数字と報道
回答率が高い調査ほど、必ず偏りが小さい?
回答率の高さだけでは、非回答による偏りの大小は決まりません。答えなかった人が何割いるかに加え、調べたい項目について回答者とどれほど違うかが関わります。率の分母と、違いを点検する情報をセットで読みます。
基本の用語
標本へ選ばれた人の全員が回答するとは限りません。抽出された標本と、実際に集計できる回答者を区別すると、非回答の問題を具体的に考えられます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 世論調査の数%の差は、どこまで信じられる?標本誤差と、非回答などの偏りを分ける。
- 調査した人の人数を、そのまま全国の割合にできる?抽出確率と重み付き割合の計算、回答構成の補正に必要な仮定を説明できる。
回答率と偏りは別の数字
回答率は、選ばれた対象のうちどれほど回答が得られたかに関わる数字です。一方、非回答の偏りは、回答した人の結果を全対象へ広げるときのずれです。この二つは同じ量ではありません。
AAPORは、回答率だけでは非回答誤差があるか、どれほどあるかを判定できないと説明しています。調べたい項目について回答者と非回答者が異なることが問題になるためです。高い率なら無条件に安心、低い率なら無条件に使用不能とは決まりません。
答えなかった人との差を考える
全対象を回答者と非回答者へ分け、重みの違いを省いた単純な平均を考えます。全対象の平均は「回答者割合×回答者平均+非回答者割合×非回答者平均」です。回答者の平均からこの全体平均を引けば、「非回答者割合×二者の平均差」になります。
非回答割合が大きくても二者の平均差が0なら、この単純な分解でのずれは0です。逆に非回答割合が小さくても、二者の差が大きければずれは残ります。回答率の一つの数字だけで、二つの要素は分かりません。
分母の作り方も確かめる
実際の調査では、誰が適格対象か不明なケース、連絡できなかったケースなどがあります。どの状態を分母へ含めるかで、表示する結果率も変わります。AAPORの標準定義は、標本全件の最終状態をそろえて記録し、結果率を計算する方法を示しています。
二つの調査を比べるなら、同じ意味の回答率かを先に確認します。ある調査の回答者数を任意の対象人数で割った値を、別の定義で計算した率と並べて品質の順位を付けることはできません。
補正には情報と条件がいる
上の分解式は問題の仕組みを示しますが、実調査で非回答者の値が観測できるとは限りません。式があることと、補正に使える値があることは違います。分からない値を一律に0と置けば、非回答を非該当に変えてしまいます。
回答率に加え、調査項目に関わる回答者と非回答者の違いを点検する情報を見ます。回答率が上がった事実だけで、その違いが解消したとはいえません。補正にどんな情報を使ったか、同じ補正群で残る違いをどんな仮定で扱うかも確認します。
回答率は、情報の欠け方を考える出発点として大切です。しかし、調べたい意見についての偏りと、別の項目についての偏りが同じとも限りません。回答者と非回答者の違いは、今回の問いに結び付けて確認します。
高い回答率でも二者の差が残る例と、低い回答率でも差がない例を並べると、率の順位だけで品質を決められない理由が分かります。現実の調査では、非回答者の状態をどこまで確かめられるかが、判断の材料になります。
- 非回答者の割合
どれほど結果が欠けているか。
- 回答者との違い
調べたい項目で、どれほど違うか。
重みを省いた単純な平均の分解では、二つの積が回答者平均と全体平均の差になります。
架空の完全分解:回答率80%でも偏りは残る
適格対象100人を全て把握できる説明用の例です。回答者80人の賛成率が60%、非回答者20人が20%なら、全対象の賛成率は0.8×60+0.2×20=52%です。回答者だけの60%との差は8ポイントです。
これは非回答割合20%×二者の差40ポイント=8ポイントでも求まります。非回答者も60%なら同じ回答率80%でもずれは0です。現実には非回答者の賛成率が不明なため、回答率だけから8ポイントと補正できるわけではありません。
持ち帰る見方
- 回答率と、回答者だけの推定のずれを分ける。
- 非回答割合と、調査項目についての二者の違いを考える。
- 回答率の分母と、補正に使った情報・仮定を読む。
次に広がる疑問
- 回答率の分母には、どの最終状態の対象を含むか。
- 調べたい項目に関わる回答者と非回答者の違いを何で点検したか。
出典
Standard Definitions — Background(American Association for Public Opinion Research)https://aapor.org/standards-and-ethics/standard-definitions/
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
回答率と偏りは別の数字
回答率だけでは、非回答による誤差があるか、どれほどあるかを判定できない。非回答者と回答者が調査目的に関わる点で違うかが問題になる。
- 対象
- Background。
- 条件
- 抽出済みの対象からの非回答。
- 例外・限界
- 低回答率だけで必ず大きな偏り、高回答率だけで偏り0とはいえない。
Standard Definitions — Background(American Association for Public Opinion Research)https://aapor.org/standards-and-ethics/standard-definitions/
答えなかった人との差を考える
全対象の平均を回答者割合で分解する単純例では、回答者平均と全対象平均の差は、非回答割合×回答者平均と非回答者平均の差になる。
- 対象
- 非回答偏りの定義からの代数的整理。
- 条件
- 適格対象と状態が全て既知という架空の完全分解。重みの違いを省く。
- 例外・限界
- 実調査で非回答者の値が既知とは限らず、式だけで補正値は決まらない。
Standard Definitions — Background(American Association for Public Opinion Research)https://aapor.org/standards-and-ethics/standard-definitions/
分母の作り方も確かめる
調査の回答率を比べるには、適格性不明や未接触等をどう扱い、どの標準化した結果率を計算したかを確認する。
- 対象
- Standard Definitions案内。
- 条件
- 標本全件の最終状態を整理する。
- 例外・限界
- 返ってきた人数を任意の分母で割った値を同じ回答率とみなさない。
Standard Definitions — Background(American Association for Public Opinion Research)https://aapor.org/standards-and-ethics/standard-definitions/
補正には情報と条件がいる
非回答の点検では回答率に加え、調査項目に関わる回答者/非回答者の違いを考える必要がある。回答率を上げたことだけでその違いが解消したとはいえない。
- 対象
- Backgroundからの読解整理。
- 条件
- 補正に使う情報と未把握の違いを区別する。
- 例外・限界
- 分からない非回答者の状態を一律に0と置かない。
Standard Definitions — Background(American Association for Public Opinion Research)https://aapor.org/standards-and-ethics/standard-definitions/