経済の基礎
満足度が10点から20点になったら、幸せは二倍?
確実な選択の効用の点数は、好みの順番を表すために付けられます。20点の案を10点の案より好むことは表せても、幸せが二倍という意味にはなりません。順番を保ったまま点数を付け直せるからです。
基本の用語
効用は選択肢への評価を数で表す模型です。ここでは、結果が確実な案を一人が比べる場合を考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 買った物の記録から、好みの矛盾を調べられる?買った物だけでは好みは分かりません。
点数は、好みの順番を表す
休日に海へ行く案を山へ行く案より好むなら、海の点数を高く付ければ、その順番を数で表せます。海を20点、山を10点と置くことも、海を101点、山を100点と置くこともできます。同じ点数なら、模型ではどちらにも優劣を付けていません。
このように順番を表す尺度を、序数的な効用と呼びます。選択肢の中から最大の点数の案を選ぶ説明には、大小関係が必要です。一方、点数の単位が喜びの何グラムを表すか、ゼロが幸福の完全な欠如か、といった意味は、その定義には含まれません。
選好を一つの数で表すこと自体にも条件があります。例えばAをBより、BをCより、CをAより厳密に好む循環があると、その全てを通常の数の大小で表せません。点数を付ければどんな選択も説明できる、という仕組みではないのです。
順番を保っても、差と倍率は変わる
点数に100を足すと、20と10は120と110になります。大小関係は変わりませんが、二倍だった比率は約1.09倍に変わります。点数を二乗する場合も、もとの点数が正なら20と10は400と100となり、比率は四倍です。
一般には、元の数が大きいほど変換後の数も厳密に大きくなる「厳密な増加変換」なら、選好の順番を保てます。差や倍率を変えても同じ選択を表せる以上、序数効用の数値だけから「この案は十倍うれしい」と判断することはできません。
ただし、何でも変換してよいわけではありません。全てを同じ値に丸めれば元の厳密な好みを失います。大小を逆転させる変換も別の選好になります。保存するのは差の大きさではなく、元の選択肢間の全ての順位です。
同じ三案を比べるなら、点数を付け直した後にも、全ての二案の比較を確かめます。海と山だけの大小を保っていても、山と家の順番が変われば同じ選好ではありません。点数差を測らずに済むことと、比較する情報を省いてよいことは別です。
くじや人どうしの比較には、別の条件が要る
くじを比べる期待効用は、各結果の効用を確率で重み付けして足します。その計算では、確実な案の順番だけでなく効用値の間隔も関わります。期待効用の尺度には別の条件があり、確実な選択で使える任意の増加変換を、そのままくじの評価に使うことはできません。
人どうしの比較も別です。Aさんがある案へ100点、Bさんが同じ案へ10点を付けても、Aさんの幸せが十倍だとは言えません。Aさんだけ点数を付け直しても、各人の確実な選択は変わらないからです。共通の測り方や比較の根拠が追加で必要になります。
評価表を読むときは、数が順位を表すのか、差に意味がある測定値なのかを先に確かめます。効用最大化という言葉は、本人の選好に最も合う案を選ぶ整理であり、その数値が社会全体の幸福を直接測ったことを意味しません。
- 最初の尺度
海20・山10・家5。海と山の比率は2。
- 100を足した尺度
海120・山110・家105。比率は約1.09。
- 保存されるもの
いずれも海、山、家の順番。
確実な選択を一人の同じ選好で比べ、全ての順位を保存します。
点数を付け直す架空の休日
海20、山10、家5という点数と、海120、山110、家105という点数は、海→山→家という同じ順位です。海と山の比率は前者で2、後者で約1.09ですが、最大の案を選ぶ結果は海のままです。
比率が変わっても同じ選択を表すことが、序数尺度から幸福の倍率を読めない理由です。この計算は心理的な満足の実測ではありません。
持ち帰る見方
- 確実な選択の効用は、まず順位を表す。
- 順番を保つ変換でも、点数の差や倍率は変わる。
- くじの平均や人どうしの比較には、別の尺度条件が必要。
次に広がる疑問
- 満足が元へ戻るための補償額なら測れる?
- くじの評価では、効用の間隔がなぜ関わる?
順番に読んでいる方へ
出典
Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
点数は、好みの順番を表す
効用関数は、一方の選択肢をもう一方以上に好むことを、効用値が以上であることに対応させて表す。
- 対象
- 確実な選択の序数効用と単調変換を扱い、順位が同じでも点数差・比率・人どうしの幸福比較が不変でないことを数例で確かめる。
- 条件
- 確実な選択肢の順序を同じ一人の選好で表す。変換は厳密に増加する。
- 例外・限界
- 期待効用のくじ比較は任意の単調変換で不変とは限らず、正のアフィン変換の尺度。序数効用だけから幸福比率や人間間比較を作らない。
Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf
順番を保っても、差と倍率は変わる
確実な選好を表す効用関数に厳密に増加する変換を施しても、同じ選好を表す。
- 対象
- 確実な選択の序数効用と単調変換を扱い、順位が同じでも点数差・比率・人どうしの幸福比較が不変でないことを数例で確かめる。
- 条件
- 確実な選択肢の順序を同じ一人の選好で表す。変換は厳密に増加する。
- 例外・限界
- 期待効用のくじ比較は任意の単調変換で不変とは限らず、正のアフィン変換の尺度。序数効用だけから幸福比率や人間間比較を作らない。
Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf
くじや人どうしの比較には、別の条件が要る
序数的な選好の表現と、その数値が持つ差や比率を区別する。
- 対象
- 確実な選択の序数効用と単調変換を扱い、順位が同じでも点数差・比率・人どうしの幸福比較が不変でないことを数例で確かめる。
- 条件
- 確実な選択肢の順序を同じ一人の選好で表す。変換は厳密に増加する。
- 例外・限界
- 期待効用のくじ比較は任意の単調変換で不変とは限らず、正のアフィン変換の尺度。序数効用だけから幸福比率や人間間比較を作らない。
Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf