経済の基礎

安全を最優先する好みも、一つの点数で表せる?

第一条件をどんな差でも絶対に優先する好みは、連続した候補全体では一つの実数の点数で表せない場合があります。有限の候補へ順位点を付けることとは分けます。

基本の用語

選好は案どうしの好みの順序です。効用関数は、その順序と数の大小を対応させます。点数を付けられること自体にも、選択肢の集合と順序に関する条件があります。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

まず第一条件だけを見る

「まず安全性を比べ、全く同じなら便利さを比べる」という順序を考えます。安全性が少しでも高い案を選び、便利さの差では逆転させません。このように第一の属性を先に比べ、同点のときだけ第二の属性へ進む好みを、辞書式選好と呼びます。辞書で先の文字から順に比べるような関係です。

安全を大切にするという日常の表現だけでは、この模型の条件は決まりません。少しの安全性の違いなら大きな不便を避けたい人は、第一条件を絶対に優先しているわけではありません。絶対優先と、非常に大きな重みを付ける判断を分けるのが要点です。

比べる属性は模型で指定します。安全性の数字が現実にどれだけ確かかも別の問いです。ここで順序の性質を調べることから、特定の設備や行動が本当に安全だとは分かりません。

有限の大きな重みでは足りない

点数を「安全性×100万+便利さ」とすると、安全性を重く数えられます。しかし安全性が連続して変わるなら、差が100万分の1より小さい二案も選べます。その差の得点より便利さの得点差が大きければ、第一条件の低い案が勝ってしまいます。

係数をさらに大きくしても、もっと小さな第一条件の差を選べるなら同じ問題が残ります。二属性がそれぞれ0から1まで連続して取れる集合の辞書式選好は、全ての順位を一つの実数効用で表せません。「適切な係数をまだ見つけていない」という問題ではありません。

この限界は好みが矛盾しているという意味でもありません。第一条件、次に第二条件という比較は一貫してできます。一貫した順序があることと、無限にある全候補を実数の大小へ置き換えられることは異なります。

候補が有限なら事情が違う

候補が三つしかなければ、辞書式に並べて上から3点、2点、1点と付けられます。有限集合の一貫した合理的順序なら効用表示が可能です。先の結論は、どんな有限の評価表にも点数を付けられない、という意味ではありません。

連続した候補でも、合理的で連続な選好なら効用表示を考えられます。連続性は、近づく候補を比べる順序が極端に飛ばないという条件です。辞書式の絶対優先はこの条件を満たしません。

評価方法を見るときは、候補が有限か、属性の小差をどこまで識別するか、第一条件を他の利点で補えるかを確かめます。「最優先」という言葉を、有限の大きな配点に置き換えてよいかは、その確認から決まります。

架空の例同じ二案を、異なる比較ルールで読む
  • 辞書式

    安全性に差があるのでAを選び、便利さを比較しない。

  • 有限の配点

    安全性×100万+便利さではBの点数が高い。

二属性を連続値で置いた架空比較です。第一条件の差が任意に小さくなることが、有限係数との違いを作ります。

架空の例:大きな配点にも逆転が残る

安全性と便利さは0から1までの模型上の評価値です。Aは安全性0.5000001・便利さ0、Bは安全性0.5・便利さ1とします。辞書式なら安全性が高いAを選びます。

安全性を100万倍して便利さを足す点数では、Aは500000.1、Bは500001です。点数はBを選ぶので辞書式と一致しません。これは実際の事故確率や安全基準の数値ではありません。

持ち帰る見方

  • 絶対優先と大きな配点は同じではない。
  • 有限の候補への順位点と、連続集合全体の効用表示を分ける。

次に広がる疑問

  • 所得が増えても買う量が変わらない好みは?
  • 効用の点数を付け直すと何が保たれる?

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出典

  • Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf

    確認日:2026-10-05

本文の出典・補足

まず第一条件だけを見る

第一条件に差があればそれだけで比較し、同じ場合だけ第二条件を比べるのが辞書式選好である。

対象
第一条件の小差を他条件で一切補えない辞書式順序と、連続的効用表示の限界を具体比較する。
条件
二属性の連続集合[0,1]×[0,1]を辞書式で比較する。有限の候補と連続候補を区別する。
例外・限界
現実の安全選択が常に辞書式だという実証ではない。大きな有限の重みと絶対優先は違う。
  • Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf

有限の大きな重みでは足りない

二属性の連続集合上の辞書式選好は、全ての順位を一つの実数効用関数で表せない。

対象
第一条件の小差を他条件で一切補えない辞書式順序と、連続的効用表示の限界を具体比較する。
条件
二属性の連続集合[0,1]×[0,1]を辞書式で比較する。有限の候補と連続候補を区別する。
例外・限界
現実の安全選択が常に辞書式だという実証ではない。大きな有限の重みと絶対優先は違う。
  • Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf

候補が有限なら事情が違う

有限な選択集合の合理的選好には効用表示があり、連続集合でも連続で合理的な選好なら効用表示がある。

対象
第一条件の小差を他条件で一切補えない辞書式順序と、連続的効用表示の限界を具体比較する。
条件
二属性の連続集合[0,1]×[0,1]を辞書式で比較する。有限の候補と連続候補を区別する。
例外・限界
現実の安全選択が常に辞書式だという実証ではない。大きな有限の重みと絶対優先は違う。
  • Choice, Preference, and Utility — Lecture Slides, MIT 14.121 (2015)(MIT OpenCourseWare / Alexander Wolitzky)https://ocw.mit.edu/courses/14-121-microeconomic-theory-i-fall-2015/b89cf6eb8d2118d015d4e41278ede14a_MIT14_121F15_1S.pdf