経済の基礎

細かい契約で決めていない場面は、設備の持ち主が決める?

細かな利用を契約で決めていない模型では、持ち主が設備や生産物の残る利用を決めます。その権限を残余コントロール権として考えると、所有を移すことで誰の交渉上の選択肢と投資の取り分が変わるかを比べられます。一方の問題を抑えて、他方の努力を弱める場合もあります。

基本の用語

専用の設備へ先に投資してから条件を交渉すると、投資の得を全部取り戻せない場合があります。ここではその不足に加えて、所有者が何を拒否し、何に使えるかを追います。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

書いていない利用の選択を、誰が持つか

契約で利用の細部を決めていない資産所有の模型では、所有する側が資産と生産物をどこで使うかを決める権限を持つ。ここではその残る利用判断を残余コントロール権として整理する。

残余は、契約で既に約束したことを自由に破ってよいという意味ではありません。模型で先に決めなかった資産の使い方を、誰が選べるかという整理です。法律や既存の契約の下で、実際の所有者が無制限の権限を持つという主張ではありません。

例えば専用機械でできた物を、特定の買い手へ渡すか、別の用途へ売るかという判断を考えます。設備の名義を変えるだけでなく、その利用を止められる側が変わると、後から交渉する際の出発点も変わります。

所有があると、代替使用を選べる

供給者が機械と生産物を所有する場合、買い手との取引をやめ別の用途へ売る選択肢を持ち、その代替価値は後の交渉に関わる。

供給者が所有する場合、取引が不成立なら別の用途へ回せます。元の買い手にとっての価値をQ、代替使用の価値をRとし、QがRより高いと置きます。交渉でその追加価値を半分ずつ分ける模型なら、支払はR+(Q−R)/2です。

したがって供給者は、元の買い手の価値を増す行動だけでなく、代替使用の価値を増す行動からも交渉上の得を得ます。何を改善すれば自分へ取り分が戻るかは、製品の全体価値だけでなく不合意後の利用にも左右されます。

所有を移すと、相手の誘因も移る

買い手が機械と生産物を所有し代替使用を禁じられる模型では、供給者の代替使用を使った交渉を抑えられる一方、別の契約を省いたままなら供給者が価値を高める努力の誘因は弱くなる。

買い手が所有して外部への販売を止められるなら、供給者は同じ代替案を使って支払を引き上げられません。買い手には利用を確保しやすくなる面があります。一方で、供給者が改善しても固定された報酬に反映されなければ、努力の費用だけが残ります。

以下の例では細かな成果報酬や、将来の取引で努力を支える約束を省きます。その条件での誘因の弱まりです。所有を変えた後に別の契約を組み合わせる場合まで、供給者が必ず何も努力しないという結論にはしません。

どちらの準備を支え、どちらを弱めるか比べる

資産の所有を一方へ移して一つのホールドアップ問題を解決しても、別の側の誘因を弱め別の問題を作りうる。所有の判断では、双方の代替使用と価値を増やす行動の取り分を比較する。

供給者所有で価値の増分を半分ずつ取ると、供給者の改善にも買い手の準備にも、得の半分しか戻らないとします。買い手所有と固定報酬へ変えると、買い手は準備の増分を得やすくなり、供給者は改善の増分を得にくくなります。

買い手側の準備を強めたいのか、供給者側の品質改善を強めたいのかを比べます。統合するかどうかを考える前に、書けない行動は何か、不合意なら誰が利用できるか、どちらの投資の増分が誰へ戻るかを並べると、所有の交換関係を具体化できます。

条件を置いた具体例

架空の例

代替価値をゼロとし、供給者所有では追加の価値を半分ずつ取ると置きます。供給者の改善は価値20を増し費用8、買い手の準備は価値20を増し費用12です。別々に他方の行動を固定して比べます。

供給者所有では改善の取り分10は費用8を上回り、買い手の準備の取り分10は費用12に届きません。買い手所有で供給者の報酬を固定すると、改善の追加報酬は0、買い手の準備の取り分は20になります。所有が一方を支えて他方を弱める仮の計算です。

持ち帰る見方

  • 細かな利用を契約で決めていない模型では、持ち主が設備や生産物の残る利用を決めます。
  • 資産の所有を一方へ移して一つのホールドアップ問題を解決しても、別の側の誘因を弱め別の問題を作りうる。所有の判断では、双方の代替使用と価値を増やす行動の取り分を比較する。

次に広がる疑問

  • 部品を他社から買う会社と、自社で作る会社は何が違う?
  • 交渉で強いのは、相手を説得できる人だけ?

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出典

  • Lecture Note3: Hold-Up (May Be Your Friend), MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%203%20S10.pdf

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

書いていない利用の選択を、誰が持つか

契約で利用の細部を決めていない資産所有の模型では、所有する側が資産と生産物をどこで使うかを決める権限を持つ。ここではその残る利用判断を残余コントロール権として整理する。

対象
契約を省いた資産所有・利用選択と取引の模型。
条件
機械の所有者が生産物と代替使用をコントロールする簡略模型。法律が禁止する行為への自由な権限とはしない。
例外・限界
所有で解決する問題が、別の当事者の努力誘因を弱めうる。詳細な労働・会社・知財法や、すべての所有形態に同じ結果を断定しない。
  • Lecture Note3: Hold-Up (May Be Your Friend), MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%203%20S10.pdf

所有があると、代替使用を選べる

供給者が機械と生産物を所有する場合、買い手との取引をやめ別の用途へ売る選択肢を持ち、その代替価値は後の交渉に関わる。

対象
契約を省いた資産所有・利用選択と取引の模型。
条件
機械の所有者が生産物と代替使用をコントロールする簡略模型。法律が禁止する行為への自由な権限とはしない。
例外・限界
所有で解決する問題が、別の当事者の努力誘因を弱めうる。詳細な労働・会社・知財法や、すべての所有形態に同じ結果を断定しない。
  • Lecture Note3: Hold-Up (May Be Your Friend), MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%203%20S10.pdf

所有を移すと、相手の誘因も移る

買い手が機械と生産物を所有し代替使用を禁じられる模型では、供給者の代替使用を使った交渉を抑えられる一方、別の契約を省いたままなら供給者が価値を高める努力の誘因は弱くなる。

対象
契約を省いた資産所有・利用選択と取引の模型。
条件
機械の所有者が生産物と代替使用をコントロールする簡略模型。法律が禁止する行為への自由な権限とはしない。
例外・限界
所有で解決する問題が、別の当事者の努力誘因を弱めうる。詳細な労働・会社・知財法や、すべての所有形態に同じ結果を断定しない。
  • Lecture Note3: Hold-Up (May Be Your Friend), MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%203%20S10.pdf

どちらの準備を支え、どちらを弱めるか比べる

資産の所有を一方へ移して一つのホールドアップ問題を解決しても、別の側の誘因を弱め別の問題を作りうる。所有の判断では、双方の代替使用と価値を増やす行動の取り分を比較する。

対象
契約を省いた資産所有・利用選択と取引の模型。
条件
機械の所有者が生産物と代替使用をコントロールする簡略模型。法律が禁止する行為への自由な権限とはしない。
例外・限界
所有で解決する問題が、別の当事者の努力誘因を弱めうる。詳細な労働・会社・知財法や、すべての所有形態に同じ結果を断定しない。
  • Lecture Note3: Hold-Up (May Be Your Friend), MIT15.903(Robert Gibbons / MIT(著者公開教材、2010提供版))https://web.mit.edu/rgibbons/www/903%20LN%203%20S10.pdf