数字と報道
同じ人数を調べても、標本誤差が違うのはなぜ?
人数が同じでも、群をまとめて選ぶ方法や重みの調整で、推計のばらつきは変わります。デザイン効果DEFFは、同じ人数の単純無作為抽出を基準にした分散比です。何をどう推定した分散かをそろえて比較します。
基本の用語
調査の精度を人数だけで判断すると、同じ群の似た回答が重なることや、抽出と推計の方法の違いを落とします。標本をどう選び、得た回答をどう集計したかまで含めて、単純無作為抽出との比較を考えます。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 調査した人の人数を、そのまま全国の割合にできる?抽出確率と重み付き割合の計算、回答構成の補正に必要な仮定を説明できる。
同じ人数・同じ推定対象の分散を比べる
デザイン効果DEFFは、ある抽出設計で得る推定量の標本分散を、同じ母集団・同じ標本数の単純無作為抽出で得る同じ推定量の標本分散で割った比です。比べる変数、推定する母数、推定量、基準分散を明らかにします。
DEFFが1より大きければ基準より分散が大きく、1より小さければ小さくなります。標準誤差の比は分散比そのものではなく、その平方根です。別の変数や異なる推定方法で得たDEFFを、調査全体に共通する固定値として扱いません。
同じ群の似た回答が情報を重ねる
群抽出では、学校や地域などの群をまとめて選ぶ場合があります。同じ群の人々が調べる特徴について似ていれば、回答の情報が重なり、同じ人数をばらばらに選ぶ標本より精度が低くなることがあります。
ただし群抽出が必ずDEFF>1になるわけではありません。群の内部が異質で、群どうしが似ている場合には、単純無作為抽出より効率的なこともあります。群の数、大きさ、調べる変数と抽出方法によって結果は変わります。
重みと抽出方法に合う誤差を計算する
重みを調整して得た推計や複雑な標本では、単純無作為抽出の式へ回答人数を入れるだけでは十分とは限りません。点推定に使った重みと、抽出の設計に合う分散の計算が必要です。
重みがあるだけで分散が必ず増える、又は減ると決めることもできません。人数と重みだけで全てのDEFFが一意に分かるものではなく、何を推定し、どんな設計でその回答を得たかという情報が要ります。
有効標本数は精度を表す近似として読む
抽出割合が小さく、単純無作為抽出の基準分散がK/nと近似できる条件なら、DEFFをDとしてD×K/n=K/(n/D)と書けます。同じ精度を表す単純無作為抽出換算の有効標本数は、約n/Dになります。
比較する範囲で同じDを扱え、同じ母集団・推定対象・推定量を比べる近似です。実際の回答者数が減ったという意味でも、独立した人の実数を数えたものでもありません。抽出割合が大きい場合や変数・方法が違う場合へ、n/Dを一律に広げないことが要点です。
800人の分散を単純無作為抽出と比べる
架空の例
同じ推定量について、800人の単純無作為抽出の分散を1、ある調査設計の分散を2と置けば、DEFFは2です。標準誤差の比は√2で約1.414となり、2倍とは違います。
抽出割合が小さく基準分散をK/nと近似でき、同じDで比べられる範囲なら、有効標本数は約800/2=400人です。実際には800人が回答しており、半数の人を消す処理ではありません。別の推定量にも同じ400を使えると、この設定だけからは言えません。
持ち帰る見方
- 人数だけでなく、抽出設計と推定量に合う分散を比べる。
- DEFFは分散比で、有効標本数n/DEFFは条件付きの精度換算の近似。
次に広がる疑問
- 回答を重み付きで集計する意味を読む
- 群で実験を割り付ける設計と区別する
- 抽出割合による分散の補正を読む
順番に読んでいる方へ
出典
Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf
確認日:2026-10-05
本文の出典・補足
同じ人数・同じ推定対象の分散を比べる
デザイン効果DEFFは、ある抽出設計で得る推定量の標本分散を、同じ母集団・同じ標本数の単純無作為抽出で得る同じ推定量の標本分散で割った比である。
- 対象
- 抽出設計と推定方法を指定した精度比較。
- 条件
- 同じ母集団、推定対象、推定量、標本数nで比較し、単純無作為抽出の基準分散を明記する。
- 例外・限界
- 1より大きければ基準より分散が大きく、1より小さければ小さい。標準誤差の比はDEFF自体ではなく、その平方根になる。
Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf
同じ群の似た回答が情報を重ねる
同じ群の人々が調べる特徴について似ている場合、群をまとめて選ぶ標本は、同人数をばらばらに選ぶ標本より情報が重なり、精度が低くなり得る。
- 対象
- 群抽出における群内の同質性と精度。
- 条件
- 調べる変数についての群内の類似、群の数・大きさ、抽出方法に依存する。
- 例外・限界
- 群抽出が常にDEFF>1とは限らない。群内が異質で群どうしが似ている設計なら、単純無作為抽出より効率的な場合もある。
Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf
重みと抽出方法に合う誤差を計算する
重みを調整した推計や複雑な標本では、回答人数だけを単純無作為抽出の式へ入れても、標本誤差を正しく評価できるとは限らない。
- 対象
- 重み調整を伴う調査の分散推定。
- 条件
- 用いた点推定量、抽出設計、重み調整に合う分散計算を使う。
- 例外・限界
- 重み付けがあるだけで分散が必ず増えるとも減るとも決めない。人数と重みだけから全てのDEFFが一意に分かるわけではない。
Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf
有効標本数は精度を表す近似として読む
単純無作為抽出の分散が標本数の逆数にほぼ比例する条件では、DEFF=Dの標本数nの調査は、有効標本数を約n/Dと表して精度を比べられる。
- 対象
- 同じ母集団・同じ推定対象に対する単純無作為抽出換算。
- 条件
- 抽出割合が小さく、基準分散がK/nと近似でき、比較する範囲でDを同じものとして扱える。
- 例外・限界
- 実際の回答者を減らした人数や、独立した人の実数ではない。抽出率が大きい場合、推定する変数・方法が違う場合などにn/Dを一律に使わない。
Survey Methods and Practices(Statistics Canada)https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-587-x/12-587-x2003001-eng.pdf