財政と暮らし

公共事業の便益と費用は、どう比べる?

事業を行う場合と行わない場合を比べ、追加の便益と費用を同じ時点の価値にそろえます。費用便益比などは投資効率性の判断材料です。金額へ換算しにくい効果や、誰が便益を得るかもあり、一つの比率だけで事業の価値全部は決まりません。

基本の用語

便益は事業で得る改善を評価したものです。費用便益分析の便益は、役所へ入る現金や施設の売上げと同じとは限りません。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

比べる相手は「その事業を行わない場合」

費用便益分析は、事業を実施する場合と実施しない場合の差を見る方法です。国土交通省の指針では、こうした比較によって事業全体の投資効率性を評価します。工事の前と後をそのまま比べる方法とは違い、事業がなくても起きる変化を比較相手へ含める考え方です。

費用には建設時だけでなく、評価期間に必要になる維持管理なども含めます。便益には時間の節約なども考えられます。誰にどんな変化が起こり、どの期間に発生するかをそろえ、同じ効果を別の名目で重複して数えないようにします。

将来の便益と今の費用を単純に足すと、時点の違いを見落とします。そこで将来の金額を現在価値へ換算します。割引率が正であれば、同じ額でも遠い将来ほど現在価値は小さくなります。どの割引率を使うかは、遠い将来に便益が生じる事業の評価へ影響します。

便益比を読むときには、費用の項目をどちら側へ計上したかにも注意します。維持運営の費用を費用側へ足す方法と、便益側から差し引く方法では、比率の見え方が変わり得ます。指針も、事業間を比較する際に費目の扱いを確かめる必要を示しています。

数字にできる便益だけで、すべてを決めない

代表的な指標の一つがB/C、費用便益比です。現在価値へそろえた便益を費用で割り、単位費用当たりの便益を見ます。純現在価値は便益から費用を引いた額を見るので、比率とは問いが異なります。小規模で高い比率の事業と、大規模で大きな純便益の事業を単純に同じ順位にはできません。

国土交通省の指針では、費用便益分析の結果を事業採択の判断材料の一つとしています。投資効率性だけでなく、波及的な影響や実施環境なども総合的に評価する考え方です。数値が一つあれば、政策の選択を全部自動的に決められるという位置づけではありません。

貨幣換算が難しい効果にも、可能な範囲で定量的・定性的な評価を行います。また、金額にできることと公平な配分になることは別です。全体の便益が費用を上回っても、負担する住民と便益を得る住民が違う場合には、その関係を別に示す必要があります。

すでに始めた事業を続けるかという問いでは、これから追加で必要になる費用と、これから生じる便益が大切です。国土交通省の再評価でも、残る事業と事業全体の投資効率性を分けて考えます。過去に使った額だけを理由に、続行の価値を判断しません。

前提を変えても、結論が保たれるかを見る

利用者数、建設費、維持費などの想定には不確かさがあります。想定を変えて評価がどの程度動くかを調べるのが感度分析です。一つの予測だけでなく、需要が小さい場合や費用が増える場合にも結論が保たれるかを見ます。

記事や報道でB/Cを読むときは、評価期間、割引率、含めた便益と費用、予測の前提を確かめます。「1を超えた」という結果だけより、どの条件で超えたかが判断に役立ちます。便益の金額は、その全額が自治体へ税収として戻るという意味でもありません。

評価書に含まれない効果がある場合、数字の表だけでなく、その理由も読みます。測りにくいからゼロという扱いと、効果がないと確認したことは違います。反対に測りにくい便益を理由に、どんな費用でも正当化できるわけでもありません。

便益の想定が変わると、比率も変わる

同じ時点の現在価値へそろえた架空の費用が100、便益が130なら、B/Cは1.3、純便益は30です。しかし、利用の想定を変えて便益が90になれば、費用が100のままでもB/Cは0.9になります。

この単純例は、前提が評価に影響することを示しています。実際の事業では計上する効果や評価期間、代替案も考慮します。B/Cが1.3の事業を実測したものでも、0.9なら必ず中止すべきという判断ルールを示したものでもありません。

考えるときの注意点

  • 国交省の費用便益分析の基本です。特定事業の採否や唯一の正しい割引率を判断しません。

持ち帰る見方

  • 事業ありとなしの差を比べる。
  • 時点、費目、重複をそろえて現在価値化する。
  • 比率は判断材料であり、前提と配分も確かめる。

次に広がる疑問

  • 公共投資の維持費はなぜ重要?
  • 予算を使った額と効果の大きさはどう違う?

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出典

  • 公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編)令和7年9月(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/250918_shishin/shishin/shishin250918.pdf

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

比べる相手は「その事業を行わない場合」

費用便益分析は事業あり/なしを比べ、費用便益を現在価値化する。

対象
指針p3-6,12
条件
国交省指針の基本。
例外・限界
将来予測と価値換算の仮定に依存。
  • 公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編)令和7年9月(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/250918_shishin/shishin/shishin250918.pdf

数字にできる便益だけで、すべてを決めない

B/C等は総合的な事業評価の判断材料で、貨幣換算困難な効果や感度分析も重要。

対象
指針p5,13-14,37-42
条件
評価方法・条件を併記。
例外・限界
B/Cだけを全事業の自動採否ルールにしない。
  • 公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編)令和7年9月(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/250918_shishin/shishin/shishin250918.pdf