数字と報道
二つの名簿の重なりから、どちらにも載らない人数を推計できる?
二つの名簿の重なりから、どちらにも載らない人を含む総数を模型で推定できます。基本法では二回の捕捉が独立で、二回目の捕捉確率が人ごとに等しく、対象人口が変わらないことが必要です。名簿が二つあるだけでは成立しません。
基本の用語
一つ目に載った人数を、二つ目のうち一つ目にも載った割合で割るのが基本の考え方です。これは全員を確認した実測数ではなく、未捕捉人数を含む推定です。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 全員を調べる統計なら、誤差はなくなる?全数で消える標本誤差と、数え漏れ・測定・非回答・処理の誤りを区別する。
重なりを割合として使う
一回目でn1人を捕捉し、二回目でn2人を捕捉して、そのうちm人が一回目にもいたとします。二回目の重なり割合m/n2が全体の一回目捕捉割合を表すと考え、総数をn1÷(m/n2)、つまりn1×n2/mと推定します。
この割合が代表的になるには、二回目が基本模型に合う無作為な捕捉である必要があります。重なりmがゼロなら、この単純な比の推定は計算できません。全員を特定した名簿が得られるわけではなく、不確かさを伴う推定値です。
同じ一回目人数なら、二回目の重なり割合が小さいほど総数の推定は大きくなります。これは未捕捉が多い模型へ対応するからです。ただし重なりが小さい原因が照合漏れなら、人口の大きさとして読むことはできません。
数えた人数の和より先を見る
名簿の和集合なら、少なくとも一回は載った人数を直接数えられます。しかしどちらにも載らない人は、その集合の中に見えません。捕獲再捕獲は、重なりを使い、この見えない部分を含む規模に答える方法です。
二つの名簿が同じ対象と期間を扱うことも必要です。片方が住民、もう片方が通勤者なら、対象の違いを未捕捉の差として扱えません。名簿の名称より、誰がどの機会で載るかを確認します。
和集合の160人と総数推定の400人が併記された場合、どちらを人数と呼んだかを分けます。確認した人と、確率的に推定した人が別であることを明示しないと、架空の個人記録まで存在するかのように読めてしまいます。
名簿どうしの独立が要る
基本法では、二回目に載る確率が一回目に載ったかどうかに依存せず、二回目の捕捉確率が各人で同じ値を持つという条件を使います。一回目の登録者が次の窓口へ紹介される制度なら、重なりは単純な無作為捕捉とは違います。
また相談しやすい人が両方へ載りやすく、孤立した人が両方へ載りにくい場合も、等しい捕捉確率の条件が問題になります。人数の大きさだけで信頼性を判断せず、捕捉の仕組みを説明できるかを見ます。
独立性は、名簿を作る組織が二つ別であることと同じではありません。同じ利用者が両方へ行きやすければ捕捉は関連します。組織名で判断せず、登録の紹介、利用条件、本人の行動を考えます。
人口変化と照合間違いを点検する
基本模型では二回の間に出生、死亡、転入、転出などで対象が変わらない閉じた母集団を考えます。同じ人の記録を正しく対応づけ、別人を重なりにしたり同一人を別人にしたりしないことも必要です。
より複雑な方法が一部の条件を緩める場合はあります。しかしその存在が単純な式の無条件な利用を正当化するわけではありません。どの模型で何を仮定し、どんな資料で照合した推計なのかを区別します。
照合では名前が似ていることと同一人であることを分けます。転入者を一回目の未捕捉者とみなすなど、対象の変化と照合の誤りが混ざる場合もあります。捕捉の日付と人口の範囲を示すことが基本条件を読む助けになります。
名簿の重なりが20人の場合
架空の閉じた対象で、名簿Aに100人、Bに80人、重なりが20人とします。基本条件が成立するなら、総数の推定は100×80÷20=400人です。直接確認した和集合は100+80−20=160人です。
差の240人は両方に載らない人数の推定であり、240人を実際に特定した意味ではありません。紹介などの依存があれば、この計算の根拠が崩れます。
考えるときの注意点
- 特定の地域の人口や困窮者数を推定したものではない。
持ち帰る見方
- 重なりの割合から未捕捉分を推定する。
- 独立・等捕捉確率・閉鎖性が基本条件。
- 照合した実数と模型の推定数を分ける。
次に広がる疑問
- 全員を調べる統計なら、誤差はなくなる?
- 同じ人数を調べても、標本誤差が違うのはなぜ?
- 無作為に選んでも、名簿に載らない人の意見は拾える?
順番に読んでいる方へ
出典
Capture-Recapture(Philip B. Stark/University of California, Berkeley)https://www.stat.berkeley.edu/~stark/Preprints/capt2002.pdf
確認日:2026-10-07
本文の出典・補足
重なりを割合として使う
二回目の捕捉のうち一回目にもいた割合で、一回目の捕捉数を割ると母集団サイズを推定できる。
- 対象
- 2002年10月24日原稿。閉鎖母集団の二回捕捉の基本模型。
- 条件
- 二回目の単純無作為捕捉、母集団不変、正しい対応づけ。
- 例外・限界
- 式の値は推定であり実測総数ではない。重なり0ならこの比は計算不能。
Capture-Recapture(Philip B. Stark/University of California, Berkeley)https://www.stat.berkeley.edu/~stark/Preprints/capt2002.pdf
数えた人数の和より先を見る
二名簿の和集合からはどちらにも載らない人数は直接見えない。捕獲再捕獲は未捕捉分を確率模型で推定する方法である。
- 対象
- 2002年10月24日原稿。閉鎖母集団の二回捕捉の基本模型。
- 条件
- 同じ母集団/期間/対象の二回捕捉。
- 例外・限界
- 二名簿を足すだけでは重複と未捕捉を解決しない。
Capture-Recapture(Philip B. Stark/University of California, Berkeley)https://www.stat.berkeley.edu/~stark/Preprints/capt2002.pdf
名簿どうしの独立が要る
基本法では二回目の捕捉確率が一回目の捕捉に依存せず、各人が同じ捕捉確率を持つ必要がある。
- 対象
- 2002年10月24日原稿。閉鎖母集団の二回捕捉の基本模型。
- 条件
- 独立性と等捕捉確率。
- 例外・限界
- 紹介で別名簿にも登録されるなどの依存は推定を偏らせうる。
Capture-Recapture(Philip B. Stark/University of California, Berkeley)https://www.stat.berkeley.edu/~stark/Preprints/capt2002.pdf
人口変化と照合間違いを点検する
捕捉間で母集団が変わらず、同一人の印/照合が曖昧でないことも基本法の条件である。
- 対象
- 2002年10月24日原稿。閉鎖母集団の二回捕捉の基本模型。
- 条件
- 出生/死亡/転出入がない閉じた対象。
- 例外・限界
- 複雑な方法は条件を緩めることがあるが単純式の無条件利用にはならない。
Capture-Recapture(Philip B. Stark/University of California, Berkeley)https://www.stat.berkeley.edu/~stark/Preprints/capt2002.pdf