経済の基礎

調べれば必ずよい判断ができるなら、情報はいくらまで買う?

情報を知った後に選べる最善の行動の期待値から、知らずに選ぶ最善の期待値を引きます。それが費用を引く前の情報価値です。行動を変えられなければ価値はゼロになることもあります。買うべきかは、その価値と取得費用を比べて判断します。

基本の用語

期待値は結果を確率で重み付けした平均です。ここでは行動を選べる人が、情報に応じて判断を変える模型を考えます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

知る前と、知った後の最善を比べる

イベントを屋外にするか屋内にするか、結果が天候で変わるとします。何も調べない場合でも、二案を比べて期待する得が高い方を選べます。情報の価値を調べるときの基準は、何もしない案ではなく、その情報なしで既に選べる最善の案です。

天候を完全に知った後なら、晴れの日と雨の日に別々の行動を選べます。その各結果での最善の得を確率で重み付けし、情報なしの最善の期待値と比べます。情報が直接お金を生むのではなく、行動を条件付きで選べることが得を増やします。

リスク中立なら金額の期待値を使えますが、金額のばらつきを評価する人には期待効用で比べます。情報を得ることそのものに費用がある場合は、まず費用を引く前の情報価値を求め、その後で費用を引きます。

実際の状態と、届く信号の内容は区別します。「雨と分かる」完全情報なら雨の行動を選べますが、「雨という予報」なら外れる場合を残します。信号を得た後の最善を求める際も、その信号がどの状態から出るかという条件を使います。

情報は、行動を変えるときに価値を持つ

情報を得ても全ての状況で同じ行動が最善なら、最善の判断は変わらず、情報の価値はゼロになります。知らなかったことが分かることと、意思決定の得が増えることは同じではありません。知識への関心を評価する場合には、それを別の効用として設定します。

無料の情報を無視でき、行動の選択肢が同じなら、費用を引く前の情報価値は負になりません。知る前と同じ行動を選ぶ余地が残るためです。これは現実のあらゆる情報が負担を生まないという話ではなく、無視可能な意思決定の情報を比較する模型の性質です。

また、情報が届くのが行動を変更できない後なら、最初の選択に役立つ価値はありません。調べる対象だけでなく、いつ分かるか、分かった時点で何を変更できるかが必要です。判断を助ける情報と、結果を後から確認する情報を分けます。

完全情報の価値は、購入額の上限になる

完全情報の価値は、その対象についての不完全な信号へ払ってよい額の上限になります。誤る予報は、現実の状態を確実に知る場合より判断の可能性を増やせないためです。予報の精度を指定しなければ、実際の価値は計算できません。

信号を得たときは、それが示す状態を確定と決めず、信号に条件付けた確率で各行動を比べます。晴れという予報が何%の確率で当たるかだけでなく、元々晴れる頻度と誤報の出方も関わります。最適な行動が結局同じなら、精度が上がっても価値が増えない範囲があります。

情報の購入では、選べる行動、情報なしの最善、情報の精度、届く時点、取得費用を並べます。重要なテーマの情報だから高く買ってよい、という判断にはなりません。同じ情報でも、行動を変えられる人と変えられない人で価値が異なります。

架空の例会場の期待利益を比べる
  • 情報なし

    屋外40万円、屋内30万円。最善は屋外40万円。

  • 完全情報あり

    晴れ屋外100万円、雨屋内30万円。平均65万円。

  • 費用を引く前の情報価値

    65−40=25万円。ここから取得費用を引く。

晴れと雨は半々、判断前に会場を変えられ、期待利益で選びます。

天気を知って会場を変える架空の判断

晴れと雨が半々。屋外の利益は晴れ100万円・雨−20万円、屋内は常に30万円とします。情報なしなら屋外の期待利益40万円が屋内30万円より高いので、屋外を選びます。

完全に天気を知れば、晴れは屋外100万円、雨は屋内30万円を選び、期待利益65万円です。費用を引く前の情報価値は65−40=25万円。取得費用10万円なら差引き15万円、30万円なら差引き−5万円です。判断前に変更できることとリスク中立を置いた例です。

持ち帰る見方

  • 情報なしで選べる最善を、比較の基準にする。
  • 情報に応じて行動を変える余地が、価値を作る。
  • 費用を引く前の情報価値、取得費用、情報が届く時点を分ける。

次に広がる疑問

  • 確率自体が分からない不確実性は?
  • 結果が見えても、努力まで分かるとは限らない?

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出典

  • Artificial Intelligence: Foundations of Computational Agents, 3e, §12.4 The Value of Information and Control(David L. Poole and Alan K. Mackworth / University of British Columbia; Cambridge University Press)https://artint.info/3e/html/ArtInt3e.Ch12.S4.html

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

知る前と、知った後の最善を比べる

情報価値は、意思決定時に情報を知ることで増やせる最大の期待効用を、知らない場合の最大値と比べた差である。

対象
信号を受けた後の最適選択の期待値と受けない場合の最適選択を比べる情報価値を計算する。
条件
情報取得後に行動を条件付きで選べる、確率と利得が所与、無視することが可能。金銭数例はリスク中立として期待金額を効用に使う。情報取得費用を引く前の粗価値。
例外・限界
行動を変えられない場合は価値ゼロとなりうる。不完全な信号の精度・取得費用を考慮し、心理的負担など別の効用があれば別設定。
  • Artificial Intelligence: Foundations of Computational Agents, 3e, §12.4 The Value of Information and Control(David L. Poole and Alan K. Mackworth / University of British Columbia; Cambridge University Press)https://artint.info/3e/html/ArtInt3e.Ch12.S4.html

情報は、行動を変えるときに価値を持つ

情報を無視して同じ行動を選べるため、無償の情報の粗価値は負にならない。

対象
信号を受けた後の最適選択の期待値と受けない場合の最適選択を比べる情報価値を計算する。
条件
情報取得後に行動を条件付きで選べる、確率と利得が所与、無視することが可能。金銭数例はリスク中立として期待金額を効用に使う。情報取得費用を引く前の粗価値。
例外・限界
行動を変えられない場合は価値ゼロとなりうる。不完全な信号の精度・取得費用を考慮し、心理的負担など別の効用があれば別設定。
  • Artificial Intelligence: Foundations of Computational Agents, 3e, §12.4 The Value of Information and Control(David L. Poole and Alan K. Mackworth / University of British Columbia; Cambridge University Press)https://artint.info/3e/html/ArtInt3e.Ch12.S4.html

完全情報の価値は、購入額の上限になる

完全情報の価値は支払ってよい取得費用の上限であり、不完全な信号の価値の上限でもある。

対象
信号を受けた後の最適選択の期待値と受けない場合の最適選択を比べる情報価値を計算する。
条件
情報取得後に行動を条件付きで選べる、確率と利得が所与、無視することが可能。金銭数例はリスク中立として期待金額を効用に使う。情報取得費用を引く前の粗価値。
例外・限界
行動を変えられない場合は価値ゼロとなりうる。不完全な信号の精度・取得費用を考慮し、心理的負担など別の効用があれば別設定。
  • Artificial Intelligence: Foundations of Computational Agents, 3e, §12.4 The Value of Information and Control(David L. Poole and Alan K. Mackworth / University of British Columbia; Cambridge University Press)https://artint.info/3e/html/ArtInt3e.Ch12.S4.html