経済の基礎
必要な生活費の増え方から、どれだけ買う量か分かる?
満足を固定して求めた最低支出の、ある価格への傾きは、その最安案で買う数量に等しくなります。補償需要が一意などの条件の下で成り立つShephard補題です。大きな値上げの追加額を、元の数量だけで測る式とは区別します。
基本の用語
最低支出は同じ満足を最安で実現する額です。補償需要はその買い物の数量で、所得固定の通常需要とは異なります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 値上げの損を埋めるには、いくら所得を足せばよい?補償額は、新価格で元の満足を得る最低支出から考える。
- 買う量を比べるとき、収入を固定する場合と満足を固定する場合は同じ?予算固定の通常需要と効用固定の補償需要を具体的な買い方で対比する。
最低支出の傾きは、最安案の購入量
同じ満足を得る買い物の最安案で、パンを三個買うとします。パンの単価をほんの少しだけ上げたとき、最低支出額の最初の増え方は、この三個という量に対応します。最安で買い直す計算でも、元の数量が傾きに残ります。
支出関数をe、目標効用をu、パン価格をpとすると、価格への微分e_pが補償需要hに等しい、という関係です。円の支出を円/個の価格で微分するので、単位も個になります。金額だけの指標と数量を結びます。
効用が連続で、目標と価格の近くで最安の数量が一意な場合を使います。何種類かの買い方が同率で最安になる点では、価格への傾きが一つに定まらないことがあるため、一意の数量を読み出す計算へ進みません。
所得の限界効用を割って需要へ戻すRoy恒等式と違い、支出関数は最初から金額を返します。そのため価格で一回微分するだけで数量になります。同じ数量復元でも、最高効用と最低支出では使う関数が異なります。
買い方変更は、最初の傾きを消さない
価格が少し変われば、最安案の数量も動くことがあります。だから元の数量が支出の傾きになるのは、買い方を絶対に変えないという仮定の結果ではありません。選び直しを含めた最低支出に関する性質です。
最適点では、目標満足を保ちながら買い方を微小に替える余地は、最低支出を一階でさらに下げません。最適値の最初の変化は価格の直接の変更で測れます。この考えを一般に包絡線定理と呼びます。
価格以外に所得を固定しているのではなく、効用目標を固定している点が重要です。通常需要を測った表の数量を、そのまま同じShephard補題へ代入するには、対応する効用目標をそろえる必要があります。
目標効用を保つ候補の集合は、価格が小さく変わっても同じです。その集合の中で費用の順位を選び直します。価格変更と同時に効用目標も変えると、最適値への直接の影響がもう一つ加わり、この一価格の式では測れません。
大きな値上げは、一点の傾きだけで測らない
有限の値上げでは、途中の価格ごとに最安の数量が変わりえます。最初の傾きに全値上がり幅を掛けると近似にはなっても、正確な追加支出とは限りません。小さい変更での一次近似と、全体の差額を分けます。
また完全代替品が同価格になる点では、少しの値上げで購入先が丸ごと入れ替わります。最低支出は連続でも、そのグラフには折れ目ができます。折れ目の左と右の傾きが異なる例は、一意性の条件を確かめる理由になります。
必要生活費の感応度を読むときは、対象の価格、守る満足、最安案の一意性、変化幅をそろえます。実際の家計支出が固定された数量なのか、再最適化した最低支出なのかも別に確認します。
例で価格4から9へ進む間、最安のx量は3から2へ減ります。元の3個をずっと買う計算より追加支出が小さいのは、この切替えを含むためです。最初の傾きが3であることと、全区間の数量が3であることは違います。
- 局所の傾き
その価格での最安購入量に等しい。
- 有限の支出差
途中で選び直す数量の変化も含む。
目標効用を固定した最小支出を比較する。
架空の例:小さい値上げと大きい値上げを比べる
効用√(xy)の目標を6へ固定し、y価格1、x価格4とします。最低支出はe=12√p_xなので24、補償需要xは6/√p_xなので3です。価格4での支出の傾きも3になります。
x価格を4.01へ上げると追加支出は12(√4.01−2)で約0.030です。傾き3に0.01を掛けた近似と近くなります。価格を9まで上げると最低支出36で追加12、元の量3×値上げ5=15とは一致しません。
持ち帰る見方
- 最低支出の価格への微分は、同じ効用を守る購入量に対応する。
- 有限の値上げ差と一点での傾きを分ける。
次に広がる疑問
- 二財の価格反応を入れ替えると何が変わる?
順番に読んでいる方へ
出典
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
最低支出の傾きは、最安案の購入量
補償需要が一意なら支出関数の各価格微分は、その財の補償需要数量である。
- 対象
- Shephard補題を支出関数の傾き・最安購入量・微小価格変化の対応として使う。
- 条件
- 連続な効用・正の価格、補償需要が一意、目標効用固定。微小な一価格変更。
- 例外・限界
- 有限の価格変更は途中で需要が変わる。最適解の切替え点では一つの通常微分が存在しない場合がある。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
買い方変更は、最初の傾きを消さない
目標効用を固定した微小価格上昇では、元の最安購入量が一次の追加支出を決める。
- 対象
- Shephard補題を支出関数の傾き・最安購入量・微小価格変化の対応として使う。
- 条件
- 連続な効用・正の価格、補償需要が一意、目標効用固定。微小な一価格変更。
- 例外・限界
- 有限の価格変更は途中で需要が変わる。最適解の切替え点では一つの通常微分が存在しない場合がある。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf
大きな値上げは、一点の傾きだけで測らない
包絡線定理は最適化した値の変化を、最適点における目的関数の直接変化で表す。
- 対象
- Shephard補題を支出関数の傾き・最安購入量・微小価格変化の対応として使う。
- 条件
- 連続な効用・正の価格、補償需要が一意、目標効用固定。微小な一価格変更。
- 例外・限界
- 有限の価格変更は途中で需要が変わる。最適解の切替え点では一つの通常微分が存在しない場合がある。
Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf