国際関係
二国が結んだ条約で、第三国にも義務を負わせられる?
条約に参加していない第三国へ、当事国だけの約束で義務を押し付けることはできません。条約から第三国の義務を生じさせるには、当事国の意図と第三国の明示的な書面受諾が必要です。権利を与える場合の同意は別の扱いで、経済的な影響が及ぶこととも区別します。
基本の用語
第三国とは、当該条約の当事国ではない国です。世界のどこにあるかや友好関係による呼び方ではありません。同じ国でも、条約が違えば当事国にも第三国にもなります。
もう少し詳しく知りたいときは、次の基礎で補えます。
- 条約に入った国でも、一部の条項を適用しないことがある?留保は、自国への条項の適用を除外・変更しようとする声明。
- 条約に署名したら、すぐその国の義務になる?署名の効果と、批准等が必要かを条約本文で読む。
参加していない国の同意が要る
条約法に関するウィーン条約第34条は、第三国の同意なしに条約から権利も義務も生じないという一般則を置きます。二国が「別の国にもこうしてほしい」と書いても、それだけでその国を条約上拘束するものにはなりません。
第35条は、第三国の義務について、条約当事国がその条文で義務を作ろうと意図し、第三国がその義務を明示的に書面で受け入れることを求めます。沈黙している、協議に出席した、政策の影響を受けた、といった情報を、書面受諾と入れ替えることはできません。
例えば二国の規制協定が第三国の輸出企業の売上へ影響しても、それは経済的な影響の問いです。第三国自身が条約上の義務を負ったかとは、根拠も必要な資料も違います。誰の行動が制限され、どの約束が適用されるかを分けます。
権利への同意は扱いが違う
第36条は、条約当事国が特定の第三国、一群の国、又はすべての国へ権利を与える意図を持ち、第三国が同意したときに権利が生じるとします。この同意は反対の意思が示されない限り推定されます。ただし条約に別段の定めがあるなら、それに従います。
義務の受諾には明示的な書面、権利には原則として同意の推定という違いがあります。第三国がすべての条項を批准しないと一つの権利も利用できない、という制度ではありません。ただし権利を行使するなら条約等が定める行使条件を守る必要があります。
後から変える条件と別の法源
第35条に従って生じた第三国の義務を撤回・変更するには、別の合意が確立している場合を除き、条約当事国と第三国の同意が要ります。一度第三国が受け入れた義務を、その後は二国だけで自由に拡大できるとはしません。
権利についても、第三国の同意なしに撤回・変更できないという意図が確立していれば、当事国だけでは変えられません。変更の条件を、義務と権利でそれぞれ読むことが必要です。
一方、第38条は、条約に書かれた規則が国際慣習法として認められ、第三国を拘束することを妨げません。その場合の根拠は条約への参加ではなく慣習法です。条文が存在するだけで慣習法と認められたとはせず、慣行と法的義務としての認識を別に確かめます。
文書を読むときは、当事国が第三国へ何を認めたいかと、第三国が何を受け入れたかを二列に分けると整理できます。便益だけでなく条件付きの利用権なら、利用する際の条件を追加します。別の条項で支払いを求めるなら、その義務を受け入れる書面を確かめます。同じ条約で権利と義務が並んでいるからといって、第三国の一つの態度をすべての条項への同意としない読み方です。
施設の利用権と維持費の義務
架空のA国とB国が共同施設の協定を作り、C国も利用できると定めたとします。利用する権利が第三国に生じる条件と、C国へ維持費の支払い義務を負わせる条件は同じではありません。
C国が反対を示さなかったことを、維持費を払う義務の書面受諾とは読みません。何を与える条項なのか、何を負わせる条項なのか、C国がどの内容にどう同意したかを対応させます。
持ち帰る見方
- 第三国は条約ごとに決まる。
- 第三国の義務には明示的な書面受諾が必要。
- 権利の条件、変更、慣習法による拘束を別に読む。
次に広がる疑問
- 条約に署名したら、すぐその国の義務になる?
- 条約に入った国でも、一部の条項を適用しないことがある?
- 条約に書かれていない規則も、国際法になる?
順番に読んでいる方へ
出典
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
確認日:2026-10-04
本文の出典・補足
参加していない国の同意が要る
条約は第三国の同意なしにその国の権利も義務も作らない。義務を作るには当事国の意図と第三国の明示的な書面受諾が必要である。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 第三国とは当該条約の当事国でない国。
- 例外・限界
- 経済的影響が及ぶことと条約上の義務が生じることを分ける。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
権利への同意は扱いが違う
第三国への権利は当事国が付与を意図し、第三国が同意して生じる。同意は反対の意思が示されない限り推定されるが、条約に別段の定めがあれば従う。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 第三国、一群の国、又はすべての国への権利付与の意図。
- 例外・限界
- 権利を行使する国は条約等の行使条件に従う。義務の書面受諾と同じ条件ではない。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf
後から変える条件と別の法源
第三国の義務の変更・撤回は原則として条約当事国と第三国の同意を要する。第三国の権利も撤回等に第三国同意を要する意図が確立すれば当事国だけでは変えられない。条約規則が慣習法として第三国を拘束することは妨げない。
- 対象
- 国家間の書面条約。第4条による時間的適用と、独立して働く国際法規則の適用を区別する。
- 条件
- 義務は第35条、権利は第36条で生じたもの。
- 例外・限界
- 義務変更は別段の合意が確立している場合を除く。慣習法として認められる条件は別に必要。
Vienna Convention on the Law of Treaties(国連国際法委員会(条約本文))https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/1_1_1969.pdf