国際関係
領海の12海里は、海岸のどの線から測る?
領海の幅は、原則として海岸の低潮線を示す通常基線から測ります。ただし著しく入り組んだ海岸などでは、条件に従って直線基線を使えます。海岸の好きな地点をつないで海域を広げる仕組みではなく、基線と隣国との境界も別の線です。
基本の用語
領海の上限12海里やEEZの上限200海里は、距離だけでは場所を示せません。海図で起点となる基線を確認してから、幅と他国との境界の問いへ進みます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 領海と排他的経済水域では、国にどんな権限がある?領海では沿岸国の主権が及びますが、外国船にも条件付きの無害通航権があります。
通常基線と直線基線を分ける
海洋法条約第5条の通常基線は、沿岸国が公式に認めた大縮尺海図に示す海岸沿いの低潮線です。満潮時の水際を思い浮かべるだけでは、同じ起点になるとは限りません。どの海図と線を使っているかを読みます。
第7条は海岸線が深く湾入し切り込む場所や、海岸のすぐ近くに島列がある場合などに、適当な点を結ぶ直線基線の方法を認めます。湾をまたいで一本引けばいつでも有効、という制度ではありません。
図を見るときは、通常基線なのか所定の直線基線なのかを凡例から確かめます。地図上の目立つ線を、海域の外側限界と取り違えないことも必要です。同じ海図に起点と限界が描かれていても、それぞれの線が何を示すかを説明してから距離を読みます。
引ける線には条件がある
直線基線は海岸の一般的な方向から大きく離れてはならず、その内側の海域は内水制度に服するほど陸地と十分に結び付く必要があります。線を外へ移せば距離の起点も動くため、線を引くこと自体に条件が置かれます。
また他国の領海を公海又はEEZから切り離すように使えません。自国の地理だけを見て線を決めるのではなく、隣国の海域と海へのつながりも関わります。個別の線の適法性には、こうした条文の条件と地理情報を合わせます。
基線の陸側は原則として内水ですが、第7条による直線基線で、従来内水と考えられていなかった水域を内水として囲う場合には、無害通航権があるという第8条の規定があります。内側になったという一語だけから外国船の通航がすべて消えるとはいえません。
距離の起点と国境を分ける
第16条は、所定の基線やそこから導く限界等を適切な縮尺の海図、又は測地基準を示す座標一覧で示し、十分に公表して国連事務総長へ写しを寄託することを定めます。線の場所を第三者が確かめられる資料が重要です。
一方、海を隔てて向かい合う国や隣接国の領海の境界は第15条の別の問いです。異なる合意がないときの中間線の原則にも、歴史的権原や特別な事情による例外があります。基線の公表を、そのまま他国との境界合意とみなしません。
読む順序は起点の基線、測る幅、実際の限界や境界です。ある国が示した海図を確認できても、すべての国がその線に合意したという情報は別に必要です。ここでは特定海域の国境や個別基線の適法性を判定しません。
- 基線
海域の幅を測る起点
- 幅から導く限界
基線から所定の距離で読む線
- 国どうしの境界
対向・隣接国との関係で画定する線
通常基線・直線基線の条件と、個別海域の合意を確認する必要があります。
同じ12海里でも起点が違う
架空の海岸図で、低潮線から12海里の線と、湾を横切る直線から12海里の線を比べます。起点が違えば外側の線の位置も違いますが、だから好きな起点を選べるとは考えません。
後者について直線基線を使う地理条件、海岸の方向、陸との結び付き等を調べます。隣国に近い部分なら、距離上限だけでなく境界の根拠も別に確認します。
持ち帰る見方
- 何海里かだけでなく、どの基線から測るかを読む。
- 基線公表、海域の幅、隣国との境界を分ける。
次に広がる疑問
- 領海と排他的経済水域では、国にどんな権限がある?
- 領海の外でも、沿岸国が取締りをする海域がある?
- 海にある小さな島は、必ず200海里の海域を持つ?
順番に読んでいる方へ
出典
United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
通常基線と直線基線を分ける
通常基線は公式に認められた大縮尺海図上の海岸の低潮線で、直線基線は海岸の著しい湾入や近接する島列等の条件で用いる。
- 対象
- 1982年海洋法条約の基本条項:第5・7条
- 条件
- 通常基線は公式大縮尺海図の低潮線。直線基線は著しい湾入等の地理条件。
- 例外・限界
- 直線基線の一般方向・陸との結び付き・他国領海遮断の禁止、新包囲水域の無害通航。公表で国境確定しない。
United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf
引ける線には条件がある
直線基線は海岸の一般的方向から大きく離れず、他国領海を公海等から切り離せない。陸側水域は原則内水だが新たに包囲した水域には無害通航の規定がある。
- 対象
- 1982年海洋法条約の基本条項:第7条3・6項・8条
- 条件
- 通常基線は公式大縮尺海図の低潮線。直線基線は著しい湾入等の地理条件。
- 例外・限界
- 直線基線の一般方向・陸との結び付き・他国領海遮断の禁止、新包囲水域の無害通航。公表で国境確定しない。
United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf
距離の起点と国境を分ける
所定の基線等は海図又は座標で示し公表・寄託する。公表と隣接対向国間の境界画定は別の問いである。
- 対象
- 1982年海洋法条約の基本条項:第15–16条
- 条件
- 通常基線は公式大縮尺海図の低潮線。直線基線は著しい湾入等の地理条件。
- 例外・限界
- 直線基線の一般方向・陸との結び付き・他国領海遮断の禁止、新包囲水域の無害通航。公表で国境確定しない。
United Nations Convention on the Law of the Sea(UNTS Vol.1833、英文本)(国連条約集)https://treaties.un.org/doc/Publication/UNTS/Volume%201833/v1833.pdf