経済の基礎
チームの成果だけに報酬を付けると、全員が努力する?
共同成果を増やした人が、その増分の全額を受け取るとは限りません。努力費用は本人が負担するので、チーム全体には得でも個人には割に合わない場合があります。均等分配の例を確認し、さらに成果を必ず全額配る条件が持つ限界を考えます。
基本の用語
個別の努力を契約へ書けず、チームの総成果だけを確認できる模型です。一人を監督する問題に加えて、成果を誰へどれだけ配るかが誘因に関わります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 仕事を任せると、なぜ監督が必要になる?利害の違いと、契約で保証できない行動に注目する。
- 公共財と、役所が提供するサービスは同じ?提供者と、非競合性・排除可能性を分ける。
成果を分けても、追加成果の取り分は全部ではない
各人の努力を契約にできず共同成果だけに報酬を付ける場合、自分が増やす成果の全体と自分へ配られる増分が異なることがある。
個人が努力して全体の成果を100増やしても、その人の取り分が50しか増えなければ、本人は50と自分の費用を比べます。他の人へ渡る50も社会的な得ですが、そのまま本人の報酬には入りません。
チームの共同作業にはいろいろな形があります。このページは個人の努力を直接契約できず、成果の分配だけで動かそうとする模型です。共同作業そのものが必ず非効率という意味でも、全員が怠けたい性格だという意味でもありません。
人数で割ると、私的な採算が変わる
総成果を均等に分ける架空例では、一人の努力が成果を増やしても、その人が得る追加報酬は増分の人数分の一になる。努力費用を本人が全額払うなら全体では得でも私的には得でない場合がある。
二人の均等分配で、ある人の努力の費用が60、増える成果が100なら、全体の純増は40です。しかし本人の追加報酬は100の半分50なので、費用60に届きません。個人の採算と全体の採算を同じ式として扱わないことが大切です。
この離散的な数値例は、取り分の薄まりを見せるものです。チーム全員の最適努力を求めたり、あらゆる分配ルールの不可能性を証明したりした例ではありません。均等に配る方式の問題と、次の一般的な条件付きの結論を分けます。
常に全額を配る条件にも限界がある
危険中立で連続努力、各人の効率的努力が内点となる一定の模型では、どの成果でも総成果を必ず全額分配する報酬だけで効率的な努力を非協力均衡として実装できない。
ここでいう全額分配は、目標成果だけでなく、どの成果になっても総額を当人たちへ配り切る条件です。ある人の取り分を増やすと別の人の取り分が減るので、全員へ追加成果の全額を同時に報酬として与えることはできません。
不可能性の結論は、二人以上、努力を連続的に選べる、努力の費用を本人が負担する、危険中立で、効率的な努力が選択範囲の端でないなどの条件を置きます。離散的努力や個別の怠業を識別できる場合まで、同じ結論とはしません。
目標を外した報酬を、外へ出せるか
同じ決定的成果の模型で、目標を外した成果を全額は当人たちへ配らずに済む主体があれば、目標成果時のみ報酬を与える仕組みによって効率的努力を均衡として実装できることがある。
目標の総成果に達した時だけ約束の報酬を渡し、外した成果をチームへ全額戻さなくてよいと、別の報酬設計が可能になります。決定的な成果の模型で、この仕組みは目標の効率的努力を均衡として支える場合があります。
ただし目標以外の成果を誰か同じチームの別の人へ全額渡すだけなら、全額分配の制約を外していません。外部へ留保できる主体の役割が重要です。管理者を置けば現実の全チームが最適になる、あるいは均衡が一つになるという保証ではありません。
条件を置いた具体例
架空の例
二人が総成果を半分ずつ分けます。Aの追加努力だけで成果が100増え、Aの努力費用が60になると置きます。Bの行動はこの比較では固定します。
全体では100−60=40の得ですが、Aの追加報酬は50なので、本人には50−60=−10です。全体に得な努力が個人の選択では実行されない場合を示す例で、連続努力の不可能性の定理そのものではありません。
持ち帰る見方
- 共同成果を増やした人が、その増分の全額を受け取るとは限りません。
- 同じ決定的成果の模型で、目標を外した成果を全額は当人たちへ配らずに済む主体があれば、目標成果時のみ報酬を与える仕組みによって効率的努力を均衡として実装できることがある。
次に広がる疑問
- 仕事を任せると、なぜ監督が必要になる?
- 相手の出方で最善の選択が変わるのはなぜ?
順番に読んでいる方へ
出典
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
成果を分けても、追加成果の取り分は全部ではない
各人の努力を契約にできず共同成果だけに報酬を付ける場合、自分が増やす成果の全体と自分へ配られる増分が異なることがある。
- 対象
- 非契約可能な各人努力と総成果報酬のチーム模型。
- 条件
- 危険中立、二人以上、努力は連続の区間で選び成果が各人努力に厳密増加、効率的努力が内点という定理の条件を区別する。
- 例外・限界
- 離散努力・個別の逸脱を特定できる成果・極端な危険回避等には同じ不可能性を自動適用しない。実際の給与制度への法的助言ではない。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
人数で割ると、私的な採算が変わる
総成果を均等に分ける架空例では、一人の努力が成果を増やしても、その人が得る追加報酬は増分の人数分の一になる。努力費用を本人が全額払うなら全体では得でも私的には得でない場合がある。
- 対象
- 非契約可能な各人努力と総成果報酬のチーム模型。
- 条件
- 危険中立、二人以上、努力は連続の区間で選び成果が各人努力に厳密増加、効率的努力が内点という定理の条件を区別する。
- 例外・限界
- 離散努力・個別の逸脱を特定できる成果・極端な危険回避等には同じ不可能性を自動適用しない。実際の給与制度への法的助言ではない。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
常に全額を配る条件にも限界がある
危険中立で連続努力、各人の効率的努力が内点となる一定の模型では、どの成果でも総成果を必ず全額分配する報酬だけで効率的な努力を非協力均衡として実装できない。
- 対象
- 非契約可能な各人努力と総成果報酬のチーム模型。
- 条件
- 危険中立、二人以上、努力は連続の区間で選び成果が各人努力に厳密増加、効率的努力が内点という定理の条件を区別する。
- 例外・限界
- 離散努力・個別の逸脱を特定できる成果・極端な危険回避等には同じ不可能性を自動適用しない。実際の給与制度への法的助言ではない。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf
目標を外した報酬を、外へ出せるか
同じ決定的成果の模型で、目標を外した成果を全額は当人たちへ配らずに済む主体があれば、目標成果時のみ報酬を与える仕組みによって効率的努力を均衡として実装できることがある。
- 対象
- 非契約可能な各人努力と総成果報酬のチーム模型。
- 条件
- 危険中立、二人以上、努力は連続の区間で選び成果が各人努力に厳密増加、効率的努力が内点という定理の条件を区別する。
- 例外・限界
- 離散努力・個別の逸脱を特定できる成果・極端な危険回避等には同じ不可能性を自動適用しない。実際の給与制度への法的助言ではない。
Sections1–2: Moral Hazard and Incentives Contracts, MIT14.124 (2017)(MIT OpenCourseWare / Bengt Holmström(講義教材))https://ocw.mit.edu/courses/14-124-microeconomic-theory-iv-spring-2017/be21e9cc762231c50ab42bbf35ead5db_MIT14_124S17_LecNote1_2.pdf