金融と企業のお金
減損損失が出たら、その日に同じ額の現金を失った?
減損損失は、回収できる見込みが帳簿に残る額を下回ったときに、資産の帳簿価額を切り下げる記録です。同じ日に同額の現金を払ったこととは限りません。通常の減価償却による費用配分と、回収の見通しが悪くなったことによる切下げを分けて読みます。
基本の用語
機械などの資産は、買った後も費用配分を反映して帳簿に額が残ります。その残額が、現在の売却価格や将来回収する額と必ず一致するわけではありません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 機械を買った代金は、その年の費用になる?取得時の現金支払と、使用期間への費用配分を分ける。
回収できる見込みと帳簿を比べる
使っている工場の事業見通しが悪くなったら、取得時の想定のまま資産を記録してよいかが問題になります。IFRSのIAS36は、資産の帳簿価額が回収可能価額を超えるときに、超過分を減損損失として認識する考え方を示しています。
回収可能価額は、売却に伴う処分費用を引いた公正価値と、使い続けて得る将来の現金の現在価値である使用価値の、いずれか高い方です。単に売却価格が下がっただけで、その価格まで必ず減らすという読み方ではありません。
一つの機械だけでは独立した現金収入を見積もれない場合があります。その場合は、独立した資金を生む最小のまとまりである資金生成単位で調べます。また在庫や一部の金融資産などには別の基準があるため、IAS36の仕組みを全資産へ一律に当てはめません。
損失を記録することと、支払うことを分ける
減損を記録すると、帳簿に残る資産の額が減り、通常は損益へ損失を記録します。この記録は、新たに機械を買った代金を払うこととは違います。資産価値の見直しと、銀行口座から出た現金を同じ出来事として数えないことが大切です。
例えば帳簿価額600万円を400万円へ切り下げれば、200万円の減損になります。その日に外部への支払がなければ、切下げの記録だけで口座残高が200万円減るわけではありません。現金の変化は、別に受取と支払を追って確かめます。
ただし「現金が出ないから影響がない」ともいえません。回収の見通しが悪くなったという判断は、事業や資産の使い方を考える材料です。損失がいつ記録されたかと、将来どれほど資金を生みそうかを分け、その判断に使った前提や対象を読みます。
予定の配分と、見通しの悪化は違う
減価償却は、長く使う資産の取得費用を期間へ配分する仕組みです。減損は、回収できる見込みに対して帳簿の額が大き過ぎる場合の切下げです。同じ費用や損失に見えても、記録する理由と見積もりの問いが異なります。
減損後は減った帳簿価額を使うため、後の期間の償却費も影響を受けます。IAS36では、一部の無形資産や買収で取得したのれんは毎年回収額を検討し、その他の資産は減損を示す兆候がある場合に検討します。全資産に同じ確認周期を置くわけではありません。
見通しが改善した場合の扱いにも条件があります。IAS36は他の資産について一定の上限まで減損の戻入を認めますが、のれんの減損は戻入しません。実際の企業では採用する会計基準、減損の対象、切下げの理由と、現金の受払を合わせて確認します。
売る案と使う案の高い方で比べる
架空の機械の帳簿価額が600万円、処分費用を引いた売却の価値が350万円、使用価値が400万円とします。IAS36の考え方では回収可能価額は400万円なので、単純な例の減損額は200万円です。
350万円と400万円を足して750万円にすることはできません。同じ機械を売る案と使う案の比較です。この例では当日売却も新たな支払も行っておらず、減損200万円を当日の現金支出として扱いません。
売却の価値350万円が使用価値400万円を下回るので、この例の比較には400万円を使っています。減損額を600-350=250万円にすると、二つの回収方法の高い方を選ぶ条件が反映されません。
持ち帰る見方
- 帳簿価額と、回収できる見込みを比べる。
- 減損の記録と現金支払を分ける。
- 償却、減損、減損後の扱いを区別する。
次に広がる疑問
- 会社の資産が多ければ、使えるお金も多い?
- キャッシュ・フローが増えたら、本業が好調になった?
順番に読んでいる方へ
出典
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/
確認日:2026-10-04
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
回収できる見込みと帳簿を比べる
IAS36は帳簿価額が回収可能価額を超える場合に減損を認識する。回収可能価額は処分費用控除後公正価値と使用価値の高い方である。
- 対象
- IAS36の帳簿価額・回収可能価額と減損、通常の償却との違いを説明する。
- 条件
- IFRS対象の資産または資金生成単位
- 例外・限界
- 在庫・金融資産等別基準あり
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/
損失を記録することと、支払うことを分ける
減損は資産の帳簿価額を減らす記録であり、同額の当日現金支出を意味しない。
- 対象
- IAS36の帳簿価額・回収可能価額と減損、通常の償却との違いを説明する。
- 条件
- 新たな購入支払がない切下げ例
- 例外・限界
- 将来資金見通しへの影響がないという意味ではない
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
予定の配分と、見通しの悪化は違う
減損と通常の償却は別で、減損後の帳簿価額は後の償却へ影響する。のれんは毎年検討し減損を戻入しない。
- 対象
- IAS36の帳簿価額・回収可能価額と減損、通常の償却との違いを説明する。
- 条件
- IAS36の償却修正/のれん
- 例外・限界
- 他の資産の戻入には上限、全基準共通としない
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/