財政と暮らし
排出規制と炭素価格は、どう使い分ける?
規制は排出してよい量や行為を定め、炭素税などの価格の仕組みは、排出する費用を変えて削減を促します。排出枠取引は、全体の上限と取引価格を組み合わせる方法です。対象となる排出、削減費用、監視や遵守の条件を踏まえて比べる必要があります。
基本の用語
外部費用は、排出する側の取引だけでは負担されない周囲の損失です。排出を減らすために必要な費用と、被害を減らす便益は別の数字です。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 市場があっても、公共サービスはなぜ必要?公共財・外部性と制度の選択
量に上限を置く方法と、排出に費用を付ける方法
排出する企業の費用に周囲への損失が十分反映されていなければ、企業にとっての判断と社会全体の判断はずれる場合があります。環境政策は、この外部費用にどう向き合うかという問いから考えられます。
数量を定める規制では、排出の上限や禁止する行為などをルールにします。対象に含まれる行為を抑えるため、どの企業や排出源を対象にし、どう測定して守らせるかが重要です。上限を法律に書くことだけで、実際の遵守が確認できるわけではありません。
炭素税のような価格の仕組みでは、排出に費用を付けます。削減する費用と、排出を続ける費用を比べることで、行動が変わる経路を考えます。ただし、税率を決めたことから、実際の削減量が必ず一つに決まるわけではありません。
量を直接制限するか、価格を通じて行動へ働きかけるかという違いが、比較の出発点です。実際には対象範囲や例外もあり、両者を組み合わせることも考えられます。一つの名前だけで、効果や費用の大きさを順位づけることはできません。
同じ削減量でも、費用の違いがある
企業ごとに技術や設備が違うなら、排出を一単位減らす費用も異なるかもしれません。全企業に同じ量の削減を求める場合と、削減しやすい企業が多く削減する場合では、同じ合計量でも必要な費用が違うという模型を考えられます。
排出枠取引では、政府が全体の排出枠を定め、排出に対応する枠を用意させ、その枠を取引できるようにします。削減費用が高い企業は枠を買い、低い企業は多く削減して枠を売れる場合があります。量の上限と、枠の価格による調整を組み合わせる仕組みです。
競争が働く単純な模型では、削減費用の違いを利用して、合計の削減をより小さい費用で分担できる可能性があります。しかし、これは、排出を測り枠の不足を取り締まれること、取引が機能することなどを前提にした説明です。
枠を売買できることが、無制限に排出してよいことを意味するわけではありません。制度の対象となる合計の枠が上限を形にします。ただし、制度外の排出や、違反が見逃される場合まで自動的に抑えられるわけではないため、計測の範囲と遵守を確認します。
測る仕組みと、負担の配分を確かめる
環境政策の結果を読むには、排出がどの範囲でどれだけ変わったかを確かめます。生産量なども同時に変わるため、制度の導入と排出減少が同時だっただけで、すべてを政策効果とすることはできません。予測と確認した結果も分けます。
費用を最小化する問いと、誰が負担するかという問いは別です。税収の使い道や排出枠の配分、価格の変化などで、家計や企業への影響が変わり得ます。削減できたことだけで公平さの評価まで決まるわけではありません。
どの排出を抑えるのか、量の目標か価格の条件か、監視はどう行うのか、負担は誰に届くのかを示して比較します。ここでの模型は手段の違いを考えるもので、現在の日本の制度の成績や最適な炭素価格を示すものではありません。
削減量の目標を達成していても、そのための費用や負担の偏りを評価する問いは残ります。逆に、低い費用で一部を削減できても、目標全体に届いたとは限りません。量、費用、負担の配分をそれぞれ示して、何を改善したと言えるのかを考えます。
削減費用1,000円と5,000円の企業
架空の二企業で、排出を一単位減らす費用がA社は1,000円、B社は5,000円だとします。排出を続ける費用を一単位2,000円の税と仮定すると、ほかの条件が同じならA社は削減が安く、B社は税を払う方が安いという比較になります。
税によって同じ費用を付けても、両者の行動は同じとは限りません。この例は単純な費用比較で、実際の排出量、税の価格転嫁、他の規制、設備更新などを省いています。2,000円を適切な税額と判断したものではありません。
考えるときの注意点
- 政策手段の理論模型です。日本の制度の実績、気候予測、最適税率を示していません。
持ち帰る見方
- 規制は量や行為、価格の仕組みは排出費用を変える。
- 排出枠取引は上限と価格を組み合わせる。
- 測定、遵守、対象範囲、負担配分を確認する。
次に広がる疑問
- 外部費用を価格に反映しないと何が起きる?
- 税を納める企業が、負担を全部引き受ける?
順番に読んでいる方へ
出典
The Economy 1.0 Unit20: Economics of the environment(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/20.html
確認日:2026-10-04
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
量に上限を置く方法と、排出に費用を付ける方法
環境外部費用への政策には数量規制と価格を変える課税等がある。
- 対象
- Unit20.5/Unit12.3
- 条件
- 排出測定/遵守を前提とする模型。
- 例外・限界
- 特定制度の現在効果や最適価格不使用。
The Economy 1.0 Unit20: Economics of the environment(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/20.html
The Economy 1.0, Unit 12: Markets, efficiency, and public policy(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/12.html
同じ削減量でも、費用の違いがある
排出枠取引は上限と市場価格を組み合わせ、費用差に応じた削減分担を考える。
- 対象
- Unit20.5 captrade/Figure20.16
- 条件
- 競争市場、削減可能、監視遵守。
- 例外・限界
- 全条件で効率的/実績と断定しない。
The Economy 1.0 Unit20: Economics of the environment(CORE Econ)https://books.core-econ.org/the-economy-v1/book/text/20.html