お金と金融
会社の利益が増えても、一株の利益が減ることはある?
あります。一株当たり利益(EPS)は、普通株主に帰属する利益を、期中の平均株式数へ対応させる数字です。利益が増えても株式数の増加がそれを上回れば、一株の利益は減り得ます。会社の利益総額、株数、EPS、実際の配当を分けて比べます。
基本の用語
会社の持分を表す株式は、発行や買戻しなどで数が変わります。EPSは持分一単位へ利益を割り当てる指標で、株主への現金支払そのものではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 売上が増えれば、会社はもうかる?売上・費用・利益と現金の違い
利益の合計を、期中平均の株数で割る
基本EPSの分子は普通株主へ帰属する利益で、分母は期中平均の株式数です。一年の途中に株数が増減すれば、その株数で存在した期間の長さも反映します。決算日の株数で一年分の利益を割れば、いつでも正しいEPSになるわけではありません。
例えば年末直前に新しい株を発行した場合と、年初から同じ数の株がある場合では、期末の株数が同じでも期間の平均は違います。利益と株数の対象期間をそろえる必要があります。発表されたEPSを確かめるときは、分子と分母に使った数字の説明を読みます。
IAS33は連結のEPSについて、親会社の普通株主に帰属する利益を使うとしています。子会社に他の株主がいるなら、連結の利益全体がそのまま親会社株主のものとは限りません。ここではIFRSのEPSの原理を扱い、すべての企業に同一基準の適用を前提としません。
利益総額と、一株の成果は別に動く
利益総額が大きくなったことは会社全体の成果についての情報です。一株の利益については、分母である平均株式数も必要です。利益が20%増えても平均株式数が50%増えれば、同じ種類の一株に対応する利益は小さくなります。二つの伸び率を別々に見ます。
株式発行で会社が資金を集め、その資金を将来の事業へ使うこともあります。EPSがある期間に下がったことだけで、その資金調達が成功か失敗かは決まりません。今期の一株指標と、集めた資金の使い道や将来の成果を一つの判断にまとめないようにします。
EPSは、その額の現金が株主へ支払われたという意味でもありません。配当を行うか、どれほど分配するかは別の決定です。「一株当たり50円」という数字を読むときには、一株の利益なのか、一株の配当なのか、一株の売買価格なのかを先に確かめます。
希薄化後は、将来増え得る株式も考える
株式に転換できる証券や、所定の条件で株を取得できる新株予約権などがあると、将来の株式数が増える可能性があります。IAS33は基本EPSと希薄化後EPSを分けて表示し、そうした潜在株式が一株の利益を小さくする場合を考えます。
希薄化後EPSの計算は、将来増え得る株をすべて単純に足す作業ではありません。転換や権利行使などについて基準の条件を置き、分子と分母を対応させます。表示された希薄化後EPSは、全ての権利が実際に行使されるという予測や、その年の配当額の約束とは違います。
企業を比べる際は、単体と連結、基本と希薄化後、対象期間をそろえます。利益総額がどう動き、平均株式数がどう動いたかをたどると、EPSが変わった理由が分かります。EPSの大小だけで会社の質や株価の割安さを確定することはできません。
利益は20%増え、株数は50%増える
架空の例
最初の期間は普通株主へ帰属する利益が100万円、期中平均株式数が1万株だったとします。EPSは100円です。次の期間は利益120万円、平均株式数1万5,000株なら、EPSは80円になります。単純な普通株だけの例で、利益は20%増えても一株の利益は20%減ります。
二つの期間の平均株式数を既に与えた計算です。実際の発行日による平均計算や、転換証券の調整は省きます。80円は利益を株数へ対応させた数字であり、各株主へ80円が現金で払われたことを意味しません。
持ち帰る見方
- 利益総額だけで一株の成果を決めない。
- 期間中の平均株式数と帰属利益を使う。
- 基本EPS・希薄化後EPS・配当を区別する。
次に広がる疑問
- 親会社と非支配持分を区別する
- 株式の単位が変わる場合を考える
順番に読んでいる方へ
出典
IAS 33 Earnings per Share(IFRS財団/国際会計基準審議会)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-33-earnings-per-share/
確認日:2026-10-04
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
利益の合計を、期中平均の株数で割る
基本EPSは普通株主に帰属する利益と期中平均の発行済株式数を対応させる。連結EPSの利益は親会社普通株主帰属利益を使う。
- 対象
- IAS33 EPS
- 条件
- 期中増減の時間を加重
- 例外・限界
- 期末株数や全連結利益を常に使わない
IAS 33 Earnings per Share(IFRS財団/国際会計基準審議会)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-33-earnings-per-share/
利益総額と、一株の成果は別に動く
利益の伸びを上回って平均株式数が増えればEPSは低下し得る。EPSは配当として実際に受け取る金額ではない。
- 対象
- EPS定義からの算術整理
- 条件
- 普通株だけの架空同期間計算
- 例外・限界
- 株式発行で得た資金の使い道/将来成果は別
IAS 33 Earnings per Share(IFRS財団/国際会計基準審議会)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-33-earnings-per-share/
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
希薄化後は、将来増え得る株式も考える
IAS33は基本EPSと希薄化後EPSを区別し、転換証券・新株予約権等が一株の利益を低下させる可能性を扱う。
- 対象
- IAS33潜在普通株
- 条件
- 転換/行使等の所定条件を仮定
- 例外・限界
- 全潜在株式を単純足算するものではない、将来の行使確定ではない
IAS 33 Earnings per Share(IFRS財団/国際会計基準審議会)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-33-earnings-per-share/