経済の基礎

平均だけを比べず、どの金額でも有利なくじを見分けられる?

どの金額を境にしても、低い結果になる確率が同じか小さいくじなら、金額が多いほどよい全ての期待効用評価で、そのくじは劣りません。これが第一階確率優越です。平均が高いだけの場合や、分布が交差する場合には、この共通の順位は決まりません。

基本の用語

累積確率は、ある金額以下になる確率です。ここでは同じ時点の金額と既知の確率分布を比べます。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

どの境目でも、低い結果に落ちる確率を比べる

くじAとBの平均金額だけでは、どちらに低い結果が多いかは分かりません。そこで、0円以下、1,000円以下、5,000円以下といった全ての境目について、それ以下になる確率を比べます。確率の累積分布は、この情報を一つの関数で表します。

Aの累積確率が全ての境目でB以下なら、AはBを第一階で確率的に優越すると言います。Aの方が必ず大きい金額を一回で引けるという意味ではありません。低い結果の側へ落ちる確率を、全ての境目で同じか小さくする分布の比較です。

境目が一つだけ有利でも十分ではありません。例えば1,000円未満の確率が低くても、もっと高い額の境目では不利かもしれません。優越を確かめるには、結果の候補が並ぶ全ての範囲で累積確率を調べます。

離散的なくじなら、金額候補を低い順に並べ、そこまでの確率を足して比べると確認できます。金額がない区間では累積確率は変わらないので、候補の間も同じ大小です。最高額だけを並べる比較では、低い結果の確率を見落とします。

効用の曲がり方を決めなくても、順位がそろう

期待効用は、各金額の効用をその確率で重み付けします。第一階優越があると、金額が増えるほど効用が下がらない全ての効用関数で、Aの期待効用はB以上になります。具体的な効用の曲がり方を一つに決めなくても、評価の弱い順位が一致します。

リスク回避、リスク中立、リスク愛好的といった曲がり方の違いがあっても、金額が多いほどよいという条件を満たせば、この比較は共通です。平均を比較するリスク中立も含むため、第一階優越のある方の平均は低くありません。

ただし、全員が厳密にAを好むとは限りません。増える額の範囲に無関心な効用なら、同じ評価になることもあります。また金額以外の結果や受取時点が違えば、同じ金額尺度の比較を作り直します。

分布が交差すれば、好みの情報が必要になる

累積分布が交差すると、ある境目ではAが有利で、別の境目ではBが有利です。その場合は第一階優越で順序を付けられません。どちらの低い結果を避けたいか、どの額以上を得ることを重視するかといった効用の情報が必要になります。

例えば、2,000円以上を得ることだけを重視する人と、少なくとも500円を確実に得たい人では、同じ二つのくじへの順位が違う場合があります。平均が高いという情報で、一方の人の評価をもう一方へ押し付けることはできません。

分布を推定したデータで比較する場合は、その推定の誤差も別の問題です。ここでの定理は確率を知っている条件の評価であり、有限の観測から真の分布を完全に知ったことを保証しません。全ての境目を比較する見方と、確率の確認を分けます。

架空の例金額の境目ごとの累積確率
  • 0〜1,000円未満

    Aは0、Bは0.5。Aが低い結果へ落ちにくい。

  • 1,000〜2,000円未満

    AもBも0.5。

  • 2,000〜3,000円未満

    Aは0.5、Bは1。全域でAの累積がB以下。

Aは半々で1,000・3,000円、Bは半々で0・2,000円。境目以下の確率です。

累積確率を比べる架空のくじ

Aは半々で1,000円か3,000円、Bは半々で0円か2,000円です。0〜1,000円未満ではAの累積確率0、Bは0.5。1,000〜2,000円未満では両方0.5。2,000〜3,000円未満ではA0.5、B1です。全ての境目でAがB以下となります。

一方、確実な1,000円と、半々で0円か3,000円のくじは分布が交差します。後者の平均は1,500円ですが、全ての金額が有利という比較ではありません。

持ち帰る見方

  • 第一階優越は、全ての金額で累積確率を比べる。
  • 効用が金額に対して非減少なら、評価の弱い順位がそろう。
  • 平均の高さだけでは、分布全体の優越は決まらない。

次に広がる疑問

  • 効用の曲がり方でくじの順位が変わる場合は?
  • 確率自体が分からない場合はどう違う?

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出典

  • Comparing Risky Prospects — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/3fa37c38172ec1fd120d909b5ea988bd_MIT14_121F15_7S.pdf

    確認日:2026-10-07

本文の出典・補足

どの境目でも、低い結果に落ちる確率を比べる

第一階確率優越では、どの金額xでも優越する分布の累積確率が比較相手以下である。

対象
第一階確率優越を閾値ごとの累積確率で読み、金額が多いほどよい全ての期待効用評価に共通する順位を確かめる。
条件
比較する結果は同じ時点の金額、確率分布は既知。期待効用評価が存在し、効用は金額に対して非減少。
例外・限界
累積分布が交差すると第一階優越で順序は決まらない。平均や一つの閾値だけでは優越を証明しない。将来の実現値を保証するものではない。
  • Comparing Risky Prospects — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/3fa37c38172ec1fd120d909b5ea988bd_MIT14_121F15_7S.pdf

効用の曲がり方を決めなくても、順位がそろう

第一階確率優越は、非減少効用を持つすべての期待効用評価者が同じ弱い順序を付けることと同値である。

対象
第一階確率優越を閾値ごとの累積確率で読み、金額が多いほどよい全ての期待効用評価に共通する順位を確かめる。
条件
比較する結果は同じ時点の金額、確率分布は既知。期待効用評価が存在し、効用は金額に対して非減少。
例外・限界
累積分布が交差すると第一階優越で順序は決まらない。平均や一つの閾値だけでは優越を証明しない。将来の実現値を保証するものではない。
  • Comparing Risky Prospects — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/3fa37c38172ec1fd120d909b5ea988bd_MIT14_121F15_7S.pdf

分布が交差すれば、好みの情報が必要になる

優越の条件が破れる閾値があれば、その金額以上を得ることを重視する効用で別の分布を好むことがある。

対象
第一階確率優越を閾値ごとの累積確率で読み、金額が多いほどよい全ての期待効用評価に共通する順位を確かめる。
条件
比較する結果は同じ時点の金額、確率分布は既知。期待効用評価が存在し、効用は金額に対して非減少。
例外・限界
累積分布が交差すると第一階優越で順序は決まらない。平均や一つの閾値だけでは優越を証明しない。将来の実現値を保証するものではない。
  • Comparing Risky Prospects — MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/3fa37c38172ec1fd120d909b5ea988bd_MIT14_121F15_7S.pdf