経済の基礎

二つの価格表の平均で、必要な生活費も平均になる?

同じ満足を得る最低支出は、二つの価格表の平均に対して、各価格表での最低支出の平均以上になります。価格表ごとに別の安い買い方を選べるからです。この性質を、価格についての支出関数の凹性と呼びます。

基本の用語

目標とする満足を固定し、それを達成する買い物のうち最も安いものを選びます。同じ数量の買い物を固定する比較とは違います。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

価格表ごとに最安の買い方を選ぶ

ある満足を得るため、AでもBでもよいとします。価格表が変わると最安の案も変わります。最低支出を求めるには、それぞれの価格表で同じ候補全体を比べ直します。旧価格で安かった案をそのまま買い続ける必要はありません。

支出関数の入力は価格表と目標効用で、出力は最低支出額です。ここでは目標効用を同じ水準へ固定し、価格表だけを動かします。違う満足の人の必要額を混ぜたり、品物の品質を替えたりする比較ではありません。

一つの購入案を固定すると、その費用は価格の線形な計算です。価格表を半分ずつ混ぜたときのその案の費用は、二つの費用の平均になります。ただし最安案を選ぶ操作まで含めると、平均との関係が変わります。

目標を満たす集合は価格の平均を取っても同じです。価格表が二つあるから満足の目標まで二つ平均する、という操作はしていません。同じ候補の最低値を三つの価格表で求めることで、不等式の比較ができます。

平均価格での最低支出は、最低支出の平均以上

平均価格で選ぶ一つの案をCとします。Cを元の二価格表でも評価できます。各価格表の最低支出は、それぞれでCを買う費用以下です。二つを平均すると、最低支出の平均はCの平均価格での費用以下になります。

平均価格でのCが最安なら、その費用が平均価格での最低支出です。したがって、平均価格での最低支出は各最低支出の平均以上です。半分ずつ以外の割合でも、同じ考えで凹性の不等式になります。

これは価格が平均的なら割高という日常の評価ではありません。二つの端ではそれぞれ別の案へ切り替えて節約できても、中間で同じだけの節約ができるとは限らない、という最適化の性質です。

二つの価格表で同じ案が最安であり、平均価格でもその案が最安なら、不等式は等号になります。価格ごとの切替えで節約できる場合に、平均との差が生まれます。凹性は常に平均より厳密に大きいという条件ではありません。

一斉の倍率変更と、価格表の平均を分ける

全ての価格を二倍にする比較は別です。全候補の費用が二倍なので、最安の案もその順位も変わらず、最低支出は二倍になります。一つの価格を上げ、別の価格を下げた価格表を混ぜる操作とは区別します。

凹性と呼んでも、価格上昇で必要支出が必ず減るという意味ではありません。全ての価格が上がれば、同じ目標への最低支出は小さくなりません。凹性は価格の平均に関する形で、上昇や下落の方向を示す言葉ではないのです。

数量割引、購入上限、品切れがあるなら、単価を掛けて同じ候補集合を比べる模型から見直します。二価格表で代替品を選べるという条件を確かめてから、不等式を使います。

同じ価格を二倍にする操作では、最安案の順位が変わりません。二価格表の平均では、その順位が切り替わる場合があります。価格に倍率を掛ける一次同次性と、平均価格を比べる凹性を、操作の違いから分けて読みます。

別々の最安案と、平均価格での最安案
  • 価格表ごとの最安

    AでもBでも、それぞれ安い方へ替えられる。

  • 平均価格での最安

    平均の価格表で一つの買い方を選ぶ。

効用目標と購入候補を固定する。

架空の例:安い飲み物が入れ替わる価格表

同じ満足になる一杯として茶とコーヒーを完全に代替できるとします。価格表Aは茶100・コーヒー300、Bは茶300・コーヒー100です。どちらも最安の一杯は100なので、最低支出の平均は100です。

半分ずつ混ぜた価格表では両方200になり、最低支出は200です。200は100以上で、平均と一致しません。目標を二杯にすれば各数値は二倍です。候補と必要量を固定し、価格だけを混ぜた計算です。

持ち帰る見方

  • 固定案の費用の平均と、再最適化した最低支出の平均を分ける。
  • 支出の凹性は価格平均の不等式で、価格上昇の方向とは別。

次に広がる疑問

  • 最低支出の価格への傾きは何を表す?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

価格表ごとに最安の買い方を選ぶ

支出関数は目標効用を達成する買い物の最低支出である。

対象
目標満足固定の支出関数が価格について凹になることを、価格ごとの最安案の切替えで検算する。
条件
同一選好・同一目標効用・同一候補集合・正の線形価格。価格ごとに最低支出を再最適化する。
例外・限界
凹性は支出額の減少でも物価実測の予測でもない。数量割引や候補集合変更は別問題。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

平均価格での最低支出は、最低支出の平均以上

目標効用を固定した支出関数は、価格について凹である。

対象
目標満足固定の支出関数が価格について凹になることを、価格ごとの最安案の切替えで検算する。
条件
同一選好・同一目標効用・同一候補集合・正の線形価格。価格ごとに最低支出を再最適化する。
例外・限界
凹性は支出額の減少でも物価実測の予測でもない。数量割引や候補集合変更は別問題。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

一斉の倍率変更と、価格表の平均を分ける

全価格を同じ正の倍率にすると最低支出もその倍率になる。

対象
目標満足固定の支出関数が価格について凹になることを、価格ごとの最安案の切替えで検算する。
条件
同一選好・同一目標効用・同一候補集合・正の線形価格。価格ごとに最低支出を再最適化する。
例外・限界
凹性は支出額の減少でも物価実測の予測でもない。数量割引や候補集合変更は別問題。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf