経済の基礎
合計所得が同じなら、社会全体の買い物も同じ?
合計所得が同じでも、誰が所得を持つかによって市場の需要は変わりえます。個人の所得反応が共通の形を持つ条件なら、合計所得を使う代表家計へまとめられます。
基本の用語
市場需要は同じ価格の下での各人の需要を足したものです。総需要の景気分析へまとめる前に、個人所得の分け方を集計から消してよいかを考えるミクロの問いです。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 一人の節約が、全体では景気を弱めることがある?個人の節約を全体へ足すときは、所得も変わる。
- 収入が二倍なら、すべての買い物も二倍になる?比例的な需要増を仮定できる好みか点検する。
誰の所得かも需要に関わる
Aが買いたい量とBが買いたい量を、同じ商品の同じ価格で足します。個人需要は所得にも好みにも依存するので、合計には「Aの所得」「Bの所得」という情報が入っています。合計所得を一つ書くだけで、二人の量まで決まるとは限りません。
二人とも同じ所得反応を持つ場合でも、量が所得に対して非線形なら、所得をまとめる効果は一様ではありません。同じ好みだから誰へ渡しても同じという結論には、さらに需要の形の確認が必要です。
需要を集計する価格はそろえます。所得を移した結果、価格自体も変わる市場均衡の比較は、その後の段階です。まず価格固定で所得配分だけを変え、個人の希望量の合計が動くかを調べます。
合計所得だけでは足りない場合
市場需要が合計所得だけで決まるなら、合計を保つどんな所得の移し方でも、その需要は同じになります。逆に所得の配分を変えて合計需要が変わる例を一つ見つければ、合計所得だけでは表せないと分かります。
架空の二人で、Aは所得の半分、Bは四分の一を同じ商品の支出に使うとします。所得をBからAへ移すと、増えたAの需要が減ったBの需要を上回ります。合計所得は同じでも、その商品の市場需要は増えます。
これは移転が望ましいという価値判断ではありません。誰の需要がどう動くかを省略してよいかという集計の問題です。財ごとに所得反応が違うなら、所得移転は買い物全体の構成にも関わります。
代表する家計を置ける条件を読む
代表家計を置ける条件の一つが、Gorman型の間接効用です。各人の間接効用をa_i(p)+b(p)w_iと表し、所得に掛けるb(p)が全員に共通とします。価格と所得を入力した効用の形に、需要集計を単純化する条件を置いています。
この条件では需要の所得反応が人どうしで共通になり、合計所得だけへまとめられます。個々の所得や好みを全て同じにする必要はありませんが、共通部分が要る点を落とせません。対象の所得範囲に端点が入る場合も確認します。
代表家計という言葉は、実際に平均的な一人を見つけたという意味ではありません。多数の個人需要を一つの問題へ表す模型の条件です。合計所得が増えた資料だけで全員の買い物が同じ割合で増えたと読まないための点検に使えます。
- 係数が違う
A1/2・B1/4なら、40/40から60/20へ移転し需要30→35。
- 係数が共通
双方1/2なら、同じ所得移転でも需要40→40。
価格1、対象所得範囲で一定支出比率を置く架空例です。所得表示はA/Bの順。現実の家計の反応を推定した図ではありません。
架空の例:所得の移転で市場需要が変わる
商品の価格は1です。Aの支出比率を1/2、Bを1/4とし、初めは所得A40・B40とします。需要はA20・B10、合計30です。所得20をBからAへ移すとA60・B20となり、需要30+5=35になります。
比較として二人とも所得の1/2を同じ商品へ使うなら、初めは20+20=40、移転後は30+10=40です。合計所得80が同じというだけでなく、需要の所得係数が共通なので合計量が保たれます。
持ち帰る見方
- 合計所得だけで集計できるなら、所得を配り直しても市場需要が変わらない。
- 同じ好みという言葉より、所得反応の共通の形と範囲を確かめる。
次に広がる疑問
- 相似的な個人需要はどう決まる?
- 公共財は個人需要をどう足す?
順番に読んでいる方へ
出典
Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
誰の所得かも需要に関わる
市場需要は、同じ価格の下の各人の需要を足したものである。
- 対象
- 個人需要の合計が所得配分に依存する例と、共通の所得反応があれば合計所得だけで表せる条件を示す。
- 条件
- 価格固定、個人需要を足す、個人所得変更前後とも対象の需要範囲内。定理は滑らか等の通常の消費者理論条件。
- 例外・限界
- 好みが全員同じというだけでは、非線形所得反応の集計から所得分布を除けない。Gorman条件の所得範囲外の端点へ延長しない。
Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf
合計所得だけでは足りない場合
合計所得だけで市場需要を表せることは、可能な所得再分配が需要の合計を変えないことを意味する。
- 対象
- 個人需要の合計が所得配分に依存する例と、共通の所得反応があれば合計所得だけで表せる条件を示す。
- 条件
- 価格固定、個人需要を足す、個人所得変更前後とも対象の需要範囲内。定理は滑らか等の通常の消費者理論条件。
- 例外・限界
- 好みが全員同じというだけでは、非線形所得反応の集計から所得分布を除けない。Gorman条件の所得範囲外の端点へ延長しない。
Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf
代表する家計を置ける条件を読む
Gorman型の間接効用で全員の所得係数が共通である条件の下では、需要集計は合計所得に依存する形へまとめられる。
- 対象
- 個人需要の合計が所得配分に依存する例と、共通の所得反応があれば合計所得だけで表せる条件を示す。
- 条件
- 価格固定、個人需要を足す、個人所得変更前後とも対象の需要範囲内。定理は滑らか等の通常の消費者理論条件。
- 例外・限界
- 好みが全員同じというだけでは、非線形所得反応の集計から所得分布を除けない。Gorman条件の所得範囲外の端点へ延長しない。
Applications of Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/1b0f90b4fdada65148edd1e4b16aab18_MIT14_121F15_3S.pdf