政治の仕組み
市長と市議会が対立すると、誰が決める?
市長と市議会は、それぞれ住民から選ばれ、役割を分担します。議会は条例や予算などを議決し、長は事務を執行します。対立した場合には再議や不信任などの手続があり、「市長だから最後は全部決められる」という仕組みではありません。
基本の用語
都道府県の長は知事、市町村の長は市町村長です。長と議会議員を別々に直接選ぶ関係を二元代表制と呼びます。国会が首相を指名する国の制度とは、人を選ぶ関係が違います。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 身近な公共サービスは、国と自治体のどちらが決める?自治体の長・議会と国との分担
長と議会は別々に住民から選ばれる
議会は、条例の制定・改廃、予算の決定、決算の認定など、法律が定めた事項を議決します。長は自治体を代表し、事務を管理して執行し、予算を調製・執行するなどの仕事を担います。政策を提案すること、議決すること、実施することを分けます。
住民から直接選ばれた長にも、議会の議決が必要な事項を一人で置き換える権限が一般にあるわけではありません。また、行政には教育委員会等の別の執行機関もあります。自治体で起きたことを全て市長だけの判断とまとめず、法令上の担当を確認します。
議決への異議は再議の手続で扱う
長は議会の議決に異議があれば、原則として議決の日から10日以内に理由を示して再議に付せます。条例や予算では、議決の送付を受けた日から数えます。再議は、長が一言反対すれば議決を消せる制度ではなく、議会に改めて判断を求める手続です。
議会が元と同じ議決をすれば確定しますが、条例の制定・改廃や予算について同じ議決をするには、出席議員の3分の2以上の同意が必要です。法令違反等が問題になる場合には別の再議・審査の規定もあるため、単なる政策上の異議との違いを確かめます。
不信任は政策案の否決より重い手続
長への初回の不信任議決には、議員数の3分の2以上が出席し、その出席者の4分の3以上が同意する条件があります。長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できます。解散しなければ、その期間が経過した日に職を失います。
解散後初めて招集された議会で再び不信任となり通知された場合も、長は失職します。この二度目は、議員数の3分の2以上が出席し、出席者の過半数の同意が必要です。予算案を否決しただけで市長が自動的に失職する、と読むことはできません。
対立の内容と、使った手続を読む
「市長と議会が対立」とだけ聞いても、条例の内容、予算の配分、長への信任など、何を争っているかは分かりません。議案の否決、再議、不信任のどれなのかを確認すると、次に誰が何を判断するかが具体的になります。
住民がどちらを選んだかという事実から、どちらの政策が必ず正しいとも決まりません。説明された理由、議決の内容、実施後の結果を分けて読む必要があります。対立調整の制度があることと、望ましい解決が常に得られることは異なります。
数字にも分母の違いがあります。初回不信任の出席条件は議員数、賛成の条件は出席者を分母にします。再議決の条例・予算の条件も出席議員です。「3分の2」という部分だけを覚えず、どの手続の、誰を数えた条件かを一緒に読みます。
- 議会
条例・予算等を議決し、執行を点検する
- 長
議案を提出し、事務や予算を執行する
再議や不信任は、長や議会が行う別の手続です。それぞれの対象と条件を本文で確認します。
架空の条例案をめぐる再議
市議会が条例案を可決し、市長が内容に異議を持ったとします。市長が法定期間内に理由を示して再議に付したら、議会が改めて判断します。市長の反対意見が出た瞬間に、条例案が自動的に無かったことになるわけではありません。
この例で同じ条例案を再び議決するには、出席議員の3分の2以上の同意が問題になります。不信任は置いていないので、「対立したから解散や失職」と話を進めません。どの正式な手続を使ったかが重要です。
持ち帰る見方
- 長の執行と議会の議決を分ける。
- 再議と不信任は、対象と条件が異なる。
次に広がる疑問
- 議会が議決する条例の根拠と限界を読む
- 住民から条例や解職を求める制度を知る
- 国会と内閣の関係と比べる
順番に読んでいる方へ
出典
地方自治法(2026年9月24日施行版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000067_20260924_506AC0000000065
確認日:2026-10-04
日本国憲法(衆議院掲載本文)(衆議院)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
長と議会は別々に住民から選ばれる
自治体の長と議会議員は住民が直接選ぶ。議会は条例・予算等を議決し、長は自治体を代表し事務を管理執行して予算を調製・執行する。
- 対象
- 憲法93条、地方自治法89・96・147–149条
- 条件
- 普通地方公共団体の基本構成。
- 例外・限界
- 教育委員会等の別執行機関の全権限を長へ集約しない。首相選出の議院内閣制と同じとしない。
地方自治法(2026年9月24日施行版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000067_20260924_506AC0000000065
日本国憲法(衆議院掲載本文)(衆議院)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm
議決への異議は再議の手続で扱う
長は議会議決に異議がある場合、原則10日以内に理由を示し再議に付せる。同じ議決の再議決で確定し、条例・予算の同じ議決には出席議員2/3以上の同意が必要。
- 対象
- 地方自治法176条1–3項
- 条件
- 条例・予算は送付を受けた日、それ以外は議決日が起算点。
- 例外・限界
- 法に特別の定めがある場合、法令違反等の場合の再議・審査は別扱い。
地方自治法(2026年9月24日施行版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000067_20260924_506AC0000000065
不信任は政策案の否決より重い手続
初回不信任には議員数2/3以上出席かつ出席者3/4以上同意が必要。長は通知から10日以内に議会解散可能。解散しなければ期間経過時、解散後再度不信任なら通知時に失職する。
- 対象
- 地方自治法178条
- 条件
- 解散後の再不信任は議員数2/3以上出席・出席者過半数同意。
- 例外・限界
- 予算・条例の否決だけで長が自動失職とはしない。
地方自治法(2026年9月24日施行版)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/322AC0000000067_20260924_506AC0000000065