数字と報道
無作為に選んでも、名簿に載らない人の意見は拾える?
無作為に選ぶ方法でも、抽出に使う名簿に載らない人は、その名簿から直接選べません。知りたい集団を名簿がどこまで覆うかというカバレッジを確認します。標本数を増やすことと、抽出の入口から漏れた人を拾うことは別です。
基本の用語
調査で知りたい母集団、実際に調べる範囲、抽出に使う名簿や地域枠を分けます。回答しなかった人と、最初から抽出の入口にいなかった人も違います。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 全員を調べる統計なら、誤差はなくなる?全数で消える標本誤差と、数え漏れ・測定・非回答・処理の誤りを区別する。
名簿と知りたい集団は別
カナダ統計局の品質ガイドラインは、知りたい対象母集団、実務上の調査母集団、対象を特定して接触するための枠を区別します。市民全員の意見を知りたくても、使う名簿が施設利用者だけなら、その入口で拾える集団が違います。
枠の中で誰を選ぶかが無作為でも、枠の外から選ぶ確率は生まれません。抽出方法が無作為である説明と、枠が目的の集団に対応している説明を両方読む必要があります。無作為という言葉だけで代表性は決まりません。
抽出に使う枠は人の名前のリストとは限りません。地域を区切り、その地域内の住居を確認する枠もあります。何を対象単位として、そこから誰へ接触する設計かを確認すると、どの人が入口の外かを考えられます。
漏れ以外の枠の誤りもある
カバレッジの誤りは漏れだけではありません。対象外の人の混入、対象の誤分類、同じ人の重複もあります。名簿に一人が二回載れば、名簿の件数が実際の人数と違い、抽出の機会にも影響する場合があります。
こうした誤りは費用や処理だけでなく、推定の偏りやばらつきにも関係します。「登録数が大きい」だけで良い枠とはいえません。対象の定義と照らし、必要な人を含み不要な人を除いているかを調べます。
回答を得られなかったことは、抽出して接触を試みた後の問題です。一方、漏れは抽出対象へ入る前の問題です。非回答者を追いかける作業だけでは、枠の外の人が名簿へ追加されるとは限りません。
新しい対象を更新する
出生・消滅、転入・転出、対象の特徴の変化などを、調査の目的に合わせて枠へ反映します。古い名簿で多数を抽出しても、新しく対象になった人が名簿にいなければ、その漏れは残ります。
ガイドラインは重複の除去と更新、枠の品質の継続的評価を挙げています。データを集める年だけでなく、枠がいつの対象を示すかも重要です。更新前後で誰が入るようになったかを確認すれば、範囲の変化が読めます。
毎回同じ名簿なら比較しやすい面があっても、現実の対象が動けば同じ名簿のままでは対応が崩れます。比較の継続性と、その時点の対象を覆う条件の両方を示すことが必要になります。
複数の入口を使う設計もある
一つの枠では必要な集団を覆えないとき、名簿と地域枠などを組み合わせる複数枠の方法があります。どの枠でどの人へ到達できるかを設計し、品質と費用を検討します。
ただし二つの枠から集めた回答を単純に足せばよいわけではありません。両方に入る人の重なりや、どの方法で選ばれるかを扱う必要があります。複数の入口を使った事実より、その入口を推定へどう結び付けたかが鍵です。
調査の説明では対象母集団、枠の出所と時点、範囲の漏れや重複への対応を探します。抽出後の標本人数と回答率だけでは、入口の外について何が分かるかまでは判断できません。
- カバレッジ
目的の集団が抽出の枠に含まれているか。
- 非回答
枠から選び接触を試みた対象から、回答を得られたか。
無作為抽出の説明だけでは、入口から漏れた人は拾えない。
800人の名簿から100人を選ぶ
架空の地域に対象者が1000人いて、名簿には800人だけ載るとします。この名簿から100人を無作為に選んでも、残る200人にはこの抽出から選ばれる機会がありません。
800人を全員調べても、200人の意見を直接得たことにはなりません。漏れた人の意見がどのようなものかはこの設定から分からず、全体の偏りの大きさも計算しません。
考えるときの注意点
- 2009年の公式品質ガイドラインに基づく一般的方法の説明。現行の特定調査の漏れ率を推計したものではない。
持ち帰る見方
- 枠の範囲と抽出の無作為性を分ける。
- 漏れ・混入・重複を確認する。
- 標本増加と枠の更新は違う対応。
次に広がる疑問
- 全員を調べる統計なら、誤差はなくなる?
- 回答率が高い調査ほど、必ず偏りが小さい?
- 調査した人の人数を、そのまま全国の割合にできる?
順番に読んでいる方へ
出典
Statistics Canada Quality Guidelines — Coverage and frames(カナダ統計局)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-539-x/2009001/coverage-couverture-eng.htm
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
名簿と知りたい集団は別
調査対象として知りたい母集団、実際に調べる母集団、抽出に使う枠を区別する。無作為抽出も枠の外の人を直接選ばない。
- 対象
- 2009年版方法論。現行調査の実施状況ではなく母集団と枠の方法を説明。
- 条件
- 枠から抽出する調査の構成。
- 例外・限界
- 無作為抽出が枠の漏れを自動修復するわけではない。
Statistics Canada Quality Guidelines — Coverage and frames(カナダ統計局)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-539-x/2009001/coverage-couverture-eng.htm
漏れ以外の枠の誤りもある
枠のカバレッジ誤りには対象の漏れ、対象外の混入、誤分類、重複があり、推計の偏りや分散に影響する。
- 対象
- 2009年版方法論。現行調査の実施状況ではなく母集団と枠の方法を説明。
- 条件
- 目的の母集団と枠を照合。
- 例外・限界
- 人数の多い名簿であっても正確とは限らない。
Statistics Canada Quality Guidelines — Coverage and frames(カナダ統計局)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-539-x/2009001/coverage-couverture-eng.htm
新しい対象を更新する
出生・消滅や対象の特徴の変化を反映し、重複を除き、枠の品質を継続的に評価することが必要となる。
- 対象
- 2009年版方法論。現行調査の実施状況ではなく母集団と枠の方法を説明。
- 条件
- 地域/時点/対象定義をそろえた枠。
- 例外・限界
- 古い登録のまま標本だけ増やしても新規対象の漏れは直らない。
Statistics Canada Quality Guidelines — Coverage and frames(カナダ統計局)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-539-x/2009001/coverage-couverture-eng.htm
複数の入口を使う設計もある
単一の枠で必要な範囲を覆えないときは、名簿と地域枠など複数枠の方法を検討する。
- 対象
- 2009年版方法論。現行調査の実施状況ではなく母集団と枠の方法を説明。
- 条件
- 各枠の品質・費用・重なりを設計で扱う。
- 例外・限界
- 二つの回答を単純に足して重複を放置する方法ではない。
Statistics Canada Quality Guidelines — Coverage and frames(カナダ統計局)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-539-x/2009001/coverage-couverture-eng.htm