数字と報道

どの集団でも改善したのに、全体の割合が悪化することはある?

各集団の割合が改善しても、全体の割合が悪化することはあります。全体は各集団の割合だけでなく、その集団が全体に占める人数や件数にも左右されるためです。内訳の変化と構成の変化を分け、同じ構成で比べた数字の意味も確かめます。

基本の用語

割合は該当する件数を対象の件数で割った値です。二つの集団を合わせるときは、該当件数と対象件数をそれぞれ合計します。二つの割合をそのまま半分ずつ足す計算とは、通常は違います。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

全体の割合には集団の大きさも入る

互いに重ならず、全体を覆う集団に分けたとします。全体の割合は、各集団の割合に、その集団の件数が全件数に占める比重を掛けて足したものです。この比重を重みとする加重平均です。件数の多い集団ほど全体へ大きく影響します。

例えば、期限内に処理できた申請の割合を比べる場合、申請の種類ごとの処理率だけでは全体率は決まりません。処理しやすい種類がどれだけ多く、難しい種類がどれだけ多いかも関わります。全体率の低下を見ただけでは、各種類の処理が遅くなったとは分かりません。

両方改善しても全体が下がる計算

下の例では、定型と複雑の両方の申請で期限内の処理率が上がります。しかし、前期は定型が大半だったのに、後期は複雑が半分を占めます。もともと率の低い種類の比重が大きくなるため、全体率は下がります。

これは内訳と全体が矛盾した数字ではありません。率と構成という二つの変化を、一つの全体率が合わせて表した結果です。全体の低下を隠すため内訳だけを示すことも、内訳の改善を無視して全体だけで評価することも、答えたい問いを取り違えます。

同じ構成で比べる数字と、実際の数字

構成の違いをそろえるには、各集団の率を共通の固定した重みで平均します。例の二種類をどちらの期も半分ずつと置けば、前期50%、後期57.5%で改善が見えます。これは同じ構成だった場合の比較で、前期の実際の申請の全体率ではありません。

現実の統計でも、米国疾病予防管理センター(CDC)の年齢調整死亡率は、年齢別死亡率を固定した標準人口の年齢構成で加重平均します。年齢構成の異なる人口を比べるための指標であり、実際の人口の死亡率や死亡数そのものとは区別します。

どの構成を基準にしたかで、標準化した数字の意味が決まります。構成をそろえた率と現実の全体率は、どちらか一方が正しく他方が誤りなのではありません。前者は構成をそろえた比較、後者は実際の構成を含む結果という別の問いへ答えます。

何を比べたいかで、必要な内訳を選ぶ

同じ種類の処理状況を比較したいなら、種類ごとの率や、共通の構成で計算した率を見ます。現実の申請全体でどれくらい期限内に処理できたかを知りたいなら、実際の全体率も必要です。比較したい対象を先に決めます。

ただし、種類をそろえたことだけで、処理率が変わった原因を特定したことにはなりません。例では何を置き、何を変えたかが分かりますが、現実では同じ種類の中の条件も変わり得ます。率の逆転から職員の能力や政策の効果を断定することはできません。

二種類の申請を期限内に処理する

架空の例

前期は定型100件中90件、複雑10件中1件を期限内に処理したとします。率は90%と10%、全体は91÷110で約82.7%です。後期は定型20件中19件、複雑20件中4件と置きます。率は95%と20%へ改善しますが、全体は23÷40=57.5%です。

複雑な申請の比重が10÷110から20÷40へ増えています。両期とも定型と複雑を半分ずつの重みにそろえると、前期は(90+10)÷2=50%、後期は(95+20)÷2=57.5%です。この二つの比較が答える問いを分けます。

持ち帰る見方

  • 全体の割合は、各集団の率と件数の構成で決まります。
  • 集団内の改善と全体の悪化は、構成変化によって両立します。
  • 固定した構成の比較値を、実際の人口や申請の率へ読み替えません。

次に広がる疑問

  • 一人の回答に重みを付けるのはなぜ?
  • 同じ割合でも、そこに含まれる人は入れ替わる?

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出典

  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

    確認日:2026-10-04

  • CDC WONDER Underlying Cause of Death: Age-Adjusted Rates(米国疾病予防管理センター(CDC)/National Center for Health Statistics)https://wonder.cdc.gov/wonder/help/ucd.html

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

全体の割合には集団の大きさも入る

全体の割合は各集団の割合を集団人数の構成で加重平均したものなので、内訳ごとの割合と人数構成の両方で変わる。

対象
7.2.2、頁133~135の総計/割合。集団分割後の加重平均の算術
条件
集団が互いに重ならず全体を覆い、同じ分子・分母定義で集計
例外・限界
割合だけの単純平均では人数の違いを反映できない
  • Survey Methods and Practices(カナダ統計局(Statistics Canada))https://www150.statcan.gc.ca/n1/en/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf

同じ構成で比べる数字と、実際の数字

固定した構成で各集団の率を加重平均すると、構成の違いをそろえた比較になる。CDCの年齢調整死亡率も固定した標準人口の年齢構成を使うが、実際の人口の率そのものではない。

対象
CDC Age-Adjusted Rates、直接法R′=Σ(Psi/Ps)Ri
条件
年齢別率に共通の標準人口構成を掛ける。申請例の固定半分ずつの平均は同じ算術を例示
例外・限界
標準化値は現実の総件数・死亡数を表さず、その他の要因や因果効果を調整しない
  • CDC WONDER Underlying Cause of Death: Age-Adjusted Rates(米国疾病予防管理センター(CDC)/National Center for Health Statistics)https://wonder.cdc.gov/wonder/help/ucd.html