経済の基礎

一つの市場で買い過ぎなら、ほかの市場で売り過ぎになる?

全員が保有財の価値に等しい予算を使い切る純粋交換経済では、各市場の超過需要へ価格を掛けた合計がゼロになります。他の全市場が一致していても、最後の数量一致を導くにはその財の価格が正であることが必要です。

基本の用語

超過需要は、買いたい総量から供給できる総量を引いた値です。正なら買い過ぎ、負なら売り過ぎです。ここでは生産や外部との取引を置かず、初期保有財を二人以上で交換する模型を考えます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

使い切った予算をそろえる

各人が持つ財の束を、その価格で評価した金額を所得とします。借金や外部からの現金を省いた純粋交換経済では、保有財を売って買い物をするため、その価値が予算の出発点です。好みは局所非飽和で、近くにもっとよい束を見つけられると置きます。

この条件の最適需要では、買う束の価格評価が所得と等しくなります。予算が余っていれば、まだ選べる近くのよい束があるためです。財の価格が正で、選択集合と予算を全て数えていることが、この使い切りの比較に関わります。

お金を手元に残す選択や将来への貯蓄も価値がある模型なら、それも対象の財・用途として予算へ入れます。今日の現物商品の支出だけを足し、未使用の預金を忘れた表へ、使い切り条件を無理に当てはめません。

超過需要を金額で足す

財kの価格をp_k、全員の需要合計をD_k、初期保有合計をW_kと書きます。各人の「支出=保有価値」を足すと、全支出も全保有価値に等しくなります。両辺を引けば、全財についてp_k×(D_k−W_k)を足した値がゼロです。

これは価格付きの超過需要を足すという整理です。りんご一個とパン一個をそのまま足す数量の関係ではありません。価格が違えば、一個の買い過ぎを、一個の売り過ぎで打ち消せるとは限らないからです。

このワルラス法則は、全市場が既に一致しているという結論ではありません。ある財の超過需要が正なら、他の財に価格で評価した負の超過需要が残るという制約です。どの価格で全ての数量が一致するかは、別に解く必要があります。

最後の市場には正の価格が要る

全部でn市場あるとき、n−1市場の超過需要がゼロなら、合計式には最後の市場の価格×超過需要だけが残ります。合計ゼロで最後の価格が正なら、その超過需要もゼロです。独立に確認する市場条件を一つ減らせる理由になります。

最後の価格がゼロなら、数量の超過需要が正でも価格との積はゼロです。合計式から最後の数量一致を結論できません。また全員の予算が一致せず、外部への移転などを数えていない場合も、同じ式の出発点を失います。

ニュースの在庫不足や輸入超過へ、法則の言葉を直ちに当てはめないようにします。純粋交換の全市場・全予算をそろえた模型の恒等式であり、実際の不足が価格変更で必ずすぐ解消するという予測ではありません。

架空の例価格付きの超過需要を足す
  • りんご市場

    需要11−保有10=+1個。価格2なので+2。

  • パン市場

    需要18−保有20=−2個。価格1なので−2。

  • 合計

    価格付き合計0。数量一致は両方とも未成立。

全員の所得が保有財評価に等しく、予算を使い切る純粋交換の架空例です。数量だけの合計ゼロや、価格調整の速さを示す図ではありません。

架空の例:買い過ぎを金額で合わせる

りんごの価格2、パンの価格1とします。合計保有はりんご10個・パン20個、合計需要はりんご11個・パン18個です。りんごの超過需要1個は価格付きで+2、パンは−2個で価格付き−2となります。

価格付きの合計はゼロでも、両市場に数量の不一致が残っています。需要の価値は2×11+18=40、保有価値も2×10+20=40です。全員の予算がそろうことと、全ての需給が一致することを、この二行の違いで確認できます。

持ち帰る見方

  • 数量ではなく価格付き超過需要を足す。
  • 他市場の一致から最後の数量一致へ進むときは、最後の価格を確かめる。

次に広がる疑問

  • 全市場がつり合う価格はどう考える?
  • 目標配分を価格で支えるには?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

使い切った予算をそろえる

局所非飽和の消費者の最適需要では、購入束の価格評価が所得に等しい。

対象
純粋交換経済の予算制約を足し、価格付き超過需要の合計ゼロと最後の市場の条件を示す。
条件
純粋交換、全財と全家計を数える、各人の所得は初期保有財の価格評価、価格正、局所非飽和で予算使い切り、貨幣/貯蓄を省略しない。
例外・限界
恒等式は需給一致を仮定しないが、需要を作る全予算が整合する必要。最後の財の価格ゼロなら最後の数量一致は導けない。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

超過需要を金額で足す

純粋交換で所得を保有財の価値とし全員の予算を足すと、価格を掛けた超過需要の合計はゼロになる。

対象
純粋交換経済の予算制約を足し、価格付き超過需要の合計ゼロと最後の市場の条件を示す。
条件
純粋交換、全財と全家計を数える、各人の所得は初期保有財の価格評価、価格正、局所非飽和で予算使い切り、貨幣/貯蓄を省略しない。
例外・限界
恒等式は需給一致を仮定しないが、需要を作る全予算が整合する必要。最後の財の価格ゼロなら最後の数量一致は導けない。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf

最後の市場には正の価格が要る

この合計がゼロで最後の財の価格が正なら、他の全市場の超過需要がゼロであることから最後の市場もゼロになる。

対象
純粋交換経済の予算制約を足し、価格付き超過需要の合計ゼロと最後の市場の条件を示す。
条件
純粋交換、全財と全家計を数える、各人の所得は初期保有財の価格評価、価格正、局所非飽和で予算使い切り、貨幣/貯蓄を省略しない。
例外・限界
恒等式は需給一致を仮定しないが、需要を作る全予算が整合する必要。最後の財の価格ゼロなら最後の数量一致は導けない。
  • Consumer Theory — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/ea9f11b15ace05e7bfd31d58ae48beb9_MIT14_121F15_2S.pdf