統計の読み方

学校単位でくじ引きした研究は、生徒全員を別々に比べてよい?

学校や地域を単位に無作為に割り付けた研究では、生徒や住民の一人一人が別々にくじを引いたわけではありません。同じ集団の結果が似ることを考慮して、集団数と個人数、参加の経過、精度の計算を確かめます。

基本の用語

無作為割付は比較を作る設計です。ここでの集団、クラスターは学校や診療所などのまとまりを指します。割り付ける単位と、結果を観測する単位が異なる場合があります。

もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。

くじを引く単位を確かめる

学校全体へ同じ授業を導入する場合、学校を単位に新しい授業と通常の授業へ割り付ける設計があります。同じ学校の生徒へばらばらに導入するのと違い、集団のまとまりで介入する研究です。研究の人数だけで、どちらの設計かは分かりません。

集団単位の設計は、組織全体の介入や、同じ集団の人どうしが影響し合う場合の比較などで使われます。ただし、その理由があることと、どんな解析でもよいことは別です。どの単位を、何個、どのように割り付けたかを読みます。

2004年のCONSORT拡張指針は、集団無作為化に固有の設計と報告情報を整理しています。個人の結果を測定した研究でも、割付が集団なら、その設計を明示します。「無作為化」という一語だけでは比較の単位が説明できません。

集団内の似た結果を計算に含める

同じ学校の生徒は、同じ環境や指導を共有します。そのため結果が互いに似る、集団内相関が生じる場合があります。結果の数が多くても、全員を互いに独立な観測として数えると、不確かさの計算を誤る可能性があります。

個人総数が同じでも、少数の大きな学校に集まる設計と、多数の学校に分かれる設計は同じ情報量とは限りません。集団の数と規模、集団内相関、解析方法に精度が依存します。生徒を増やすことと、独立な学校を増やすことを分けます。

指針は標本数の設計と統計的方法で集団性を考慮し、関連する情報を報告するよう求めています。すべての学校の相関が同じ、又は必ず同じだけ精度が落ちると決めるのでなく、その研究でどんな計算を使ったかを確かめます。

集団と個人の参加経過を追う

割付後に個人を募集する場合、介入を知ったことが参加の選択に関わる可能性があります。集団を無作為に割り付けたことだけで、後から参加した全員が個人単位でも同じ条件の比較になったとはいえません。募集の順番と方法も読みます。

研究の途中では、学校全体が抜ける場合と、一部の生徒の結果だけが得られない場合があります。指針は集団と個人の両方の流れを示すよう求めています。最初に割り付けた数、実際に参加した数、解析に入った数を別々に確かめます。

結果については、集団性を考慮した推定差と不確かさを読みます。また参加した学校へいえることと、他の学校の全生徒へ広げられることは別です。集団の種類と参加者の特徴は、一般化の範囲を考える材料になります。

人数の見出しを設計へ戻す

「1000人を対象に無作為化」という見出しなら、1000人を割り付けたのか、1000人がいる学校を割り付けたのかを確認します。論文の方法と参加経過に戻ると、比較の単位、独立性、欠測の問題を具体的に読めます。

集団数が書かれていない報告から、独立な比較がいくつあるかを人数だけで補いません。集団単位の研究を低品質と一括するのでなく、その設計に合う計算と報告があるかを確かめることが、結果を評価する第一歩です。

学校で割り付け、生徒の結果を測る
  • 割付

    学校という集団を介入へ振り分ける

  • 観測

    各学校の生徒の結果を測定する

  • 解析

    学校内の相関と参加経過を考慮する

集団数と個人数は別の情報。ここだけで実効的な情報量は決まらない。

20校、各校50人の研究

架空の学校20校を10校ずつ、新しい授業と通常の授業へ割り付けます。各校50人なら観測する生徒は1000人ですが、くじを引いた単位は20校です。生徒1000人を別々に割り付けた研究とは違います。

同じ学校内の結果が似る程度と、集団を考慮した計算を確認します。ここでは有効な標本数や授業の効果を数値で設定していません。学校数、生徒数、解析の単位を別々に読むための例です。

持ち帰る見方

  • 割付単位と観測単位を分ける。
  • 集団内相関を考慮した設計と計算を読む。
  • 集団と個人の参加・脱落を両方追う。

次に広がる疑問

  • 支援を利用しなかった人も、効果の比較に含めるのはなぜ?
  • 平均が同じでも、ばらつきが大きいと何が違う?
  • 全員を調べる統計なら、誤差はなくなる?

順番に読んでいる方へ

学習地図で、ほかの分野とのつながりを見る

出典

  • CONSORT statement: extension to cluster randomised trials(Marion K Campbell・Diana R Elbourne・Douglas G Altman/BMJ 2004)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC381234/

    確認日:2026-10-04

本文の出典・補足

くじを引く単位を確かめる

集団無作為化は学校・診療所等の集団を介入へ割り付け、観測対象の個人とは単位が違う。

対象
Introduction・Rationale
条件
集団全体への介入や汚染回避の設計
例外・限界
個人が別々にくじを引いたと説明しない
  • CONSORT statement: extension to cluster randomised trials(Marion K Campbell・Diana R Elbourne・Douglas G Altman/BMJ 2004)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC381234/

集団内の似た結果を計算に含める

同じ集団内の結果が相関する場合、個人総数を独立観測として扱うと精度の計算を誤る。

対象
intracluster correlation説明・Statistical methods
条件
集団内相関・集団規模・集団数と解析設計
例外・限界
すべての集団内相関が同じ又は常に正とは断定しない
  • CONSORT statement: extension to cluster randomised trials(Marion K Campbell・Diana R Elbourne・Douglas G Altman/BMJ 2004)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC381234/

集団と個人の参加経過を追う

集団割付研究は集団数と個人数、脱落、割付後の募集、集団を考慮した分析等を報告する。

対象
Sample size・Participant flow・Numbers analysed
条件
割付後の個人選択の偏りも点検
例外・限界
無作為化の語だけで脱落や一般化の問題が解決しない
  • CONSORT statement: extension to cluster randomised trials(Marion K Campbell・Diana R Elbourne・Douglas G Altman/BMJ 2004)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC381234/