経済の基礎
一つの契約を押し付けず、選ばせることで情報が分かる?
本人の好みを直接知れなくても、品質と支払の組を複数用意し、どれを選ぶかへ反映させる方法があります。スクリーニングです。ただ選択肢を増やすだけでは足りず、各タイプが別案へ移らないことと、参加する価値があることを確かめます。
基本の用語
情報の非対称性は、契約の片方だけが知る情報のある状態です。ここでは品質を高く評価する度合いを本人だけが知り、売り手が契約の組を先に設計します。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 売り手だけが品質を知っていると何が起きる?情報差は品質だけでなく、誰が何を知るかの問題。
- 同じサービスなのに、人や買い方で値段が違うのはなぜ?料金差の条件と、取引量・余剰の受取人を分ける。
知らない情報を、選び方へ反映させる
スクリーニングでは情報を持たない側が複数の契約を提示し、情報を持つ側が自分に合う契約を選ぶよう設計する。
例えば、基本品質と低い支払、高い品質と高い支払を並べます。売り手が直接タイプ名を言い当てるのではなく、買い手が自分の便益に合う組を選ぶようにします。選ぶ理由と結果を合わせて情報を引き出す考え方です。
本人が先に学歴などを示すシグナリングとは、ルールを作る側が異なります。ここでは情報を知らない売り手がメニューを提示します。価格の違う商品があるだけで、必ず私的情報を引き出す設計だと判断はできません。
両方のタイプで、別案への乗り換えを確かめる
各タイプが自分用の品質と支払の組を、別のタイプ用の組より少なくとも同じだけ好むことが、自己選択の誘因両立条件となる。
低い評価の人が基本を選ぶかだけでなく、高い評価の人が基本へ乗り換えないかも比べます。自分向け契約から得る便益が、別案から得る便益以上であることが自己選択の条件です。二つのタイプの比較を片方だけ省けません。
さらに買わない選択もあります。用意された二案の中で最善でも、不参加より損なら買いません。誘因両立は案同士の比較、参加条件は不参加との比較です。両方を満たすメニューを考える必要があります。
売り手が全部の便益を取れるとは限らない
品質を高く評価するタイプに低いタイプ向け契約を選ばせないため、高いタイプへ便益の一部を残す情報レントが必要になる模型がある。
品質を高く評価する人には、基本案でも大きな便益が残るかもしれません。売り手が高品質案の便益を全部支払へ吸い上げると、その人は安い基本へ移ります。高品質を選んでもらうため、ある程度の便益を本人へ残します。
この残る便益を情報レントと呼びます。情報を隠した罰金という意味ではなく、私的情報がある制約の下で高いタイプに残る利得です。売り手が本人のタイプを知り、別案を自由に選べない場合と採算が違います。
選ばせるために、提供する品質も変わりうる
二タイプの非線形価格模型では、高いタイプの品質を効率的な水準に保ち、低いタイプの品質を低くして高いタイプの乗り換え利益を抑える最適契約が生じる。
二タイプを対象とする非線形価格の模型では、低いタイプの品質を下げると、高いタイプが安い案へ移る魅力を弱められます。低いタイプが得る品質と情報レントを同時に考えるので、全員へ同じ品質を提供する設計とは異なります。
この最適契約の結論は、型ごとの価値、品質の費用、人数の比率などを置いた模型の範囲です。全てのメニューで低品質をわざと悪くする必要があるという主張ではありません。以下の数値は自己選択を確認する例で、売り手の最適な価格を解いたものではありません。
条件を置いた具体例
架空の例
品質1・支払1の基本案と、品質2・支払3.5の高品質案を置きます。便益を「品質への評価θ×品質−支払」とし、低いタイプはθ=1、高いタイプはθ=3、不参加の便益は0です。
低いタイプの便益は基本0、高品質−1.5、高いタイプは基本2、高品質2.5です。両方が想定した案を選べ、参加も損になりません。高品質の支払を6へ上げて高いタイプの便益をゼロにすると、その人は便益2の基本へ移ります。
持ち帰る見方
- 本人の好みを直接知れなくても、品質と支払の組を複数用意し、どれを選ぶかへ反映させる方法があります。
- 二タイプの非線形価格模型では、高いタイプの品質を効率的な水準に保ち、低いタイプの品質を低くして高いタイプの乗り換え利益を抑える最適契約が生じる。
次に広がる疑問
- 売り手だけが品質を知っていると何が起きる?
- 学歴は、技能と採用時の目印のどちらになる?
順番に読んでいる方へ
出典
Section3: Mechanism Design and Self-Selection Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/8e0c2484aed6906405ffe7d9ba73375e_MIT14_124S17_LecNote3.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
知らない情報を、選び方へ反映させる
スクリーニングでは情報を持たない側が複数の契約を提示し、情報を持つ側が自分に合う契約を選ぶよう設計する。
- 対象
- 品質と支払の契約を自己選択させる二属性スクリーニング模型。
- 条件
- 買い手だけが品質への評価θを知り、効用はθq−t、売り手が品質qと支払tの組を提示しルールへコミットする。
- 例外・限界
- 本人が選んだ契約から全性格や真の所得が分かるわけではない。すべての価格差がスクリーニングの成果とはせず、同点時は選択が一意でない。
Section3: Mechanism Design and Self-Selection Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/8e0c2484aed6906405ffe7d9ba73375e_MIT14_124S17_LecNote3.pdf
両方のタイプで、別案への乗り換えを確かめる
各タイプが自分用の品質と支払の組を、別のタイプ用の組より少なくとも同じだけ好むことが、自己選択の誘因両立条件となる。
- 対象
- 品質と支払の契約を自己選択させる二属性スクリーニング模型。
- 条件
- 買い手だけが品質への評価θを知り、効用はθq−t、売り手が品質qと支払tの組を提示しルールへコミットする。
- 例外・限界
- 本人が選んだ契約から全性格や真の所得が分かるわけではない。すべての価格差がスクリーニングの成果とはせず、同点時は選択が一意でない。
Section3: Mechanism Design and Self-Selection Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/8e0c2484aed6906405ffe7d9ba73375e_MIT14_124S17_LecNote3.pdf
売り手が全部の便益を取れるとは限らない
品質を高く評価するタイプに低いタイプ向け契約を選ばせないため、高いタイプへ便益の一部を残す情報レントが必要になる模型がある。
- 対象
- 品質と支払の契約を自己選択させる二属性スクリーニング模型。
- 条件
- 買い手だけが品質への評価θを知り、効用はθq−t、売り手が品質qと支払tの組を提示しルールへコミットする。
- 例外・限界
- 本人が選んだ契約から全性格や真の所得が分かるわけではない。すべての価格差がスクリーニングの成果とはせず、同点時は選択が一意でない。
Section3: Mechanism Design and Self-Selection Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/8e0c2484aed6906405ffe7d9ba73375e_MIT14_124S17_LecNote3.pdf
選ばせるために、提供する品質も変わりうる
二タイプの非線形価格模型では、高いタイプの品質を効率的な水準に保ち、低いタイプの品質を低くして高いタイプの乗り換え利益を抑える最適契約が生じる。
- 対象
- 品質と支払の契約を自己選択させる二属性スクリーニング模型。
- 条件
- 買い手だけが品質への評価θを知り、効用はθq−t、売り手が品質qと支払tの組を提示しルールへコミットする。
- 例外・限界
- 本人が選んだ契約から全性格や真の所得が分かるわけではない。すべての価格差がスクリーニングの成果とはせず、同点時は選択が一意でない。
Section3: Mechanism Design and Self-Selection Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/8e0c2484aed6906405ffe7d9ba73375e_MIT14_124S17_LecNote3.pdf