金融と企業のお金
会社を買ったときの「のれん」は、どんな財産?
買収で記録するのれんは、買収の対価を識別できる資産と負債へ配分した後に残る部分です。現金が別の財布へ積み立てられることでも、買収の成功が確定することでもありません。採用する会計基準と、買収後に回収できる見込みを合わせて読みます。
基本の用語
会社を買うと、相手の現金や設備だけでなく、負債も引き継ぐ関係になります。買収価格と、買った資産から負債を差し引いた額は同じとは限りません。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 親会社と子会社の売上を足せば、グループの売上になる?単体と連結では報告対象が違う。
買った資産と負債へ、対価を分ける
IFRS3は、事業を取得する側が、取得した識別可能な資産や負債などを認識し測定する原則を定めています。買収に払った対価の公正価値を、取得した資産や負債の公正価値に基づいて配分します。相手の従来の帳簿をそのまま使うだけの計算ではありません。
その配分で残る買収の対価を、のれんとして認識します。全額を取得する単純な例なら、買収の対価から、識別できる資産と負債の差である純資産を引いて考えられます。買収先に他の株主がいる場合や既に持分を持っていた場合など、現実の算式には追加の要素があります。
買収の対価より取得純資産が大きい場合の扱いも、単に「負ののれんを同じ資産へ積む」とは違います。IFRS3の基本説明は、その超過を割安購入による利益として扱います。買収価格配分の全てを、正ののれん一つで説明しないようにします。
のれんは現金の別財布ではない
のれんが300万円記録されたとしても、その300万円を翌日の支払に自由に使えるわけではありません。買収の価格配分で資産として認識する額と、口座の現金は別です。買収で既に払った代金が、のれんの計上で戻ってくることもありません。
のれんは、識別した資産負債へ配りきれなかった対価の残りなので、差額が大きいことだけで「強いブランドをその額で単独売却できる」とは判断できません。何をいくらで買い、どの資産負債を認識したかという説明を先に読みます。
同じ買収額でも、識別した資産や負債の測定が違えば残額は変わります。のれんの大きさを会社の現金余力や、今期の営業利益の大きさへ直接置き換えると、違う性質の数字を混ぜることになります。連結の範囲と価格配分は、別の問いとして確認します。
買収後も回収の見通しを点検する
取得時に資産を記録したことは、将来の回収額を保証しません。IAS36では、買収によるのれんについて毎年減損を検討します。のれんを配分した資金生成単位の回収可能価額に基づき、帳簿に残す額が大き過ぎないかを調べます。
のれんだけを切り離して現金収入を見積もるのではなく、関連する事業のまとまりを使う点が重要です。事業の回収見通しが悪化すると、のれんの帳簿価額が減る場合があります。この記録を、その日の買収代金の追加支払と混同しません。
IAS36では、のれんの減損損失は後に戻入しません。ここで説明しているのはIFRS3とIAS36の原理で、全ての会社の償却や減損の方法が同じという意味ではありません。のれんのニュースでは、買収対価、識別純資産、採用基準、回収の見通しを一組で読みます。
1000万円で買い、識別純資産が700万円だった場合
架空の全額取得で、払った現金が1000万円、識別できる資産の公正価値が1200万円、負債が500万円とします。他の持分や調整を省けば、識別純資産は700万円、差額300万円がのれんです。
買収先が現金300万円を別に持っていた、という計算ではありません。1000万円の対価のうち700万円を識別純資産に、300万円を残額に分けた例です。後の事業の成功や、300万円でのれんを単独売却できることは仮定していません。
持ち帰る見方
- 買収価格を、識別資産と負債へ配分する。
- のれんの残額と、使える現金を分ける。
- 買収後の回収見通しと採用基準を確認する。
次に広がる疑問
- 会社の資産が多ければ、使えるお金も多い?
- 減損損失が出たら、その日に同じ額の現金を失った?
順番に読んでいる方へ
出典
IFRS 3 Business Combinations(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-3-business-combinations/
確認日:2026-10-04
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
確認日:2026-10-04
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
買った資産と負債へ、対価を分ける
IFRS3では買収の対価を識別可能資産・負債の公正価値へ配分し残る部分をのれんに割り当てる。
- 対象
- IFRS3の取得対価と識別できる純資産の差、IAS36での減損検討を説明する。
- 条件
- 全額現金取得の単純例
- 例外・限界
- 非支配持分/既保有持分などがある実算式を省略例へ一般化しない
IFRS 3 Business Combinations(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-3-business-combinations/
のれんは現金の別財布ではない
買収価格配分の残額として記録されるのれんは、自由に支払える現金と異なる。
- 対象
- IFRS3の取得対価と識別できる純資産の差、IAS36での減損検討を説明する。
- 条件
- 買収対価1000/識別純資産700の架空例
- 例外・限界
- 差額300が別の現金収入/確定価値ではない
IFRS 3 Business Combinations(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-3-business-combinations/
Beginners’ Guide to Financial Statement(米国証券取引委員会(SEC))https://www.sec.gov/about/reports-publications/investorpubsbegfinstmtguide
買収後も回収の見通しを点検する
IAS36では買収ののれんを毎年減損検討し、配分先の資金生成単位の回収額に基づいて判断する。のれんの減損は戻入しない。
- 対象
- IFRS3の取得対価と識別できる純資産の差、IAS36での減損検討を説明する。
- 条件
- IFRS3/IAS36
- 例外・限界
- 日本基準などの償却方法へ一律転用しない
IAS 36 Impairment of Assets(IFRS財団/IASB)https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/