お金と金融

銀行の自己資本は、預金と何が違う?

預金は銀行が預金者へ返す義務のある負債です。自己資本は、基本的には資産から負債を差し引いた部分で、資産の損失を吸収します。損失への厚みを表す資本と、今日の支払いに使える現金や日銀当座預金は、分けて見る必要があります。

基本の用語

銀行の資産には貸出や保有証券があり、負債には預金や借入があります。資産の価値が下がると、負債が同額減るとは限りません。その間で誰が損失を引き受けるかが、自己資本を考える入口です。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

預金は返す約束、自己資本は差額

銀行の帳簿は、資産=負債+自己資本という関係で考えられます。預金は預金者が銀行に支払いを求める権利なので、銀行側には負債として載ります。会計上の自己資本は資産と負債の差額で、株主が出した資金や、利益として得て会社に残した部分などに対応します。

貸出が返されず資産の価値が下がっても、預金への支払義務がその場で同じ額だけ減るわけではありません。負債が変わらないなら、資産の損失はまず差額である自己資本を小さくします。このため、自己資本は銀行の損失を受け止める厚みとして大切です。預金と自己資本を、どちらも銀行が集めたお金というだけで同じに扱うと、この違いが消えてしまいます。

資本の厚さと、現金の多さは違う

自己資本が多いことは、同額の紙幣を金庫へ別にしまっているという意味ではありません。資産の側には、すぐ使える資金だけでなく、長期の貸出や証券もあります。自己資本は資産と負債の関係を表すので、今日の払戻しに必要な資金がどれほどあるかとは、別に確かめます。

規制で使う資本も、会計の純資産をそのまま一つの数字として使うだけではありません。BISの説明では、株式や内部留保など損失を吸収しやすい資本を重視し、一定の条件を満たす他の資本性商品も区分して扱います。普通株式等Tier1、追加的Tier1、Tier2という区別は、どの段階でどう損失を負担するかに関わります。日常語の資本金、会計上の自己資本、規制上の資本は完全に同じ概念ではありません。

資本の区分を知る目的は、名前をすべて暗記することではありません。平常時に損失を受け止める部分なのか、銀行が存続できなくなった段階で損失を負担する条件なのかを分けるためです。規制の資本という言葉に、性質の異なるものが含まれることが、会計の差額とのずれにつながります。

比率を見るなら、分母と対象も見る

資本の額だけでは、どれほどのリスクを持つ銀行かが分かりません。国際的な銀行規制の説明では、資産のリスクを考慮した額、リスク加重資産に対する資本の割合などを使い、必要な最低水準を定めます。比率を読むには、資本のどの区分を分子に使い、何を分母にしているかが必要です。

二つの銀行の比率を比べる場合も、対象や計算方法をそろえます。比率が高いことだけで、すべての損失や突然の引出しに耐えられる保証にはなりません。損失の大きさ、資産の内容、使える資金は別の確認事項です。ここでは国際基準の考え方を説明し、日本の各銀行に現在どの基準が適用されるか、個別の安全性は判定しません。

例えば分母の対象が大きくなれば、資本の額が同じでも比率は低くなります。反対に、資本の額が変わらなくても分母が小さくなれば比率は上がります。単純な割算の関係ですが、比率の改善がすべて新しい資本の増加による、と読み違えないために役立ちます。

架空の例負債が変わらない資産損失は、自己資本を減らす
  1. 損失前

    資産100億円=負債92億円+自己資本8億円

  2. 貸出に3億円の損失

    資産の価値が97億円へ下がる

  3. 損失後

    資産97億円=負債92億円+自己資本5億円

他の取引なし、負債は固定。紙幣の残高や規制上の自己資本比率を示す図ではない。

貸出の損失は、差額を減らす

架空の例

資産100億円、預金などの負債92億円、自己資本8億円という銀行を考えます。負債の条件は変わらず、貸出資産の価値に3億円の損失が出ると、資産は97億円、自己資本は5億円になります。3億円分の紙幣をどこかの準備箱から取り出す操作を描いたものではありません。

さらに損失が大きくなれば、この厚みは小さくなります。ただし、今日何億円払えるかは、資産のうちすぐ使える部分や調達条件を調べないと分かりません。この架空の帳簿の8%を、そのまま規制で使う自己資本比率と呼ぶこともできません。規制の計算では資本と資産に別の条件があります。

考えるときの注意点

  • 会計の単純な差額と、国際基準での規制資本を区別する。
  • 日本の個別適用比率や特定銀行の健全性を評価しない。

持ち帰る見方

  • 預金は返す義務、自己資本は損失を負担する部分。
  • 自己資本が多いことと、今日使える資金が多いことは別。
  • 比率は資本の区分、分母、適用基準をそろえて読む。

次に広がる疑問

  • 資産不足と支払資金不足を比べる
  • 銀行の資本と預金者保護の違いを読む

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出典

  • The Economy 1.0, Unit 10: Banks, money, and the credit market(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/10.html

    確認日:2026-10-04

  • Definition of capital in Basel III - Executive Summary(国際決済銀行(BIS) / Financial Stability Institute)https://www.bis.org/fsi/fsisummaries/defcap_b3.htm

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

預金は返す約束、自己資本は差額

銀行の預金は返済義務を持つ負債で、会計上の自己資本は資産と負債の差額。資産損失で自己資本が減る。

対象
預金は返す約束、自己資本は差額
条件
上記出典の確認範囲内
例外・限界
現実の個別商品・将来収益は保証しない
  • The Economy 1.0, Unit 10: Banks, money, and the credit market(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/10.html

資本の厚さと、現金の多さは違う

規制上の資本は損失吸収力を重視し株式と内部留保等を含むが、一定条件の他の資本性商品もあり会計の純資産と完全一致しない。

対象
資本の厚さと、現金の多さは違う
条件
上記出典の確認範囲内
例外・限界
現実の個別商品・将来収益は保証しない
  • Definition of capital in Basel III - Executive Summary(国際決済銀行(BIS) / Financial Stability Institute)https://www.bis.org/fsi/fsisummaries/defcap_b3.htm

比率を見るなら、分母と対象も見る

自己資本比率の国際基準はリスク加重資産に対する最低水準等を定める。資本の額・比率と支払資金を分けて見る必要がある。

対象
比率を見るなら、分母と対象も見る
条件
国際基準の概念
例外・限界
現在の日本の適用比率や各銀行の健全性は評価しない
  • Definition of capital in Basel III - Executive Summary(国際決済銀行(BIS) / Financial Stability Institute)https://www.bis.org/fsi/fsisummaries/defcap_b3.htm

  • The Economy 1.0, Unit 10: Banks, money, and the credit market(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/10.html