

  2. 銀行

    貸出資産+100万円/預金負債+100万円

  3. 元本20万円の返済

    銀行の貸出資産と預金負債が各20万円減る

同じ銀行の口座への入金と預金による元本返済。利息・手数料・その他の取引を除く。借り手の純資産が100万円増える図ではない。

貸出100万円と、元本20万円の返済

架空の例仕組みを考えるための例です。実在の数値や予測ではありません。

他の取引と利息を省き、同じ銀行内で考えます。企業が100万円借りると、企業の預金は100万円増、借金も100万円増です。預金から機械の売り手へ支払えば、企業の預金が減り、売り手の預金が100万円増えます。企業には機械と借金が残ります。

後に企業が売上で得た預金のうち20万円を元本返済すると、貸出残高は80万円になり、預金残高も20万円減ります。機械がいくら利益を生むかや、返済時の資金をどう得たかは、この帳簿例だけでは分かりません。

この説明で言える範囲

  • 預金創造は無制限の貸出や借り手の純資産増を意味しない。
  • 個別銀行の安全性や具体的な規制比率は評価しない。

持ち帰る見方

  • 貸出は預金と返済義務を同時に生む。
  • 預金創造と、銀行の資金繰りは別の問題。
  • 元本返済は預金を減らすが、全体残高には他の取引も影響する。

次に広がる疑問

  • なぜ借りる人によって金利が違う?
  • 中央銀行の金利は貸出へどう届く?

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出典

  • Money creation in the modern economy(Bank of England / McLeay, Radia, Thomas)https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy.pdf

    確認日:2026-10-04

  • 決済の手段にはどのようなものがありますか?(日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/kess/i02.htm

    確認日:2026-10-04

  • 9.9 Borrowers and lenders: A principal–agent problem(CORE Econ, The Economy 2.0 Microeconomics)https://books.core-econ.org/the-economy/microeconomics/09-lenders-borrowers-09-principal-agent-problem.html

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

貸出と預金は同時に記録される

銀行が貸出を預金口座へ入金すると、貸出資産と預金負債が同時に増える。

対象
銀行の貸出・預金の貸借対照表
条件
銀行貸出の預金への入金を考える
例外・限界
英国2014年資料の制度細部や比率を日本へ転用しない
  • Money creation in the modern economy(Bank of England / McLeay, Radia, Thomas)https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy.pdf

預金者の資金が要らない、という意味ではない

日本銀行当座預金は金融機関間の決済に使われる。

対象
日本の決済制度
条件
金融機関等が保有する中央銀行への口座
例外・限界
家計が普通預金同様に直接利用する口座ではない
  • 決済の手段にはどのようなものがありますか?(日本銀行)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/kess/i02.htm

貸出は収益性、資金調達、信用・流動性リスク、自己資本と規制などに制約される。

対象
一般的な銀行の貸出制約
条件
英国中央銀行の機序説明と信用市場モデル
例外・限界
各国の規制比率や個別銀行の健全性を示す実証ではない
  • Money creation in the modern economy(Bank of England / McLeay, Radia, Thomas)https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy.pdf

  • 9.9 Borrowers and lenders: A principal–agent problem(CORE Econ, The Economy 2.0 Microeconomics)https://books.core-econ.org/the-economy/microeconomics/09-lenders-borrowers-09-principal-agent-problem.html

貸せる額には、返済と損失の制約がある

貸出は収益性、資金調達、信用・流動性リスク、自己資本と規制などに制約される。

対象
一般的な銀行の貸出制約
条件
英国中央銀行の機序説明と信用市場モデル
例外・限界
各国の規制比率や個別銀行の健全性を示す実証ではない
  • Money creation in the modern economy(Bank of England / McLeay, Radia, Thomas)https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy.pdf

  • 9.9 Borrowers and lenders: A principal–agent problem(CORE Econ, The Economy 2.0 Microeconomics)https://books.core-econ.org/the-economy/microeconomics/09-lenders-borrowers-09-principal-agent-problem.html

返済と、ふつうの買い物は違う

預金による銀行への元本返済は、貸出と対応する預金を減らす。

対象
元本返済の帳簿
条件
預金で銀行貸出を返済し、他の取引を切り離す
例外・限界
利息、銀行支出、新規貸出などを含む全体変化とは異なる
  • Money creation in the modern economy(Bank of England / McLeay, Radia, Thomas)https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy.pdf