経済の基礎
部品会社と販売会社が、それぞれ上乗せすると何が起きる?
部品会社が価格へ利益を上乗せし、販売会社もその価格を費用として上乗せすると、最終価格が高くなり、売る量が少なくなる模型があります。二重限界化と呼ばれる問題です。各社の利益を別々に最大にすることと、前後の工程全体の利益を最大にすることは一致しない場合があります。
基本の用語
ここでは前後の工程に市場支配力があり、引渡価格を一個あたりの料金で決める模型です。実際の流通手数料や、合併の効果を測った説明ではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 独占企業は好きなだけ値上げできる?市場を定め、近い代替品があるかを見る。
それぞれの最適な価格が、全体の最適とは限らない
最終商品が売れるかは、部品を造る費用だけでなく、消費者へ提示する価格にも関わります。部品会社は販売会社への引渡価格を上げれば一個あたりの利益が増えますが、販売会社が買う数量が減ることも考えます。販売会社はその引渡価格を費用とし、さらに自分の利益を得る価格を選びます。
それぞれが合理的に利益を最大にしていても、相手側の利益を同じ重みで数えるとは限りません。このため、全体で一つの価格と数量を選ぶ場合に比べ、最終価格が高く、数量が小さくなることがあります。「会社が二社なら費用も必ず二倍」という話ではなく、前後工程の値付けの誘因が重なる問題です。
上流の上乗せが、下流の費用になる
部品の引渡価格には、造るための追加費用と、部品会社の上乗せが含まれます。販売会社にとってはその合計が追加の仕入費用です。上流の利益部分まで、下流が最終商品の追加費用として扱うので、全体として売る量をさらに絞る方向へ働きます。これを二重限界化と呼びます。
工程全体で考えるなら、内部の請求は一方の売上であると同時に他方の費用です。両者を合計すると、その内部支払は相殺されます。部品を造る実際の費用までなくなるのではありません。最終顧客からの収入と、前後工程に必要な実際の費用を比べて、全体の数量を選べる点が違います。
架空例の需要では、引渡価格をw円とすると、下流が選ぶ数量は(100−w)÷2です。上流はその数量に一個あたりの利益w−20を掛けて比較し、w=60を選ぶ設定になります。下流だけを見ると60円は仕入費用ですが、全体から見ると実際の費用20円との差40円は上流の利益です。この同じ40円が、数量を決める場面でどう扱われるかが重要です。二社の合計利益を求めるときには、内部支払をもう一度費用へ足さないようにします。
統合以外にも、価格の調整方法がある
二重限界化は、価格の調整方法を工夫する理由の一つです。MITの講義は、部門間の振替価格を調整し、全体にとっての追加費用を反映させる考え方を扱っています。一緒に所有するだけで、社内の各部門が自由に利益を最大にすれば、同じ問題が残ることも模型の対象になります。
また、統合には管理費や外部の競争への影響もあります。二重限界化を弱める便益だけで、特定の合併が望ましいとも価格が必ず下がるとも言えません。前後の取引条件を変えられるか、他の会社から買えるかなども比較します。会計で内部売上を消すことと、実際の価格設定を調整することも別の作業です。
- 各社が個別に選ぶ
最終価格80円・20個・合計利益1,200円
- 全体で調整する
最終価格60円・40個・合計利益1,600円
需要は価格=100−販売量、実際の追加費用は一個20円。
架空の部品と商品で、二つの値付けを比べる
商品の需要を「価格=100−販売量」、部品一個の製造費を20円とし、商品一個に部品一個が必要で、他の費用はないとします。この模型で各社が別々に利益を最大にすると、引渡価格60円、最終価格80円、販売量20個になります。部品会社の利益は800円、販売会社は400円で、合計1,200円です。
全体で価格を調整する場合は、最終価格60円、販売量40個となり、利益は売上2,400円−製造費800円=1,600円です。どちらも同じ需要と製造費です。内部の上乗せを実際の製造費と区別することで、価格と数量が変わる設定を示しています。
持ち帰る見方
- 前後工程の個別の利益と、全体の利益を区別する。
- 内部の上乗せが下流の費用へ入るかを見て、統合や契約の効果は他の費用も含めて比べる。
次に広がる疑問
- 部門の利益を評価するとき、内部取引の価格をどう決めるだろう?
順番に読んでいる方へ
出典
Transfer Pricing and Vertical Integration, MIT 15.010 Fall 2004(MIT OpenCourseWare/15.010 course staff)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/4678c1744e47662b9b0c358f82760c5e_trans_vert_int.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
それぞれの最適な価格が、全体の最適とは限らない
前後工程が個別の利益だけを最大化すると、引渡価格の上乗せを下流が費用として扱い二重限界化が起きうる。
- 対象
- PDF pp.14–16 Divisional Profits and Evaluation / Double Marginalization / Back to Example、pp.20–22 Reasons・Costs・Take Away Points
- 条件
- 前後工程が個別に利益最大化し、下流への引渡価格を費用として扱う。市場支配力と線形需要の架空例。
- 例外・限界
- 講義の数値例に173.7/173.1等の印字不整合があるため転載不採用。独自例で再計算。統合の競争影響や費用は別。
Transfer Pricing and Vertical Integration, MIT 15.010 Fall 2004(MIT OpenCourseWare/15.010 course staff)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/4678c1744e47662b9b0c358f82760c5e_trans_vert_int.pdf
上流の上乗せが、下流の費用になる
前後工程を全体で最適化すると内部振替の収入・費用は相殺され、製造の追加費用を基礎に数量を選べる。
- 対象
- PDF pp.14–16 Divisional Profits and Evaluation / Double Marginalization / Back to Example、pp.20–22 Reasons・Costs・Take Away Points
- 条件
- 前後工程が個別に利益最大化し、下流への引渡価格を費用として扱う。市場支配力と線形需要の架空例。
- 例外・限界
- 講義の数値例に173.7/173.1等の印字不整合があるため転載不採用。独自例で再計算。統合の競争影響や費用は別。
Transfer Pricing and Vertical Integration, MIT 15.010 Fall 2004(MIT OpenCourseWare/15.010 course staff)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/4678c1744e47662b9b0c358f82760c5e_trans_vert_int.pdf
統合以外にも、価格の調整方法がある
講義は振替価格の調整と統合の便益・費用を分け、統合だけが解決とも現実の合併効果ともしていない。
- 対象
- PDF pp.14–16 Divisional Profits and Evaluation / Double Marginalization / Back to Example、pp.20–22 Reasons・Costs・Take Away Points
- 条件
- 前後工程が個別に利益最大化し、下流への引渡価格を費用として扱う。市場支配力と線形需要の架空例。
- 例外・限界
- 講義の数値例に173.7/173.1等の印字不整合があるため転載不採用。独自例で再計算。統合の競争影響や費用は別。
Transfer Pricing and Vertical Integration, MIT 15.010 Fall 2004(MIT OpenCourseWare/15.010 course staff)https://ocw.mit.edu/courses/15-010-economic-analysis-for-business-decisions-fall-2004/4678c1744e47662b9b0c358f82760c5e_trans_vert_int.pdf