お金と金融

銀行が危なくなったら、誰の資金で損失を負担する?

銀行の重要な機能を続けながら、株主や対象債権者に損失を負担させる破綻処理がベイルインです。ここでは英国の制度を扱います。負担の順位と除外対象があり、すべての預金や債権を一律に減らす制度でも、投資家の損失をなくす制度でもありません。

基本の用語

平時の資本は損失を吸収する財務の土台です。ベイルインは、破綻処理で株主や債権者の権利を調整して資本を再建する手段の一つです。英国の当局が用いる条件を、日本のすべての銀行へ一律適用する説明とは分けます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

機能の継続と投資家の損失負担を組み合わせる

英国のベイルインは、重要な機能の継続と株主・対象債権者の損失負担を組み合わせる手段です。銀行の機能を続けることと、元の株主や債権者がすべて同じ価値の権利を保つことは別です。銀行のすべての破綻を、この一つの方法で処理するわけでもありません。

対象の機関へどの破綻処理手段を使うかという当局の判断があり、ここではベイルインを用いる場合を考えます。預金保護や通常の倒産手続きと関係する制度ですが、それぞれの役割を混ぜず、誰の権利を何の目的で調整するかをたどります。

債権を減らす処理と株式に変える処理を分ける

株主に損失を負担させ、対象債権を減額したり株式へ転換したりすることによって、破綻した機関の資本を再建します。債権を減らす場合と、株式へ変える場合では、元の債権者が受ける権利の形が異なります。

株式へ転換されたからといって、その株式が元の債権額と同じ価値を持つ保証ではありません。重要機能を維持して事業再編へ進むための処理と、個々の投資家が最終的にいくら回収できるかを、別の問いとして考える必要があります。

負担する順序と全額保証を混同しない

損失負担は通常の倒産手続きの順位を尊重し、原則として株主や劣後した請求権から進みます。どの層にどれだけ損失吸収できる権利が残るかを確かめるため、全員へ同時に同じ割合を割り当てるという説明ではありません。

通常の倒産手続きより不利にしない保護もありますが、比較するのは倒産手続きでの扱いです。元の投資額を全額返す約束とは違います。また除外される債務があるので、同じ順位の債務でも、すべてが必ず同率で減額されるとは限りません。

対象になる債務と除外される債務を確かめる

英国では、預金保護制度のFSCSで保護される預金や、担保で保全される範囲の債務などが除外対象です。何が保護されるかを読む際は、預金という名前や担保の有無だけでなく、保護される対象と額の範囲を確認します。

一部だけが担保で保全される債務では、残る無担保部分がベイルインの対象となり得ます。ほかの法定除外や当局の裁量的な除外もあり、除外によって別の対象債権者の負担が増える場合もあります。資金の名前だけで、損失負担の対象を一律に決められません。

担保で守られる部分と、残る請求

架空の例

債務100万円のうち、担保で保全される額を80万円と置きます。英国の部分担保の考え方では、担保付きだから100万円すべてが除外されるのではなく、無担保の20万円が対象となり得ます。

対象となり得るのは100−80=20万円ですが、この20万円すべてが自動的に減額されるわけではありません。実際の減額は、対象範囲、順位や必要な損失吸収などの条件によります。

持ち帰る見方

  • 機能の継続と、元の投資家の権利を保つことを分ける。
  • 英国の順位・対象除外・部分担保の条件から負担を読む。

次に広がる疑問

  • 平時の資本が損失を吸収する仕組みを読む
  • 債権の順位と回収を分ける
  • 日本の預金保護を別の法制度として読む

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Operational guide to bail-in resolution(Bank of England)https://www.bankofengland.co.uk/paper/2026/operational-guide-to-bail-in-resolution

    確認日:2026-10-05

  • Banking Act 2009 Special Resolution Regime Code of Practice(HM Treasury)https://assets.publishing.service.gov.uk/media/686fcd562557debd867cbfad/SRR_Code_of_Practice_July_2025_.pdf

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

機能の継続と投資家の損失負担を組み合わせる

英国の銀行の破綻処理では、重要な機能を続けながら株主や対象債権者に損失を負担させる手段の一つとしてベイルインがある。銀行のすべての破綻を同じ手段で処理するわけではない。

対象
英国Banking Act 2009に基づく対象金融機関の破綻処理。
条件
Bank of Englandが対象機関にベイルインによる破綻処理を用いる場合。
例外・限界
英国の手段であり、日本の全銀行に一律適用される制度ではない。
  • Operational guide to bail-in resolution(Bank of England)https://www.bankofengland.co.uk/paper/2026/operational-guide-to-bail-in-resolution

債権を減らす処理と株式に変える処理を分ける

英国のベイルインでは、株主に損失を負担させ、対象となる債権の額を減らしたり株式に転換したりして、破綻した機関の資本を再建する。債権の減額と株式への転換は、債権者への影響が異なる処理である。

対象
英国のベイルインによる損失吸収と資本再建。
条件
対象債権の減額・株式への転換等を用いて事業再編まで重要機能を維持する。
例外・限界
転換後の株式価値や最終回収額を、元の債権額と同額だと保証するものではない。
  • Operational guide to bail-in resolution(Bank of England)https://www.bankofengland.co.uk/paper/2026/operational-guide-to-bail-in-resolution

負担する順序と全額保証を混同しない

英国のベイルインの損失負担は、通常の倒産手続きでの順位を尊重し、原則として株主や劣後した請求権から進む。通常の倒産手続きの場合より不利にしない保護も、元の投資額を全額保証するという意味ではない。

対象
英国の債権順位とno creditor worse off safeguard。
条件
対象資本・債権の順位と損失吸収可能額、通常の倒産手続きとの比較による。
例外・限界
除外対象の債務があるため、同順位のすべてが常に同率で減額されるとは限らない。
  • Operational guide to bail-in resolution(Bank of England)https://www.bankofengland.co.uk/paper/2026/operational-guide-to-bail-in-resolution

  • Banking Act 2009 Special Resolution Regime Code of Practice(HM Treasury)https://assets.publishing.service.gov.uk/media/686fcd562557debd867cbfad/SRR_Code_of_Practice_July_2025_.pdf

対象になる債務と除外される債務を確かめる

英国では、FSCSで保護される預金や担保で保全される範囲の債務などはベイルインの除外対象である。一部だけが担保で保全されている債務は、無担保の部分が対象となり得る。

対象
英国ベイルインの法定除外及び部分担保の扱い。
条件
預金保護の対象範囲や担保で保全される額など、債務の個別条件による。
例外・限界
その他の法定除外や当局の裁量的除外もあり、それによって他の対象債権者の負担が増える場合がある。
  • Operational guide to bail-in resolution(Bank of England)https://www.bankofengland.co.uk/paper/2026/operational-guide-to-bail-in-resolution

  • Banking Act 2009 Special Resolution Regime Code of Practice(HM Treasury)https://assets.publishing.service.gov.uk/media/686fcd562557debd867cbfad/SRR_Code_of_Practice_July_2025_.pdf